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水色桔梗ノ末裔   作者: げきお
本能寺への道
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37話 それぞれの思惑

俺は、京姉と「この世界」で再会することができた。

転生してよりこの方、これ程嬉しいことはなかった。

未来で最後に京姉が語った言葉‥‥‥

「生まれ変わっても、一緒ならエエよね?」

それが実現できたことが、信じられない展開であり、信心深くもない俺が、神に感謝したくらいだ。そして、誰にも邪魔されない山小屋で、21世紀では経験できないような、濃密で充実した時間を過ごせたことに感謝していた‥‥‥


そして、翌日、「この世界での現実」に引き戻されたのだった。

今の時代を生きる俺達には、やるべき事が多い。

「忌まわしい未来」を変革するための「行動」である。

一旦、禰津村に戻り、今後の方策を話し合わねばならなかった。

俺と京姉、源七等4名、そして、京姉の傅役の「あざみ」という女性で密談に及んだのだ。


「姫様、本当に良うございましたなぁ‥‥‥」

その女がまず、半ベソをかきながら、口火を切った。

余程、京姉の事が大事な存在だったのだろう……


「ありがとう‥‥‥あざみ‥‥‥。明智十五郎様と配下の方々よ。

私の傅役の「あざみ」です。皆様もよろしくお願い致します」


「あざみ殿、配下の源七、疾風、琴音です。甲賀の忍びで、某が最も頼りとする者達です。以後よしなに頼みます」こうして一通りの挨拶を済ませたのだ。


「千代殿とも話したが、真田源三郎信幸殿と、まずは接触しようかと思う。彼は、我らと同じ未来からの転生者で、志を同じくすれば心強い味方に成り得ると思う」

俺が、基本的戦略を提示した。


「しかし、真田家の嫡子とあらば、現状では敵国‥‥‥

うまく事が運びましょうか?」源七が当たり前のように言った。


「問題はそこじゃ。未来で俺たちが友であったと言っても、転生したこの時代において、置かれた立場がかなり異なる。相容れない目的を持っている可能性も考えられる‥‥‥」


「でも、信二‥‥‥源三郎殿も、同じ転生者の十五郎様と会いたいはずよ?」

京姉が言った。


「確かにな、お互いの意見交換はしたいはずや。結果はどうあれ‥‥‥な。

源七等はどうじゃ?異存はなかろう?」


「はい。こればかりは話してみなければ……」


「よし、では我らは暫く例の山小屋で待つとしよう。

あまり人目につきたくはない。千代殿、頼めるか?」


「はい、これより沼田に遣いを送ります」


こうして、俺たちはひとまず待つことにした……



一方、土佐に向かった孫三郎等は、岡豊城下にいた。

湿気を含んだ空気は、若干夏の匂いを感じさせる。


「初音……すまんが、これ…十五郎からの書状や。

弥三郎殿に届けてくれんか?」


「承知しました……」


「頼む。しばらくはこの旅籠で待つしかないやろ。

善之助と待ってるから、気つけて行けよ?

雑賀からの使者や……言うた方が通りやすいやろ」


「はい。そう致します……では」

そして、初音は軽快に立ち去った。

しかし……カワイイなぁ……孫三郎は心の中で呟いた。


「おい、孫……あの子、くノ一にしたら別嬪やの?

もう頂いたんやろが?ハハハッ……」

善之助らしい、率直なフリ方だった。


「ああ、そうしたかったけどな……やめた。

あいつは未通女おぼこや。珍しくな……

それに、マジ惚れしてもうたから、手はつけへん」


「ほぉ……そんな事もあるんやのぉ?」


「それより、善之助?わし、おまえに隠してる事あるんや。

義兄弟のおまえに黙ってたん、気が重うてな……

初音も知ってる事なんやけどな」


「なんや?自分は人間やない……とでも言うんか?ハハハッ」


「そうや……この時代のな」孫三郎は、あっさり答えた。


「そうか……なるほどなぁ…って、おい、どういう事や?」

善之助は、狐に摘まれたような顔つきをしている。


「ん~、どう言うたらええかな……

わし、450年先の世から、この時代に生まれ変わったんや。

やから、先の事がわかるんや。

おまえに渡した火縄銃……あれに彫ってる溝なぁ……

あれは未来の技術なんやで」


「何やて……ホンマか?」


「それにな……今後、この日ノ本で起こる事……俺は知ってる。

1年後になぁ……信長は死ぬんや!!」


「おまえ……何者なんや?鈴木孫三郎重朝なんやろ?」


「そうや。つまりやなぁ……450年先の人間が、鈴木孫三郎の体を借りて生まれ変わっとるんや。小さい頃から良う知ってるおまえが気づかんかったんは、450年先の「わし」が、この時代に生きる「鈴木孫三郎」とそっくりの人間やったんやろな……

それになぁ、わしは未来では軍人……つまり戦争の達人やったんや。

やから、こんだけ鉄砲放ちも達者なんや……

もっとも、未来では火縄銃やのうて、すんごい武器ばっかり使ってたんやけどな。信じるか?」

孫三郎は、善之助にわかりやすく伝えたつもりだった。


にわかには信じられんけど……仮にそうやとして、おまえは「この時代」をどう生きるつもりなんや?先の事がわかるんやったら、天下取れるやないか?」

善之助の率直な疑問だった。


「そうかもしれんな……けど、そのつもりはない。

俺の他にも、同じような転生者がおるし、上手に歴史を変えんと、未来が大変な事になるんや。俺らがこのまま歴史に干渉せんかったら、450年後に日ノ本すべての人間が死に絶えるんや。

いや、日ノ本だけでなく、伴天連や唐の国もすべて……この世の人々が死に絶えたかもしれんや。未来のわしも、その時に死んだんやけどな……

どうもこの世のすべてを巻き込んだ戦争になったはずなんや……」


「なんや良うわからんけど、遠い未来に生きる者すべてが無くなる……

そういう事やな?」


「そうや。ほんでや……生まれ変わった俺らは、それを阻止するために、歴史を変えようと思ってる訳や。明智十五郎も、俺と同じ転生者なんや。

これから会う「長宗我部弥三郎信親」もそうやし、他にもおる」


「ほんで協力して、歴史を変える……言う事やな?」


「そう思てる……上手くいくかわからんけどな。

やから、こんな素っ頓狂な話に付き合ってくれる仲間が欲しいんや。

こんな事言うて、信じろいう方が無理があるからな……

けど、紛れもない事実なんや。

やから、おまえにちょっとでも信じてもらえるように、ここ「土佐」までついてきて貰うた。これから、俺や弥三郎が計画してることを見てほしいんや……」

孫三郎は、素直に善之助に打ち明けたのだった。



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