ロサンゼルス~僕とマフィアと時々チーズ~
ちょっと事情があり更新が遅くなりました。申し訳ありません。
ですが!まだ失速はしないと思うのでご安心ください!
扉を開けるそこには階段が続いていた。
恐らく地下一階まで程度の深さだろうか。
階段を下ると、打ちっぱなしコンクリートで作られた無骨な部屋が一つだけあった。
なんというか、こりゃまるで…
「核シェルターみたいだな…」
「まぁ、そういう用途にも使えるように作ったからな。」
と、返したのは椅子に座ったフェドーラ帽とスーツ姿の猫族の男。
清々しいまでのマフィアンスタイルである。
気を取り直して挨拶をする。
「初めまして、売人のタヌキです。」
「…座ってくれ。」
噂の通り無口だな。
損なことを思いながらテーブルを破産で対面に座ると後ろの扉が閉じられた。
ちょっと閉じ込められた様でびくっとしてしまう。
「リンクセスのボス、シャゴールシュタイナーだ。」
こちらも適当に返す。
何度もやったせいでこういう形式ばった挨拶には慣れてしまった。
言われるまでもなく、麻薬の入ったアタッシュケースを相手に見せつける形で開く。
こう見えて、その辺の麻薬よりは遥かに質が良い物を作ったつもりだ。
そう、自家生産を行っているマフィアに売れる位。
無表情だった相手の顔に少しだけ驚きが浮かぶ。
中々初印象は良いみたいだ。
さぁ、儲け話の時間だ。
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「1kg、1000ドルでどうだ?」
「1200ドルは譲れない。」
珍しくボスが饒舌になっている。
粉の取引でもここまで熱心にはならないボスが、恐ろしい形相で値段提示を繰り返している。
うちのボスがチーズに関しての美食家であることは有名だが、
大抵の奴は第一印象で噂にすぎないと切り捨て考えを改めてしまう位、普段は表に出ない。
だが珍しく今回はその本性がもろに出ているようだ。
それでも流されず、値段の交渉を続ける辺りは流石ボスといったところか。
だがあの狸野郎も負けてない。
気圧されずに、少し腹の立つにやけ顔でボスの提示を撥ね付けながらも、徐々に値段を落としている。
このまま綺麗に落としどころにもっていくつもりだろう。
マフィアとディーラーの容赦のない攻防戦。
素人の俺たちでも凄いと思うくらい、上手い事値段の上げ下げを行っている。
だがそれも長時間となると俺たちにとっては苦痛だ。
ずっと立っているこっちの身にもなってほしい。
いつだか読んだベトナム戦争モノの小説でも言っていたが、気を付けを考えた奴は重い荷物を長時間もった事が無かったのだろう。
FAMASやら隠し持ったチョッキなどのせいで、背嚢程ではないが、かなり俺たちの装備は重い。
加えてここの警備の物は臨時に夜勤から引き継いで仕事をしているのだ。
でもまぁ、マフィアなのに残業代が出る分だけましなのだろう。
いよいよ足が痛くなってきたので、腕時計で確認すると、商談開始から45分ほど経っている。
まだ終わらないのだろうか。
金も貰っているし組織に対しての不満はないのだが、どうしようもない苛立ちが募る。
だが所々で聞こえる双方が提示する数字の幅も狭くなってきている為、そろそろ商談も纏まるだろう。
気を取り直して後ろに腕を組みなおして、体制を整える。
もう少し、もう少しの辛抱だ。
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死は、油断した時にやってくるものだ。
それが横を掠めて通り過ぎるかどうかは、誰にもわからない。