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Ⅰ-1
「私の理想の告白?
うーんそうだなあ...コスモス!両手いっぱいのコスモス!」
春風の香る4月。
君は、窓から吹き込む風になびく長い髪の毛をおさえ、はにかみながらそう言った。
新学期早々、彼女たちは 恋バナ と呼ばれるものをしているんだろう。
聞こうとは思ってない。盗み聞きは悪いことだ。
わかってる。わかってるけど彼女の声だけ鮮明に僕の耳に届くのだ。
彼女は、城崎茜。
僕はあの子に恋をしている。
小柄で、華奢なのによく食べる。
いつも授業の合間にお菓子を食べているのを見かけるし。
笑顔がかわいくて、人懐っこくて彼女のことを狙ってる人は少なくない。
俗にいう、高嶺の花。
きっと彼女はそのことに気づいてる。勘がいい子だから。
去年の今頃、入学早々君は告白されてたっけ。
しかも人気者のイケメン先輩に。
女子のあこがれの先輩だ。
ほかの女子なら喜んでイエスと言っただろう。
それなのに断った。
理由は知ってる。
君には、好きな人がいる。