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貴女への想い

 彩音ちゃんと葉月ちゃん……二人の友人のお陰で答えを出すことが出来た私。鞘乃ちゃんにこの気持ちを伝えるため、帰り道を一緒に歩く事が出来たが……。


「新庄さんの要件は大体察しがつくわ。というよりは、あの事しかないわよね」

「へへ……やっぱり、お見通しかぁ」


 少し沈黙。いざとなればなんて言えばいいか、頭がこんがらがってしまった。鞘乃ちゃんも考えてるんだと思う。私にどう諦めさせるか。

 先手を打たねばならない。沈黙を解いたのは私だ。今まさにその鞘乃ちゃんの考えていることを封じておこうと思ったのだ。


「私諦めないよ!何度拒まれても私がセイヴァーやるから!」


 間髪入れず鞘乃ちゃんのため息。


「どうして?そうまでする理由は無いはずでしょう?」


 もはや呆れられているくらいだろう。だけど私はこの馬鹿を貫き通す。その為にここに立っている。

 そう、私は馬鹿だ。難しい理由なんて何も考えちゃいない。嫌なだけなんだ。


「鞘乃ちゃんにだけ辛い事を背負ってほしくないから」

「辛い事なんかじゃない」

「嘘」

「嘘じゃないわ。私はそういう運命だって受け止めてる」

「じゃあなんで弱みを見せたの?」

「えっ……?」


 鞘乃ちゃんは驚いて表情を崩す。同時に訳がわからないと、私の発言に反発する。だけど私は見てしまった。私を『巻き込みたくない』って言ってくれたあの時の悲しそうな表情を。

 葉月ちゃんは言った。私と鞘乃ちゃんは同じだって。そうかもしれない。私だって、鞘乃ちゃんと同じ立場なら、きっと同じ事をする。だってあんなに危険で恐ろしい事に巻き込んで、厳しくて苦しくて……そんな気持ちを味わえだなんて言えるはずがない。

 だから拒絶することしか出来ないってわかってる!でもあの時の悲しそうな表情の本当の意味だってわかってるんだよ!!


「私を本当に巻き込みたくないなら私の心配なんかしないでよ!!嘘を貫き通しなよ!!助けてほしいって目で私を見ないでよ!!」


 ビクリと肩を震わせる。誤魔化せると思っていたらしい。でもあの時は彼女の本心が見え見えだった。そして、だからこそ拒絶を止めた。私にグローブを託した。

 それでも鞘乃ちゃんは優しいから、意地でも戦わせようとしない。話題をすり替えるように私の立場に話を置き換える。


「……貴女には、大事に思ってくれる家族や友達がいるでしょう?」


 それで諦めてくれると思っている。でもそんな事聞いたって無意味だ。


「うん、大事だよ。みんな大事。鞘乃ちゃんを含めてみんなみんな私の大切な人達だよ」


 自分の名前を呼ばれ彼女の目の色が変わる。そしてそれはより大きな拒絶に変わる。


「……だったら尚更止めてよ!」

「止めない!!」

「っ!?」


 直後の叫びに彼女の仮面が崩れ去る。

 びっくりさせた事、しつこく迫る事、どっちも申し訳ないって思う。でも決めたんだ。どれだけ嫌われても一人にさせないって。


「……私は貴女の事を立派だって言ったわ。でも今やろうとしてることは全く褒められるものじゃないわ。自分を……もっと大事にしてよ……っ」


 ついに本心を隠せなくなった彼女は私に訴えかける。

 やっぱり全部一人で背負おうとしたのは、私に迷惑かけたくなかったからなんだ。そしてきっと、誰に対してもずっとそうしてきた。


(君が誰にも頼ろうとしなかったのは、誰よりも誰かの事を考えていたからなんだね……)


 それでも安心してほしい。私は自分を大事にしてる。私はずっと自分のやりたいことをやってる。やりたいことを成し遂げたいからこそ、鞘乃ちゃんの傍にいるんだ。

 ……けど、それだけじゃきっと納得してくれないよね。目の前で大切なものが傷ついてしまうことが何よりも怖いはずだから。


 だから私は彼女の手を握って真剣に見つめてこう言った。


「ねぇ鞘乃ちゃん。約束するよ。私、鞘乃ちゃんの重荷にはならない。死んだりしない」


 それが私の覚悟だ。鞘乃ちゃんを絶対に哀しませない。その上で鞘乃ちゃんを守ってみせる。

 反発するように鞘乃ちゃんは表情を曇らせる。さっきは上手くいったけど、これからもそうだとは限らない、そう思っている。だから私はとびきりの笑顔で鞘乃ちゃんに言った。


「大丈夫。救世主はね、世界に平和が来るまで何度でも立ち上がるんだ。だから私も……鞘乃ちゃんの平和を守るために何度だって立ち上がってみせるよ。その為の力を、私に貸してくれないかな?」


 それを聞いて鞘乃ちゃんは……涙を流した。な、泣かせちゃった!!即座に必死に頭を下げると、彼女はそのまま笑みを浮かべて言う。


「……謝らないで。悲しいんじゃないの。貴女の気持ちが、嬉しいの」


 嬉し涙ってやつかな。鞘乃ちゃんはそれを流しながら笑ってる。やっと笑ってくれた。それを見てなんだか私も嬉しくて、しばらく笑いあって、見つめあっていた。

 しかしあの化物どもには空気と言うものが読めないのだろう。鞘乃ちゃんのケータイが奇妙な音を挙げた。せっかくのムードが台無しだよまったく……。でも、それどころじゃないってことは彼女の表情からひしひしと伝わってくる。


「……来たんだね」


 コクリ。鞘乃ちゃんは黙って頷いた。既に彼女は涙を拭っていつもの表情に戻っている。……いやぁ、やっぱり美人は凛々しい表情が素敵ですな!

 呑気にそんな事を考えながら、鞘乃ちゃんの後に続く。彼女は黙って私を連れていってくれた。信じてくれたのかな。


 訪れた異世界では、やっぱり大量のギョウマが進撃していた。鞘乃ちゃんは彼らをザコギョウマって呼んでる……ってそのまんまだね。

 もちろんザコギョウマを率いるギョウマは今回も存在している。前に逃したのとは違うやつだったけどね。普通のギョウマは強いし、やっぱり目にすると怖い。でも大好きなみんながいる世界が壊されるのは嫌だ。それに私は……一人で戦ってる訳じゃないから!


(……それにしてもボロボロの状態でも何も言わずにすぐ駆けつけるビヨンドくんは紳士だなぁ)


 ――いつも通りの謎めいた荒野に到着した。どういう意図か、私達を見た途端にギョウマはザコギョウマを端へと追いやり、律儀に真ん中に突っ立って待っていてくれた。

 ゴツい巨体に屈強な腕。如何にもパワータイプな見かけをしている。


『ヨウコソ此方側ヘ。我ガ名ハ『ゴウテツ』。貴様ガ例ノ『セイヴァー』トヤラカ……?』

「いかにも!!我が名は新庄優希!あなたが凶悪なギョウマだね!?」

「し、新庄さん?真似なくていいのよ?」


 苦笑いを見せる鞘乃ちゃんとバカ笑いするゴウテツ。わぁ二人とも笑顔だね!


『クフフ……面白イ奴ダ。『ルシフ』ニ勝ッタダケノ事ハアル』

「それって逃がしちゃった奴?」

『ソウダ!奴ハ逃ゲタ。オメオメト情ケナク逃ゲ戻ッテキタ哀レナ奴ヨ』


 む……そんな言い方無いんじゃないかな。悪い人だから同情は出来ないけど……でも、このゴウテツの言ってる事は酷いと思う。仲間なんじゃないの?

 私の表情にはたぶん、怒ってるのが出てると思う。ゴウテツはそれを見て、ニヤリと笑みを浮かべた。


『クク……ナンダ?モウヤル気カ?』

「……そうだね、嫌なことはさっさと終わらせたいかも!」


 ゴウテツとの視線に火花が散る。鞘乃ちゃんは不安そうにしていた。やはり本当は私に戦ってほしくないのだろう。

 それでも鞘乃ちゃんは怯まずにギョウマと睨みあう私の表情からその覚悟を感じ取ってくれたのか、渡してくれた。セイヴァーグローブだ。


「約束は守るから安心して」

「……うん、待ってるからね」

「ありがと、行ってくるね!」


 その想いを背負い、私は走り出す。グローブを装着してぐっぱ、ぐっぱ!きちんとはまったのを確認したら、深呼吸一回。すぅううー……。


「よっし!行きますかぁ!」


 光輝くは救世主のオーラ。包まれた私は再びその姿へと変わった。


救世主(セイヴァー)……みんなの為にいっちょ頑張ります!」


 駆け出した私に対し、ゴウテツはいきなり武器を出してきた。鎖で繋がれた巨大な鉄球。それをブンブン振り回して……私のところへドーン!

 でもだいじょーぶ!そんな鈍い動きじゃ私のスピードにはついてこれない。と、構わず走り出した瞬間……。


「うわぁっ!?」


 私は吹っ飛ばされた。地面に叩きつけられた鉄球が繰り出す衝撃は凄まじいモノだった。直接当たらなくても、その衝撃が私にダメージを与えてくる。

 でも倒されたままオチオチ寝ていられる暇もない。ゴウテツはすぐさま鎖を引き、自分の手元に鉄球を戻す。再び攻撃が飛んでくるんだ。


 大きくかわさなきゃいけないから隙だらけ。しかも鉄球攻撃は範囲も広くて近づくことすら儘ならない。

 ――どうする?考えろ。かわしながら攻略法を考える。でも……ダメだ!全く思い付かない。

 瞬間、目の前に鉄球が降りかかる。考え事に気をとられ、まるで気づけなかった。


『新庄さん避けて!』


 ハッとなってそれをかわす。鞘乃ちゃんからの通信がなかったら今頃どうなってたことか。


「ありがとう鞘乃ちゃ……」


 安堵して鞘乃ちゃんの方へ振り返る。そこで見た光景に、私は……静かに自分が抱いている怒りってやつを感じた。


「……ストップ」

『ナンダ?今更命乞イハ無シダゾ』

「そうじゃないよ。どうしてこんなことして君は平気でいられるの……!?」


 私が見たのは、横たわったザコギョウマ達だった。鉄球の衝撃は、当然外野にまで及ぶ。

 鞘乃ちゃんは離れた場所で待ってくれているから大丈夫だけど、ザコギョウマはゴウテツの近くで待機させられている状態だった。こうなることは奴ならわかっていたはずだ。


「仲間を巻き込んでなんとも思わないの……?」

『クダラン!』


 ゴウテツは一番近くにいたザコギョウマをその屈強な拳で叩きのめす。


『コイツラハ仲間ナドデハナイ。捨テ駒ダヨ……クヒヒ……』

「……おかしいよそんなの!」

『何ガ可笑シイ!?貴様トテ、ソウダロウ?アンナ足手マトイガ必要無イカラ、一人デ戦ッテイルノデハナイカ!』

「……鞘乃ちゃんの事?だったらそれは違うよ」


 私は右腕から剣を創造する。私がイメージした、私が守りたいと願った鞘乃ちゃんへの想いの剣。鞘から抜き、その刃を構える。


「私は鞘乃ちゃんと共に戦っている!」

『フンッ!戯言ヲ!』

「嘘じゃない」

『ホザケッ!手始メニソノ剣ヲ粉砕シテクレルッ!』


 ゴウテツの鉄球が私の剣にヒットする。二発、三発……次々と的確にその一撃は加えられていく。

 凄まじい衝撃が手を痺れさせる。直撃していないのに、剣にぶつかった鉄球の衝撃が私を徐々に傷つけていく。


『新庄さん!?なにやっているの!?反撃して!……このままじゃホントにやられちゃう!逃げて!』


 鞘乃ちゃんの声が聞こえる。必死そうだ。でも大丈夫だよ。だって私は鞘乃ちゃんの強さを借りているんだから、負けるはずないよ。

 バキバキ、ミシミシ……鳴り響く音に、ゴウテツは勝利を確信し、笑っている。私達の剣が砕け散る瞬間を想像しているのだろう。


 そしてついに――。


『クフフ……ンンッ!?』


 バキンッ!ついに砕け散った。……ゴウテツの鉄球が。


『馬鹿ナッ!?コレハ一体……!?』

「……折れるはずがない。だって私は鞘乃ちゃんと一緒に戦っているから」

『マダソンナ戯言ヲ……ッ!』

「理解できないならそれでいいよ。貴方は一生かかっても私に勝てない、それだけだから」


 そしてそれこそが、ゴウテツを倒す一番の攻略法だったんだ。

 私は初めてギョウマを見たとき、恐怖で震えた。涙すらした。だけどそんな私が、鞘乃ちゃんの為なら、それを勇気に変えられた。

 私たちの世界のために君はそれが出来た。鞘乃ちゃん、力なんて無くたって、奴らに勝つことができなくたって、諦めずに頑張った君は立派な救世主なんだよ。

 そして鞘乃ちゃんがいるから私は戦える。さらに、彼女の想いを背負って、私はもっと強くなれる!


 君が託してくれたのは、セイヴァーシステムだけじゃない。


「この剣は、そんな鞘乃ちゃんの鉄のように硬い意志だ!私は鞘乃ちゃんの『想い』と戦っている!だから独りで戦う貴方にはこの剣が砕けるわけなんてないんだよ!!」

『ホザケ……ホザケホザケェエエエッ!何故ダッ!何故貴様ゴトキニイイイイッ!』


 錯乱したゴウテツは私に向かって拳を振り上げ走り出した。でも既に勝敗は決している。何故なら剣から出されたエネルギーが刃となってゴウテツにヒット。そしてそのエネルギーがゴウテツの動きを完全に封じてしまっているからだ。

 そしてこれで決める。私の身体中の力をエネルギーに変え、セイヴァーソードに乗せる。ゴウテツ……お前が馬鹿にした絆の力を思い知れ!!


「必殺!セイヴァー……フィニッシュ!!」


 隙だらけのゴウテツに渾身の一撃を放った。巨大な光の刃と化した剣はゴウテツを飲み込むように切り裂いた!


『グワアアアアアアアアアアアアッ!!』


 直後、断末魔と共に爆発が挙がる。

 ギョウマをこの手で、倒したんだ……!




「――勝った。やったよ鞘乃ちゃん、勝ったんだ。私たちの力で」


 しかし、同時に身体が言うことを聞かなくなって、私は倒れた。……倒れかけたところを、鞘乃ちゃんがダイビングキャッチしてくれた。


「新庄さん!大丈夫!?」

「アハハ……そんなに必死にならなくても、生きてるよ~。約束、ちゃんと守ったからね~」

「無理しすぎよ……」


 へへ……こんな無茶は彩音ちゃんに怒られちゃうかも……なんて。

 ……でも私は、自分が間違った事をしてないって、心からそう思えるよ。だって、真実から逃げずに、私は立ち向かえたから。貴女にとっての現実を体感した上で、貴女に教えてあげることができるから……。


「鞘乃ちゃんは……一人じゃないよ」

「……!」

「私がそばにいるよ。受け入れてもらえなくてもね」

「……新庄……さん……っ」


 鞘乃ちゃんはその目に涙を浮かべていた。私はその涙を拭うように彼女の頬に触れる。


「……泣き虫さんだなぁ。ほら、笑って笑って」


 その次の瞬間、思いきり抱きしめられちゃった……。へへ、暖かいし、いい匂いがする。

 鞘乃ちゃんの温度を味わいながら、私は眠りについた。疲れと安心がドッと来て、限界だったみたいだね。


 目覚めてからも、衝撃による打撲みたいな怪我がちょっとあっただけだし、それもセイヴァーの状態で受けたものだから、酷い怪我にはならなかった。

 むしろ鞘乃ちゃんが付きっきりで怪我を見てくれて得したって感じかな。


 後日、学校に行ったらやっぱり心配されたし、彩音ちゃんは鞘乃ちゃんがなにかしたんだと思って噛みついちゃうんだけど。誤解を解くのが大変だったな。鞘乃ちゃんは『私のせいであることに間違いない』って自分を責めちゃうし。なんとか私と葉月ちゃんで説得し、なだめてようやく事態は納まったんだけど……。


 でもそれで終わりじゃないんだ。


 私は改めて彩音ちゃんと葉月ちゃんに鞘乃ちゃんを紹介した。


「えっと……こっちは彩音ちゃん。ちょっと姉御肌なところがあるから掛け合わせてアヤゴってあだ名なんだよ、ぜひ呼んであげてね!で、こっちが葉月ちゃん。ちょっと変わってるところもあるけど基本は常識人だから安心してね!」

「オイ!変なあだ名教えんなよ!!」

「うふふ。変わってませんよ。ただ私は優希ちゃんと鞘乃ちゃんがどこまで進んだのかだけ気になってるだけで……うふふふふふ……」

「そこだろ変なとこ!!」


 彩音ちゃんのツッコミが炸裂する。結局グダグダになってしまった顔合わせで、鞘乃ちゃんは思わず笑いを溢してしまっていた。楽しい人達だって……良かった、打ち解けるのにそこまで時間はかからなさそうだ。

 鞘乃ちゃんにとっても楽しいみんなになってほしい。そしてもっともっと、これから始まる日常が、鞘乃ちゃんにとって幸せな毎日になりますように。そう願って私はにっこりと笑った。

 それを叶えるためにも、きちんと非日常の方も頑張らないとね!ってなわけで、私は鞘乃ちゃんの家でセイヴァーとしての勉強会を受けることになった。


「うぅ……考えただけで頭が痛くなってきた」

「大丈夫だよ、簡単に説明するから」

「でも私馬鹿だよ?」

「だとしても聞いてほしいの。……だって、新庄さんは、私のそばにいてくれるのよね?」

「……!」


 鞘乃ちゃんが私の手を握って見つめてくる。

 ……ちょっと、ドキッとしちゃったな。鞘乃ちゃんも少し表情が紅い。でもこれって、受け入れてくれたって考えて良いんだよね。嬉しいな。

 私は動揺を抑え、なんとか笑顔を作り、返事を返した。「もちのろんだよ!」ってね。それを聞いて鞘乃ちゃんは満足そうにまた歩き始めた。


(……名残惜しい。もうちょっと触れあいたかったな)


 と、心に秘め、先にいく鞘乃ちゃんに駆け寄ろうとすると、何か思い出したように鞘乃ちゃんはこちらに振り向いた。


「……ねえ新庄さん。貴女には、ちゃんと言っておきたいことがあるの」

「え?なぁに?」

「……新庄さんが一緒にいてくれるって言ってくれて、私本当に嬉しかったの。それでね、私も、そう思うようになって……」

「え、それって……?」

「私も、一緒にいたい。貴女の事、もっと知りたい。だから私からも言わせてほしいの」


 鞘乃ちゃんは恥ずかしそうに真っ赤に頬を染め、だけど幸せそうに笑った。今まで見た中で一番の、最高のとびきりの笑顔を。


「私と友達になってください。優希ちゃん!」


 胸が踊るように高鳴った。そして私はその喜びのままに鞘乃ちゃんに抱きついた。ようやく私達は、信じあえる友達になったんだ。


 ――めでたしめでたし、ってね。

 どうだったかな?未知との遭遇の果て、手に入れたのはかけがえのない絆……素敵なお話だと思わない?

 ――え?それはいいけどセイヴァーだとかギョウマだとか、謎が残りすぎじゃないかって?そうなんだよねぇ。実はそれは、今の私も全然解き明かせてないんだよね。


 そう、私たちの物語はまだ始まったばかりなんだ。だからこれから先は今の私もまだ知らない物語。さぁ、これからが本当の戦いだよ!

序章、完

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