巻き込まれたタヌキさん
遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした!ゲームのプロットも兼ねているので、向うの制作もしていると遅れてしまって…(言い訳)
「私は地下にある秘密通路で退却するから、それまで持ち堪えてくれないか?」
…はい?
思わず某刑事ドラマの元キャリア組特〇係みたいな声が出る位驚いてしまった。
当然ながら無理に決まっている、俺が必要という事は現状では耐えられない(時間稼ぎが間に合わない)という事。
そこに俺が投入されても焼け石に水、孔明に罠なのだ。
「無理です!自分だけ助かって俺に死ねってことですか!?第一、私、ただの30手前の密売人ですよ?SMGだけでどうしたらいいんです!」
ボスが必死になって肩を掴んで振りながら言う。
「頼む!人数が一人増えるだけでも十分なんだ!今社員旅行で警備の人数が少ないのも怖い!」
この「十分」って生き残るの前提じゃない気がする、いや絶対そうだ!
こちらも負けじと首をちぎれんばかりに振る。
「えぇ!?俺まだ死にたくないですよ!英雄ぶるだけの力もないですし!」
そしてお互いに首と手を振り過ぎて、千切れるんじゃないかと思い始めた頃、終焉は訪れた。
「…報酬は出す。ここからの脱出とその後の保護をする。」
「はい、喜んでー!」
俺はとても良い笑顔で言った。
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という訳で、今現在、邸宅の防衛に当たることになった。
上手く利用された気もするが、そもそも考えてみれば巻き込まれた時点で、俺単独での脱出は不可能に近かったわけなので良いとしよう。
むしろうまく利用してやったぜ位のノリじゃないと自分が馬鹿みたいでショックだ…
ちなみにボスはこの部屋にあったマンホールみたいなやつから地下道に入ったみたいだ。
親指立てながら入ってたからちょっと腹が立った。
さて今は状況確認の為、無線が他の警備との連絡を終えるのを待っている。
雇われたとはいえ、変に出しゃばって死ぬのも嫌なので、部屋の隅で俺はおとなしくしていよう。
「連絡つながりました!他所でも敵部隊と遭遇!邸宅内に、最低3つのS.W.A.T.分隊が居る様です!」
やっと口を開いた黒服無線手に上司っぽい黒服が訪ねる。
「他の警備部隊は動かせそうか?」
しかし、いえ、と首を振りながら無線手は応える。
「向うも押され気味かつ、制圧射撃を受けていて移動ができないようです。唯一S.W.A.T.に束縛されていない俺たちがうまい事遊撃しないと、他の警備部隊が行動不能になるのも時間の問題です。」
「そうか…部屋の中にいるのは俺を含めて9人。まず、ここを警護するのに5人、遊撃するのに4人といったところだな。」
どうやらあまり良いとは言えない状況のようだ。
話を聞いた限りでは警備も3部隊、1部隊につき7人しかいないらしい。
さすがに訓練を受けた部隊と、多少の身体能力だけの素人では分が悪すぎる。
なんでもこの時間帯はいわゆる夜勤みたいな扱いで、大抵の奴は13時くらいの出社らしい。
マフィアも通常時間外だと給料高くなるもんなんだな。
閑話休題。
そんな訳で班分けが行われたわけだが、
「密造人、お前遊撃な。」
とあっさり決められてしまった。
いやまぁ当然と言えば、使いつぶせるし何かと利点が多いので当然なのだが、
正直俺には周りから思われているほどの実力はない。
何回も言うようにあのレ〇ンさながらの抜き撃ちは、映画に憧れてあれだけ練習した結果の賜物である。
実戦じゃあそこまでの命中精度も抜き撃ちも期待出来やしないのだ。
というかぶっちゃけ、ボス含め全員それ分かっている気がする。
あ、ほら。あいつ目そらしたもん。
さっきのアレでヨイショしといてこういう時に使いつぶす辺り、無駄なところだけ裏社会のプロっぽいのにも腹が立つ。
…さっきから腹立ててばかりだな、俺。
まぁ他に選択肢があるわけではない、どうしようもないのだ。
無事に帰れたらバナナ牛乳を飲むことを決意しながら、俺はため息をついた。
バナナ牛乳の下り、十数年前に読んでいた某少年向け漫画雑誌に、怒りっぽい人にお勧め!と載っていた所から引っ張ってきてます。昔はカルシウムで短気は治るといわれていましたが、最近では全く言わなくなったので知らない方もいらっしゃるでしょうね…ちなみに似非科学だったそうです。