立ち入り禁止の夢遊道
確かに……そう、俺はどこかにいたはずなんだ。
俺は死んだ、いや死んじゃいないのかな?
体という概念があるとするならば、俺にあるかはわからないけど……まぁ痛みはない、苦しみもない、憎しみも、怒りも……。
何にもないんだ、そう、空っぽなんだ。
明るさは、夕暮れ時のようで朝の太陽が昇る前の暗さだったり、瞬きすると変わったり、変わらなかったり、一瞬一瞬が違う。
目の前に変わらずあり続けるのは立ち入り禁止の看板、その向こうは霞がかっててよくわからない、でも俺はきっと、多分、もしかしたら、そうに違いないが向こうに進まなくちゃならない。
歩こうとすれば歩けるし、周りを見渡すことだってできる。
視認できる道はデコボコで、すぐこけてしまうだろう。
諦めようか……俺は周りを見渡すことにした。
隣には……俺の隣には、欠伸をしながら気持ち良さそうに塀の上で寝る猫。
そこだけ光が当たっている。
その隣には芝生があって、ベンチもある、ゆっくり出来そうだ。
きっと腹は減らない、直感がそう告げる。
周りにはなにもない、猫と芝生とベンチしかない、光はそこに当たるだけ。
猫が微笑む、目元までつり上がる、猫は口を動かした
『一緒に一生ここにいよう』
俺は、ここに居ることはできない先に進む、と言うと
『そっちは危険だ、君は挫折したんだ』
俺は、何にたいして?と言うと
『生きることにさ、ここにいればずっと苦しまないよ』
……悲しむ人はいなかったのか?
『いないさ、君はいらないにんげんだった、でもここは違う』
何が違う?
『傷つける人間はいない』
お前は?
『さぁ?』
さぁとは。
『君次第さ』
嬉しくないのか?
『どうでもいいね、ただ君が向こうに行けばまた苦しくなるよ?』
待ってる人はいなかったのか?
『さぁ?』
答えてくれ。
『知らないよ、君じゃないんだから』
私にはわからない
『じゃあわからないね』
お前は何者なんだ
『君さ、君が諦めるためにさ』
諦めたくない
『じゃあ戻れば?』
言われなくても
『辛くなったらまた精神的に死にな』
二度と来るものか
俺は立ち入り禁止道を歩き出した、この先どうなっているかわからない。
ただ……