3-19 懺悔
炭酸飲料水の缶の蓋を開ける時に響くような
ぷしゅっ
という音が小部屋の四隅に響き
無感情に吸い込まれる。
柴崎はよろめき、その視線は岬に集中
する。
驚愕と非難。
の後の酩酊。
前後左右にその上体は揺れる。
アーミーナイフの柄の握りも緩み。
彼の手からするりと抜けて
テーブルの上の指に落下。
する直前。
岬はそのナイフを裏拳で弾き飛ばして
両脇に分厚い手のひらをはさみこみ、支える。
前に。
彼が床に放ったのは。
麻酔銃である。
黒手会の男から奪った。
その銃を。
岬は躊躇いなく撃った。
腕に自信は無かった。
外れるかもしれないし。
脚に当たれば僥倖、もっけの幸い。
眼に当たれば失明するし、
首の重要な血管に当たれば死亡の危険。
何より、指を傷つけたら、終わる。
という賭けに。
岬は出ざるをえず。
結局右の胸板に当たったのだが。
それは、幸運の幸運と言える。
麻酔銃の麻酔は、鎮静剤というより
質の悪い自白剤で。
岬が老人介護でもするように
前から抱える柴崎は、朦朧として、うわ言を半開きの口から漏らしている。
泡も少量、口のはしからもれている。
瞳はほぼ白目をむいている。
うわ言の内容はとりとめがないが、
無理やり筋をつけるのなら。
― 懺悔か。 ―
岬は柴崎という男に哀愁を感じる。
が、そんなものに浸っている余裕は無かった。