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お菓子でできた天の川

 岬が現在の仕事に落ち着くまでには、いくつかの紆余曲折があった。

つまりそれは不幸あるいは幸運な偶然を成分にした矢印に導かれた結果である。

 潰れかけの運送業者に就職したり、手違いで違法な品を運んでしまったり、それが縁で非合法な顧客が増えたり、会社が本当に潰れたり、違法な品の個人配達業者を本格的に始めたり、いつの間にか、集配に加えて回収、の役もしていたり、というより、そちらの方が身入りが良いので業務をそちらにシフトさせたりといった出来事や決断の結果、彼はまず、この道の専門職になった。


 ちなみに、回収は主に人だが、ごくたまに金品の場合もある。

人は、幇助するべき夜逃げ人もあれば、夜逃げをした者の追跡もある。

 彼が追跡する者は拉致をして、弛緩剤で意識を奪った上で依頼人に引き渡すのだが、その先は彼の預り知るところではない。

そういう我関せずな態度と手際の良さは顧客の信頼をあつくし、最終的に依頼の大部分は拉致になり、結局彼は職業的誘拐犯、人拐(ひとさら)い屋に落ち着いたりした。


 そして何の因果の果てか、岬は穢胡麻という細目の三十路女と岐阜の場末のゲームセンターでクレーンゲームのクレーンを操作している。


 狙いの先は明治ミルクチョコ。

 彼の横の穢胡麻は細い瞼の奥の虹彩をキラキラさせてじっと、夜空にミルキーウェイが瞬くように緩慢と動くカラフルな菓子の流れを見つめている。

 岬の目の端のその小さな横顔に対して、いくつもの疑問符が、彼の脳裏に浮かぶが、考えても仕方ないので、クレーンを操作するその指先に集中する。

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