表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水色桔梗ノ末裔   作者: げきお
本能寺への道
5/267

4話 歴史変革

 俺は、口が利けないように、己を装っていた。

数日のうちに、色々なことが状況からわかったのだ。

俺だから、これほど早く理解できたのだろう。

そう、「歴史オタク」であり、曲がりなりにも「明智の末裔」を自称する家系に生を受けていたのだから……


 俺は、「惟任日向守」つまり明智光秀の嫡男……「十五郎光慶」に転生したらしいのだ。

しかも、21世紀では22歳だった俺が、10歳の子供である。

無論、頭の中は「歴史オタクの大学生」のままだ。


 数日前、俺は溝尾庄兵衛と配下の者と共に、鷹狩に出かけたらしい。

俺は、どうやら惰弱な少年だったらしいが、珍しく晴れたこともあり、病弱にも関わらず、鷹狩がしたいと庄兵衛に強請ったらしいのだ。


 庄兵衛は反対したらしいが、俺が懇願したため、許したんだと。

で、御多分に漏れず、大雨~落雷~意識不明……こんな成り行きだったらしい。


 俺は決断していた。あの「悍ましい歴史」を変えてやるんだ。

あらゆる愛するものを奪った未来……そして今、1577年。


 あの時から450年前……しかし、どんだけ遡るんだよ。

というか、あれか?自分の先祖に遡って歴史を変革するには必要だったのか?

先祖で、歴史を変革できる人間が転生先に選ばれたのか?

そう考えれば、自然と納得できるのかな?


 そして、今の俺が置かれた立場でどう歴史を変えるのか?

そこが問題だ。俺は10歳。子供には、そんな力は到底ありはしない。

ただ、この世界の自分の父親には、多大な力があるのだ。

そうなんだ……父、明智光秀は日本史上最大の事件を起こした張本人なのだから。


 そう、あの時は、今から5年後である……「本能寺の変」

しかし、歴史はその後、父光秀にとって過酷なモノになっていく。

俺の立場で歴史を変革するには、あの時しかない。

そうなんだ。この世界での父、明智光秀に天下を掌握してもらう。

そして、その後を自分が継いで、日ノ本を治めればいいのだ。

しかし、それだけではダメだ。欧米列強の侵略に立ち向かえない。

そのためには、立憲君主国家の建設と、軍事力、そして資源確保。

世界に冠たる、日本という国家の建設。

俺が考えたのは、先進的な海軍力をもって、新天地である領土の確保。

場所は、「アメリカ本土」である。

そこに、日本人の新たな「移民国家」を建設すること。


 しかし、そのためにはまず、日ノ本という国家を統べることが条件になる。

俺は歴史を知っている。その知識を動員し、勝たねばならない。

これが決意したことだった。そして考えたのだ。

俺がこの世界に転生したとういことは、他にもいるのではないか?

転生した人間が……

あの時、俺と一緒にいた5人……同時代で生を受けたのではないか?

そんな期待感があるのだった。

もし出会えたなら、きっと志を同じくし、協力し合えるはずなのだ。


 俺は日夜構想を練った。また、周囲の評価が、惰弱な少年であることを知った。

だから、父に評価されるよう、文武諸芸に励んだ。

幸い、俺は頭の中は「現代人」だった。22歳の頭脳なのである。

しかも、古文献を読み漁っていただけあって、何でもすぐに理解した。

というより元々知っていた。

3年の後には、「明智の嫡男は神童である……よい跡継ぎじゃ」

などと、噂されるようになっていた。


 この3年間の歴史……未来で知っていた俺の歴史認識と同じように進んでいる。

俺の構想は、転生してから5年後に起こるであろうあの事件まで、歴史を変えないということだ。

逆に言えば、5年後の事件を変えるような要素を、排除しなければならない……という事でもある。

問題は、今の俺が置かれた立場だ。

明智十五郎は生没年すら、わかっていない。

つまり、歴史の表舞台に立ったような足跡すら、ほとんどない人物である。

明智十五郎に転生した俺は、すでに周りの人々に小さな意味では影響を与え、歴史に干渉している可能性は否定できない。

それが証拠に、まだ13歳の俺に、父光秀は軍事機密を始め、政治的な事にまで意見を求めるようになりつつある。


 ただ、未来視点から知りうる事実を俺は、断定的には言わない。

あくまで婉曲して、「某ならば、このように考えまする……」

こう答えるのみだ。

あくまで父光秀との会話の中で、未熟な若者の戯言……という体を取っている。

明敏な父にはそれで充分であるし、父の脳裏にもかすかに残る程度の刷り込みしかしていない。

意図的にそうしているのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ