36話 意外な事実
すでに、夜も深まってきていた。
俺は、京姉の肌が恋しくて堪らなかった。京姉も同じだったのだろう……
京姉の胸にむしゃぶりついた……俺、コレが大好きだったんだ。
いや、胸だけでなく、体のすべての部分が愛おしくて堪らなかった。
京姉の「声」が聴覚をも刺激し、体が反応してしまう。
俺は、下手だったかもしれないが、精一杯頑張った。
次第に京姉の反応も良くなってきているようだった……
なんせ、勝手知ったる体である。「高まり」は声でわかるんだ……
そして、漸く絶頂に導く事ができたようだった。
俺は、何とも言えない満足感に浸った。
「ハァ~~気持ち良かった……恵君、やればできるんやね?」
「ちょっと……失礼なヤツやなあ。そら確かに俺、下手やったかもやけど」
「大丈夫よ~ウチ、他の比較対象知らんから……」
「それ……慰めになっとらんやんけ?」
「あら?怒った?カワイイなぁ……」
「おいおい……」
「もぅ……ちゃんとご褒美に「お返し」したげるから」
「ワォ~~嬉しい……」この状態どう処理しようって思ってたんだ。
だが、「ソレ」はわずか1分で終わった。
俺の体が敏感だったからだ。それについて、お互い何も指摘しなかった。
それから、俺たちは、また語り始めた。
「京姉?さっきの話やけど、俺の歴史変革の構想……どう思う?」
「正直わからん。ウチが望むのは、なるべく犠牲が少ない方法やわ」
「やけど、こんな時代や。多少は仕方ないかもしれん……
あんまり言いたくはないんやけどな。すでに俺は人一人殺めてる。
謂わば、弱肉強食の世界やな。倫理観とかあったもんやない……」
「確かにそうね。ウチも人の生き死に……何度か見てきた」
「悩ましいけど、未来のためには、やらざるを得ん。
この計画が正解かとうかは、正直、自信ないけどな」
「恵君達の考えはわかったけど、ウチは医者としてできる事をやりたい」
「うん、それはやったらエエと思う。少しでも救われる命が増えるんやったら、これ以上の事はないからなぁ」
「けど、転生した6人の意思統一は必要よね?」
京姉が核心を突いた。
「そうやな……それが一番の課題や。信二と会われへんかな?
できるだけ人目を避けて……」
「それは、ウチがなんとかする。此処に呼び出すのがエエね」
「そうしてくれるか?会って話してみんとなぁ……」
「うん、そうやね……でも、複雑やと思う。
近い将来、主家が滅びるのがわかってるんやもん。
ウチも実は、すごく辛いんよ……」
「京姉も、武田家とは色々関わりあるんか?」
「ううん……望月党は先代の信玄公が亡くなってから距離置いてる。
でも、勝頼公は……ウチの義兄なんよ……」
「エエエエッ……どういう事?」
「ウチが聞いた話では、ウチの父親が信玄公……
母、望月千代女が未亡人になったあと、信玄公との間にできた不義の子が、ウチなんよ。だから勝頼公は、ウチの義兄にあたる人なんよ。
といっても、会ったこともないんやけどね」
「マジかい?そんな事実があったんか……」
俺は、またしても知らない「歴史的事実」に遭遇した。
「恵君?武田家はやっぱり滅んでしまうよね?」
「どうやろ?仮に俺らが、何か干渉したとしても、厳しいやろな……
たぶん、甲州征伐で犠牲者が増える方向になるやろ。
戦が長引けば、結果的にそうなる」
「なんとか、勝頼公だけでも助けられんやろか?
たぶん信二や、真田安房守もそう考えると思う……」
「いや……表立って生存してたら、大幅に歴史が変わるやろな。
「本能寺の変」そのものが起こらんかもしれん。
そうなると、計画が狂ってしまう」
「例えばなんやけどね……「勝頼公が死んだこと」にする……
そして、本能寺の変が終わった後、実は生きてた……
みたいな設定にはできんのかな?」
「んん……どうやって?方法が難しいな。
仮に影武者やとか、バレたら目も当てられんしな」
「そういう事やったら、信二も積極的に協力してくれるんやない?」
「やっぱり、信二が納得するには、それしかないかな?」
「そうやと、ウチも嬉しい。会ったことなくても、義兄やから……」
「わかった。なんか方法ないか考えてみる。
まず、信二に会うことが先決や。京姉、頼めるか?」
「わかった。明日にでも巫女の遣いを走らせることにする。
遠くないし、近日中に会えると思うわ」
「それはそうと、京姉が転生者やっていう事は、誰かに言ってる?」
「うん。亡くなった「あやめ」ともう一人……
さっき修練場で会ったと思うけど、「あざみ」っていう、ウチの傅役」
「そうか……俺は、配下の忍びの4人や。なるだけ伏せたいしな。
まだ、父、光秀にも言ってない。まあ違和感は感じてるやろけど……」
「そう……でも、あと1年程やね?いずれ話すんやろ?」
「そのつもりや。時期的な事が難しい。純一や巧との連携があるからなぁ。
あいつらの親父も、歴史的影響力が大きいから、時期間違ったら、大変なことになる。そこが難しいところなんや。信二もそうなるやろ……」
「それはそうと、真田安房守は、この時代では、実際どんな武将や?」
「ウチも、信二から聞いてる内容しかわからへん。
けど、ウチらが知ってるように、「表裏比興の者」って感じの人やないみたい。
武田家の行く末を心配してるって……信玄公に、すごく恩義を感じてる」
そうなのか‥‥‥やはり、未来で俺が知ってる歴史的イメージは、実際、この時代の実像とは乖離が大きいことも多い‥‥‥イメージだけで判断すべきではないな。
「そっか……色々よく調べて事を起こさんとアカンな‥‥‥」
「恵君は、織田信長には会ったん?」
オォ‥‥‥鋭いな、京姉は。
「一度だけ会った。俺が「神童」とか噂されるようになって、それを聞いて、安土城に呼び出されたんや。正直、イメージに近かった。
凡人やないわ‥‥‥怖かった」
「やっぱり、そうなんやね?「本能寺の変」で斃れたりせんかったら、日ノ本の未来はどうなってたんやろね?」
「どうやろ?ただ、信長は強烈な意思を持ってる人間や。
民がどうとか、朝廷や幕府がどうの‥‥‥とか、まったく考えん人間やというのはわかる。自分の中で、日ノ本がどうあるべきか、信念があるんや」
「物事の善悪の基準が、全部、「自分が絶対」そういうこと?」
「そこまでは思わんけど、この時代の既成概念は超越してるな‥‥‥」
「日ノ本の未来を託すには、リスキーってことやね?」
「少なくとも、京姉が思うような、犠牲が少ない方がエエとか、その考え方とは整合性が取れへんとは、思うけどな‥‥‥信長の過去の事績見たらわかるけど。
そこが、父、光秀との違いや。
光秀もいろんな事やってるけど、「日ノ本の民のため」と言い聞かせてやってるんや。自分が極悪人や‥‥‥いう懺悔の心が常にある。そこが大きな違いや」
「わかった。いつか会わせてね?この時代のお父さんに‥‥‥」
「そうやな‥‥‥そうしてくれたら嬉しい。
許嫁やなくて、「俺らの意思」で一緒になれたらエエな‥‥‥」
そんな話をしながら、俺たちは、飽きずに抱き合いながら眠りについた。
「あの日」まで、あと1年‥‥‥
果たして、「歴史変革」はうまく遂行できるのだろうか‥‥‥




