取引とか苦手なんですよ…
「ピピッ!ピピッ!ピピピピピピ…」
「ガチャ!」
…眠い。まだ寝たりない。彼女たちは何処だ?…
意識は闇の中へと落ちて――
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閉じた瞼をつんざくように飛び込む日光。
体を起こし、テンプレのように大きなあくびをする。
寝たりない時の、あの頭が熱くなるような不快感はない。
実に良い朝だ。
そして5;30を表示するデジタル時計を見ると―――
瞬間、とてつもない焦燥感が体を駆け抜けた。
何故だ。いや分かってはいるのだが信じたくないのだ。
自らへの苛立ちが体に募り、そして日付をみて彼はため息を吐いた。
―――今日、取引だった―――
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―昨日の寝る時間がまずかったようだ
彼は適当に選んだ唯一の皺のついていないYシャツからハンガーを外しながら振り返る。
―うっすらと記憶にあるあの感覚、夢から覚めたのに脳がそれを認識してない感覚
不安はあるが焦燥感は消え、動きは帰って整然としている。
―昨日のケモ耳っ娘の画像を見つけたのが運の尽きだった
どこまでも己の所業を責め立て、そして取引先に何を言われるかという不安を浮かべ、
―絵師を探すのに手間取り過ぎた アラームをケータイのにしとくべきだった
苛立ちを募らせながらミルクとフレークを掻き込む。
彼は苛立ちが少しづつ鎮火してきた事を確認し、適当にドアに鍵を掛け最低限の武装を生地裏のポケットに突っ込みつつ、滑り込むようにバンに乗り込んだ。
鍵を捻り、クラッチを滑らかに入れ、エンジンを丁寧に起こす。
フロントガラスから外をざっと確認する。
―流石に早朝から遊んでいるクソガキは居ないようだ
危うく轢きそうになった経験から来る悪態を尽きながらアクセルをめいいっぱい踏み込む。
サイドブレーキとクラッチを巧みに使い、ドリフトさせ通りに出たのち、制限速度超過、煙を巻き上げながら怪しげなバンは走り去っていった。
…早朝で良かった…(危険運転的な意味で)
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「なぁ、いつになったら放してくれるんだ?」
俺の右で銃を突きつける、鋭い目つきの男に問いかける。
一体何でこんなことになっちまったんだか。
「…今ボスに確認してるから待ってろ。まぁ多分無線で射殺命令が出てないし、積荷からして十分身分証明にはなってるから、そんな時間はかからないだろう。」
「なら放してくれてもいいんじゃないか?」
「黒塗りのバンで爆走してくるとかギャングに間違えられるような事をしたお前が悪い。」
不満気に告げてみたが、そこはプロ。
悪びれることもなく、普通に銃はこちらへ向けたままだ。
まぁ俺が悪いんだけどね!
とか思っていると黒服の一人が戻ってきた。
どうやら確認が済んだらしい。
手にはめられたプラスチック製の手錠をサバイバルナイフもどきで雑に切る。
腕が未だに痺れている…
取引相手に後で文句をつけてやろう。
相手の立場的にも所属組織的にもんなことは無理なのだが、
思考の片隅に無理やり追いやり黒服二人と俺は歩き出した。
ちなみにガバメントは返されました。