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水色桔梗ノ末裔   作者: げきお
本能寺への道
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64話 光秀の決意

近江坂本城で、俺は父光秀と相対していた。

俺は歴史をすべて語ろうとしている。


「天下一統を成し遂げた秀吉は、位人臣を極めます。

貧農の出自である秀吉が、ついに関白まで上り詰めるのです。

そして、上様の政策を継承するのです。

即ち、唐入りを目指し、朝鮮に出兵するのです。この政策は諸大名にとっては不満を鬱積させることになりました。強固な基盤のあった、秀吉の家臣団にも亀裂が生じます。そこに上手く付け込んだのが「徳川殿」です。結局、二度にわたる朝鮮出兵は失敗に終わります。

そして、その途中で秀吉が亡くなるのです。まだ幼い息子を残して‥‥‥

その息子は「豊臣秀頼」と言います。秀吉の側室である「茶々様」との間の子供です。茶々様はお市様と浅井長政殿の間にできた長女です。

そして、その秀頼公が幼いのを幸いに、徳川殿の専横が始まります。

当時は、豊臣政権内でも二派に分れて対立があるのです。

反徳川派の筆頭が、「石田三成」です。

そして、今から十八年後に、天下分け目の「関ケ原の戦い」があるのです。

そこで、徳川殿が勝利なされ、江戸に幕府を開かれるのです。

そして、三十三年後、辛うじて存続していた豊臣家も滅ぼされるのです。

これが戦国最後の戦いである「大阪の陣」です。

その後、江戸幕府は鎖国政策を掲げ、諸外国との交わりを断ちまする。

ですが、約250年程、平和を謳歌するのです」


「成程の‥‥‥最後に天下を統べたのは徳川殿か‥‥‥」


「左様です。しかし諸大名をまとめ上げ、平和な時代を築いたのは、徳川殿の功績です。ですが、鎖国政策で、当時欧州の列強が行っていた植民地政策には乗り遅れ、技術の進歩からも取り残されるのです。そして、結果的には外国の圧力で開国を迫られるのです。結果、内戦が勃発し、江戸幕府は滅び、帝を中心とした近代国家になるのです。

日ノ本は「大日本帝国」となり、欧米列強に対抗していきます。元来の民族性もあったのか、急速に発展し、欧米にも迫る勢いで植民地獲得競争に参戦していくのです。

大日本帝国は三度の戦争に勝利し、世界の列強の仲間入りを果たしますが、二度目の世界大戦において敗北いたします。それが363年後の事です。

その結果、日ノ本は「民主主義」の国に生まれ変わります。その戦争によって、全土が灰燼に帰すのですが、またもや奇跡的な復活を遂げ、世界の経済大国に成長するのです」


「そうか……日ノ本の民はやはり優秀なのだな?」


「確かに優秀です。科学技術も特定の分野では、世界の頂点を極めます。

ですが、ここで問題となってくるのが、ある「武器」なのです。

「核兵器」と呼ばれる大量殺戮兵器なのです。所謂「爆弾」なのですが、1発で数百万の命を奪うことが出来る「最終兵器」なのです。この武器を世界の国々が所持するのです。戦争も小規模ながら勃発するのですが、この「核兵器」は使うのが躊躇されるのです。勿論、地球規模での環境への問題もあるのですが、報復合戦になれば、この地球上の生命が滅亡する可能性があるからなのです。

そして、445年後にその禁を破る国が現れるのです。

その核兵器による攻撃によって、私は死を迎えました。

恐らくは、日ノ本だけでなく、全世界の人々が死に絶えたかもしれないのです。ですが、なぜか、私はこの時代に転生した……それが経緯です。

そして、生まれ変わったからには、そのような未来を迎えることに耐えられず、歴史を改変しようとしておるのです……」


「成程の……で、お前はどのように歴史を変えるというのだ?

わしが上様を討つ……これが無ければ幾分歴史は変わろうな?」

光秀が疑問を呈した。


「確かにそうかもしれませぬ……

ですが、それでは歴史上の悲劇が避けられぬかもしれませぬ」


「もっと早くに日ノ本自体が滅びる……そういう事か?」


「それはわかりませぬ。仮定の話は私にも読めぬのです。

自らが歴史を改変する主導権がなければ……」


「という事は、やはりわしは……上様を討つべき……なのか?」


「父上は……如何お考えなのですか……」

俺は核心に迫った。


「正直に話そう……

実はわしも色々と悩んでおったのじゃ……

わしは上様を次の天下人と見定め、その天下布武に邁進してきたつもりじゃ。

そして、それは達成されようとしておる……

じゃが、本当にそれでよいのか……つとに悩んでおるのじゃ……

内裏との事や、上様の為人……わしには疑問を感じざるを得ぬ。

勿論、わしは上様に引き立てて頂き、過分な地位も頂いた。

だが、後悔もしておるのかもしれぬ……

上様の天下が、万民にとってより理想的であるとは思えぬのじゃ」

光秀は、心持を正直に語った。


「父上、未来の私が知ることをお話しいたします。

歴史では、父上が上様を討つこと……これを「本能寺の変」と呼びます。

この本能寺の変は、日本史上最大の事件と呼ばれ研究されておるのです。

「何故、光秀が信長を討ったか……」これが理由がわからぬのです。

色々な説が、実しやかに語られるのです。

そして、この先の起こる事件ですが、上様は徳川殿を安土に呼んで接待なされます。その饗応役を父上に命じるのです。一説には、上様が徳川殿の暗殺を父上に命じた……このようにも言われております。それが事実かはわかりませぬ。しかし、歴史では父上はその饗応役を突如解任されるのです。上様の勘気を蒙って……そしてその後、秀吉の援軍として中国へ出陣するよう命じられます。

そして、その出陣の際に石見・出雲を与える代わりに丹波・志賀郡を召し上げる……このように伝えられます。これが原因であるとも言われるのです。

他にも、長宗我部との間で面目を失った……

朝廷から、上様暗殺を嗾けられた……など様々な憶測を呼んでいるのです」


「成程の……後世の歴史家の興味は尽きぬ訳じゃな……

だが、もしそうであるなら、どれも違うのぅ……

もし、わしが上様に対し謀反するのであれば……

それは、天意あるいは神意といったところか……

天下万民のため、その意に従った……そういう事になろうか……」


「私も、父上を間近に見て、そのようにしか考えられませぬ」


「わかった。わしは敢えて汚名を被ろう……

上様に対して、謀反仕る……

そして、歴史に抗い天下を統べ、歴史を変革しようではないか……

十五郎……力を貸してくれるな……」

光秀は決断したのだった……


「はい。私はこの時のためにずっと準備してきたのです。

その筋書きもできておりまする……」


「聞かせてくれぬか……その方策を……」


「はい。ではお話しいたします。

まず申し上げることは、私以外にも転生者がいる‥‥‥という事です。

しかも、未来で同じ場所で同時に死を迎えた者達なのです。

当然、皆お互いをよく知る友人たちです。

そして、この時代の様々な境遇に転生したのです。


まずは、先般我が家に仕官した大蔵長安殿です。

我々の教師であった人で、様々な未来知識・技術をお持ちです。


そして、望月千代殿‥‥‥彼女は私の婚約者でした。

未来では医学を学んでいた者です。

今後、この時代の医学が驚異的に進歩するはずです‥‥‥


そして、真田信幸殿‥‥‥武田家臣、真田安房守殿の嫡子で、現在上州岩櫃におります。実は先般の甲州征伐で細工をしているのです。武田家は滅んでおりませぬ‥‥‥

自害なされる直前に、勝頼公の嫡子信勝殿を救い出し、匿っておるのです。


次に鈴木孫三郎殿。彼は雑賀孫市殿の嫡子です。未来での武器に関する知識をお持ちです。実は此処でも我々が暗躍し、今は織田家に臣従しておりますが、謀反の後、我が明智家と同盟を結ぶ手筈になっております。雑賀の内部抗争で土橋守重を暗殺したことになっておりますが、実は芝居でして、守重殿は土佐に匿われております‥‥‥


最後に長宗我部信親殿。彼も転生者なのです。未来では造船を学んでおった者なのです。そして、長宗我部は、未来技術を使った強力な水軍を建設しました。

当然、明智家と同盟を結び協力致します‥‥‥


私を含め、全部で六人が二年ほど前から交流を持ち、綿密な歴史改変計画を作っているのです。そして、本能寺の変の後、協力し合い、明智の天下取りを目指します。

ただ、この後は我々が持つ歴史の知識は改変されるため、役立ちませぬ。

英知の限りを尽くし、戦うしかないのです‥‥‥」


「そこまで計画しておるのか‥‥‥」


「はい。絶対に失敗は許されませぬ。

まずは、中国から戻る羽柴殿を倒さねばならぬのです。

もし、成功すれば大幅に歴史が変わり、我々が有利になります」


「何か具体策はあるのか‥‥‥あるのであろうな‥‥‥」


こうして、俺は光秀と語り合っていた。

ついに具体的な方策を話すことになったのである‥‥‥




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