花魁道中
目が痛くなるほどの煌びやかな衣装。そして装飾具。
それら全てを身に着け、己が魅力を磨き上げ江戸吉原一の遊廓「東雲」の花魁と花屋敷の太夫は花魁道中を行いながら将軍様のいる城へ向かった。
中々お目にかかれない絶世の美男美女が日中堂々と出歩くのだ。見物客は凄い事になっていた。人に酔いそうですお母さま。
とはいえ、花屋敷の中で育った私と秋一にとっては、初めての外の世界だ。めっちゃわくわくする。秋一もはぐれない様に手はしっかり握っているけど、キョロキョロと周りを見回していた。くっそ可愛い。
簡素とはいえ、上質な布で作られた狩衣の様な動きやすさ重視だが見た目も十分華やかなこの服はこの催し物の召使のような立場である事を示していて、大人の人たちも下男下女は似たような服を着ていた。
この服良いなぁ。ずっと着ていたい。
花魁と太夫、そして従者たちや花見のための準備が全て整い、城の一角にある桜が見事に咲き乱れている庭で、将軍様が来るまで静かに待っていた。
これからお偉いさんに会うっていうのに、花魁や太夫の方々は堂々としていたので、流石だなぁと思いました。私たちは緊張でガチガチなのに。
暫くして、将軍様が庭に面した部屋の縁側みたいな所に出てきた。あ、勿論お顔は見てませんよ。だってお許しも無く見れるわけないじゃないですか。皆揃って地面見てます。将軍様が来たのは、城の人が「上様のおなーりー」ってしたから分かりました。足音なんざ聞こえませんでしたよ。
「よう集まった、皆の衆。面を上げよ」
「「ははっ」」
ゆっくりと顔を上げて、初めて見た将軍様の顔。めっちゃ美人でした。う、羨ましぃ・・・・女性が憧れる美人さんだ・・・・。猫の様な目にスッと通った鼻筋、紅を差した唇が真っ白な肌をより一層引き立たせ、結い上げられた黒髪は引き込まれそうなほど美しい黒色だった。
あぁでも、あんなに簪で飾り付けなくても大ぶりな花飾りを一つつけて小さな装飾品で飾った方が綺麗なのに。折角の黒髪が痛んじゃいそう。
「ほぅ・・・・これはこれは、中々お目にかかれぬ美男美女ばかりだな」
脇息に凭れ掛かり、絶世の美女は笑う。
「この宴、十分に楽しむがよい」
その言葉で、宴が始まった。
宴が始まってからは、もう大変だった。料理を運んで空いた皿を片付けて酒が切れたら追加して・・・・大人の人もいたけど、結構動いた。一緒に行動してる秋一に絡んでくる人もいて、お姉ちゃん大変でした。
はいそこの花魁さん、貴方の禿に秋一はあげないからね。
必殺愛想笑いで頑張り、今は休憩中です。
この宴に参加してる子供は私たちだけなんだけど、特別に休憩スペースを作って貰ったんだよね。子供の特権。
「つかれた」
「だねー」
2人でちまちまと甘味を食べながら、お茶を飲む。うん、美味しい。
休憩スペースとして幕で仕切られているここは、花見会場からは中は見えない。なので、寝っ転がってても怒られないのです。らくちん。
昼過ぎに始まった宴は日が傾くにつれてドンドン賑やかになり、夜まで続く予定だ。で、将軍様が特別に部屋を貸し与えて下さったので、皆でお城にお泊りしてから帰る予定。勿論、夜のお相手もありです。その分の料金は別で貰うそうなので、皆さん気合い入ってます。
ちょっとした小休憩はあったものの、しっかりとした休憩はこれが初めてなので、ちょっとうとうと。
陽が沈みかけて、赤く染まり始めた空を見る。
そういえば、このあとイベントあったようなぁ....。
「失礼、将軍様がお呼びです」
わぁ。