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2-11 第三者

 柴崎がカウンターに手をついておもむろに立ち上がり

 トイレットに向かったのを確認してから、岬は会計を済ませ速足で

 六階端の客室に降り、小型PCを回収しそのまま一階につながるエレベーターに乗って

 フロントにて宿泊料金をキャッシュで支払う。

 それからロビー陰に潜み、フロントのカウンター前に柴崎が現れるのを待つ。

 程なくして対象が視界に入ったので、タクシー会社の使用無線の盗聴を開始する。

 ノイズが通常より、微かに強い。

 疑問に思う間もなく手配指示のやり取りが始まったので、

 来車ナンバーを確認しつつ、速やかに地下駐車場に降り、クライスラーに乗り込む。

路上パーキングに留め直し、乗降場に速足で戻ると、丁度乗務員がプリウスから降りて

柴崎を迎えにあがるところだったので、その脇とプリウスの間を通り抜けつつ、車体の後部に発信機を

取り付ける。

 この全てをつつがなく終えてから、岬はクライスラーに戻り軽くため息をついて

 エンジンを点火してモニターに見入る。

 3D地図上を、青の光点が点滅を繰り返しながら北に移動している。

 それはもちろん、先ほどの発信機であり、柴崎を乗せたプリウスでもある。

 後はこの光点を町田まで追跡して、タクシーから降車した柴崎を

 人影のいない神社の森沿いの路上で拉致すればいい。


 対象の運搬先、目的地は藤沢である。

 ので。

 拉致後の移動ルートには候補が複数あった。


 1:藤沢街道。

  国道467号線を南に直進する。

  最短ルートであり、引き渡しの予定時刻よりも大幅に早く到着するが

  警察にせよ、気苦労かもしれない第三者にせよ

  到着している時点で対応に余裕はでる。


 2:18号線あるいは402号線

  藤沢街道に並走する。

  街道の東。

  村が指定してきたルートは18号線である。


 3:42号線

  藤沢街道に向かって西に

  くの字に曲がっている。

  迂回路だが、安全性は高い。


 4:東名高速。

  高速。

  逃げ場のない環境であるので、できるだけ避けたい。


 岬は藤沢街道を第一候補と決めていた。

 次が18号線。

 赤の点滅の分布と、第三者の襲撃の状況をみて

 適宜判断しようと思いつつ、岬は追跡を始める。

 

 プリウス自体は安全運転であり、信号でも規則正しく止まっている。

 やがて国道140号線に乗り、町田に向かう街道を西に走り始めたので

 その後方50mまで追いついてからの、つかず離れずの運転をしつつ

 岬の感覚は警察の使用無線と、目の端のモニターの赤い光点に集中する。


 怪しい車輌は特に確認されない。

 怪しさだけで言えば岬が一番怪しい。

 大型トラックが風を巻き上げるようにして彼のクライスラーを追い越していく。


 異変は。

 まず無線から伝わってきた。


 昼間に目撃情報のあった指名手配犯たちが

 横浜市は瀬谷付近で通行車輌を奪い

 一斉に南下を始めた。


 彼らは

 18号線、402号線、42号線にばらけて疾走し、やがて追跡を振り切った。

 ほぼ間をおかずして藤沢街道と東名高速海老名口で、大型トラックが横転する。

 警察は各号線に検問を敷く。

 モニター上を縦に走る国道に、赤の点滅が無数に集まり始める。

 渋滞情報が高速の通行止めを伝える。

 次々と飛び込んでくる

 好ましくない情報に、岬の奥歯にこわばりが走る。


 ―第三者か。―



 …黒はイヤホンから流れ込む警察無線に耳と首を傾けている。


 「うん、いいね。

  予定通りだ。」

 「大がかりですね。今更ですけど」

 白が呆れたように言い、黒は悪戯っぽく笑う。

 「へへ。

 大げさくらいがちょうどいいんだぜ。

 なんせ、相手はあの村、だかんな。

 めっちゃこええ。

 こええ奴らには、こええやつらをぶつけなくちゃなあ。

 ほんと、おまわりさん、ありがてえわ。」

 

 



 

 

 






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