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水色桔梗ノ末裔   作者: げきお
本能寺への道
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3話 転生

 天正五年(1577年)六月二日

俺は夢を見ているのだろうか?眩い閃光に視界が支配された後の事は何も覚えていない。

でも、なぜか記憶めいたものがあるのだ。2027年6月2日、俺は死んだはずなんだ。

しかし、意識がある。夢を見ているんだ。死後の世界とか……あるのか?

死とは、何もかもが消えてなくなるんではないのか?

否……だって俺、意識がある。現に色んなことを思い出そうとしてるし。


 寒い……そして痛い……なんでや?痛いって……

真っ暗な視界が、徐々に明るくなっていくような気がした。

そして……何やら話し声のようなものが聞こえる。わからないが……


「惟任日向守光秀」……柴田勝家と並ぶ織田家の筆頭家老である。

光秀は、足早に廊下を急いでいた。ここ近江坂本城に急遽戻ったのだ。

現在は、丹波攻めと毛利攻めをする秀吉の援護という困難極まりない役目を寝食を惜しんで果たしている。そこに、知らせが入ったのだ。


「嫡子十五郎様、余命いくばくもなし……」


 光秀にとって十五郎は、やっと生まれた男子であり、跡取りでもある。

仕事熱心な光秀でも、さすがに、じっとしてはおれなかった。

信長に一時帰陣の使者を送るや、一目散に坂本城に駆け戻ったのだ。


「殿、申し訳ござりませぬ。某の不手際、死をもって償うより……」

声の主は、「溝尾庄兵衛茂朝」……光秀の重臣である。


「庄兵衛よ、致し方あるまい。で、どうなのだ?目を覚まさぬのか?」


「医師が申すには、梅雨の雷雨の中、雨に打たれ、落雷の衝撃で目も見えぬようになっておられ申す。体も冷えたままにて……生きているのが不思議であられると……」

庄兵衛はそう言うと、男泣きしてしまった。


 ふと、障子が開くような音が聞こえた気がした。と同時に、右手が妙に暖かく感じられた。「なんだろ?」


「熙子……子細は庄兵衛より聞いた。神仏にすがるしかないのかの?」

俺の右手の温もりはこれか?


「しかし、何なんだ?俺は死んだんじゃないのか?

目は見えない……というか瞼が開けられない。しかし耳は聞こえるんだ。

夢なのか?否……違う……絶対に人の声が聞こえるんだ。

確か、「ヒロコ」とかいってたな……誰だそれ?

しかし、また眠くなってきた……意識が飛んでいく……」




 どれくらい時間が経ったのだろうか?すでに夜になっている。

「え?暖かい……そして……目が見えるやん!!何これ?」

俺の視界に入ったのは、きれいな女性だった。

うす暗い中にも、その「美しい黒髪」が輝いている。

そして、その上に天井の木の格子の正方形が見えた。


「十五郎……十五郎……見えるのかえ?……十五郎?

殿?殿ーーーーっ?十五郎が……」


「十五郎ーーーっ わからぬか?父が……」


「兄上……兄上ーーーっ」泣きじゃくるような声も。


「若……若殿……庄兵衛ですぞ?おわかりになりますか?」


 ちょっと……何?俺、寝てる……しかも囲まれてる。

時代劇さながらの、着物ばっかの人たちに。が……声が出ない。

体も痛い……何なんだよ……マジで。

って……痛い。なんで痛いんだ?死んだはずなのに、なんでだ?


 いかん……これは頭の整理がつかないぞ。俺は死んだはず……

それも、おそらくは核爆発に巻き込まれて。

頭がおかしくなってきた。

恐い……俺は恐怖のあまり再び眠りについた……フリをしたんだ。


 頭の中で考える。これは夢じゃない……アレだ。

よくマンガや映画に出てくる……そう、タイムスリップってやつだ。

でないなら、輪廻転生ってヤツか?よくわからんが、俺のいた時代ではない。

まったく状況が掴めない……どうしよ?

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