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新庄優希の救世物語  作者: 無印零
第5章
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根源の陰と陽

 ――虹色の空。幻想的で美しいが、滅びを象徴とする悲しき空の色。それは年中無休でそうあり続ける。季節が変わろうと、天候が変わろうと、ここにはそれが訪れない。

 だけど今はそれが少し羨ましく感じたのは内緒。だって私達の世界の方はあれから半月が過ぎて六月の中旬。梅雨真っ盛りです。……じめじめしてやな感じなんだよねぇ……。


 そんなわけで今回はさっそく異世界からこんにちは!久しぶりにギョウマが出現して――


 ちょっと、大変です。


『ゲゲゲゲゲェ~!一気ニ攻メルゼェエエエエ!!』

「こら~!待てぇ~!!」

『待テト言ワレテ、待ツ馬鹿ハ居ナイッ!!』


 いきなり『核』目掛けて全速力。部下であるザコギョウマすらほったらかしで、ギョウマは爆走する。

 ビヨンドくんで追跡するけれど……早い!とにかく早い!


 こんなにストレートに世界の危機を迎えるのははじめてだ!内心ひやひや。

 が、勝利を確信し、私に向かって変顔を繰り広げるギョウマは、次の瞬間には地面に叩きつけられていた。


「よそ見運転……もとい、よそ見疾走厳禁よ」


 そこには操さんに貰った大型銃――鍵装砲(けんそうほう)を引っ提げた鞘乃ちゃんが立っていた。

 次元移動装置により、その座標に直接飛び、待ち伏せてギョウマを撃ったのだ。私はビヨンドくんから下り、そんな鞘乃ちゃんと合流する。


「遅くなってごめんね、先生に捕まっちゃって……」

「ううん。むしろ助かっちゃった。それに日直だもん仕方ないよ。学校の事も……」

「大切に、でしょう?ふふ、わかってる。でも今はこいつを止める事に集中ね!」

「うん!行くよ、鞘乃ちゃん!」


 私と鞘乃ちゃんは並んで、互いにセイヴァーグローブを構える。初めての同時変化。二人でいざレッツチェンジ・セイヴァー!!

 同時に起動スイッチを押し込んで、煌めく光が重なりあい、私達を包む。そして今ここに、二人の救世主が並び立った!


「いやぁ~なんか感動するなぁ!こういうの、一度やってみたかったんだぁ!」

「遊びじゃない……って言いたいけど、ちょっとわかる気がする」


 顔を見合わせ私達はクスクスと笑い合った。その時、ギョウマも立ち上がり、戦闘体勢に入る。二人のセイヴァー相手に逃げることは無理と考えたか、私達に攻撃を仕掛けてきた。

 繰り出される魔弾。それを気にする事なく私はギョウマに接近する。


『血迷ッタカ!!』

「いいえ、優希ちゃんの進む道は私が作るわ!」

『ナニッ!?』


 鞘乃ちゃんが放つ砲弾が魔弾を全て相殺。その爆発を追い越し、私はギョウマに拳を叩き込む!


「セイヴァーパンチッ!!」

『グワアアッ!!』


 しかし一筋縄ではいかない。このギョウマの強みはそのスピード。追撃を受ける前に私達を囲むようにグルグルと素早く回り始めた。

 どこから攻撃が飛んでくるか見分けるのは難しい。しかしそれは私の場合のみだ。鞘乃ちゃんが鍵装砲を構えたのを確認すると、私は緑の鍵をグローブのスロットに装填する。


『ゲゲゲゲゲェ!!死ネェッ!!』


 私に飛びかかるギョウマ。しかし、鞘乃ちゃんの超感覚がそれを捉え、私に攻撃が行き着く前に砲撃で阻止した。


「今よ優希ちゃん!」

「オッケー!葉月ちゃん、力を借りるよ!セイヴァーシューター!!」


 緑の鍵の力でセイヴァーブラストになった私は救世銃セイヴァーシューターを乱射し、その全てを風の軌道に乗せ、確実にギョウマにぶつける。更にセイヴァーブラストの風の力で渦を作り、ギョウマをそこへ閉じ込めた。


「意外と呆気なかったわね。一応聞いておくけれど、大人しく降参するならば命までは取らないわよ」

『ゲゲェッ!!ソンナ提案ハ無駄ダッ!俺ハ『王』ニ仕エル者!ソノ命ニヨリ……世界ヲ潰スッ!!』


 最後の悪あがきと言うやつだろうか、ギョウマは全パワーを解放し、風の渦を断ちきった。そしてすぐに核に向かって走り出そうとする。


「やれやれ、確かに言っても無駄なようね」


 鞘乃ちゃんは『守護』の鍵を大砲のスロットに装填し、打ち出した。鍵の効果で砲弾はエネルギーのラインに変化し、ギョウマに絡み付き、縛り上げるように動きを封じる!


『何ィ!?』


「憐れなその魂、救ってあげるわ。優希ちゃん、とどめを」

「……うん。鞘乃ちゃん、一緒に!」


 私は緑の鍵をスロットから抜き、通常のセイヴァーに戻って、鞘乃ちゃんと一緒に創造する。


「「セイヴァーソード!!」」


 二本の救世剣がギョウマを討つ!私の持つ紅きセイヴァーソードと鞘乃ちゃんの蒼きセイヴァーソード改。そのエネルギーが重なりギョウマに炸裂する!


「「ダブルセイヴァーフィニッシュ!!」」

『ゲゲエエエエエエエッ!!』


 その閃光に斬り裂かれ、ギョウマは断末魔と共に爆発する。今回も無事、世界を守ることに成功したんだ。


 ダブルセイヴァー結成で、私達は有利に世界の危機に立ち向かえるようになっていた。

 初めてセイヴァーになったあの日から、ずっと私を支えてくれた鞘乃ちゃん。そんな彼女が私と並んで戦い、その暖かさをより近くで感じさせてくれるようになり、私はこれまで以上に勇気を持って戦う事ができた。ここまでの過程を思い返すとなんだかとっても感慨深いよ。




 しかし素直に喜ぶことは出来なかった。

 ……ギョウマを倒したくなかったから、なんてもう言わないよ?救うために戦い続ける、それがドラン、ハゴン兄弟との戦いのなかで彼らから託された願い、そして決めた私の覚悟なんだからね。

 そりゃ戦わずに解決できるならそれが一番良いけれど、兄弟との戦いや今回もそうだったように彼らはある存在のせいでそれが出来ずにいる。

 私はそのせいで表情を暗くしていた。


「優希ちゃん、どうかした……?」

「……ううん。なんでもない。そんな事より、鞘乃ちゃん流石だね!超感覚は相変わらずだし、守護の鍵の使い方も私には想像出来なかったよ」

「優希ちゃんこそ、いつも通り頼りになったわ。ナイスコンビネーションって感じね」

「うん、ナイスコンビネーション!へへ、息ぴったりだね、私達」


 拳と拳をこっつんと合わせて私達は笑った。

 実際、鞘乃ちゃんと一緒に戦える事は心強く、それでいて息が合っているというのは嬉しい事だ。

 ただ問題は、やはりこの争いの根源となるべき存在だった。それと和解するなり倒すなりしない限り、戦いは終わりそうにないだろう。ただのギョウマと対話しても、解決は不可能みたいだから……。


 それは一体何故世界を支配しようとしているのだろう?そしてどんな姿で、どんな力を持っているのだろう?

 知らないことが多すぎる。明らかになってきた謎のなかで唯一と言って良いほど、その存在の事だけは何も掴めていない。


 何故彼らがそれに従っているのかさえも……。


(みんなから慕われるようなカリスマ性を持ち合わせる、頼りになり、優しき存在なんだろうか。それとも……)


 私は笑顔を取り繕って、鞘乃ちゃんと一緒にビヨンドくんへ乗り込む。


 ――ふと、暗黒空間の方角へ視線を向ける。当然離れた場所にあるここからは見れないのだけれど。


「優希ちゃん、早く帰ろう?」

「……うん!」


 それも他のギョウマのように暗黒空間に潜んでいるのだろうか?暗黒空間の中がどんな感じなのかわからないし、迂闊に突入も出来ないんだけれど、やはりいずれは行かねばならないかもしれない。その存在を見つける為に……。


(王……一体どんな奴なんだろう……?)



 ***



 ――暗黒空間。


 ギョウマ達が潜む文字通り真っ暗闇の世界。

 そこでただ一ヶ所灯りが灯る場所へ、ルシフは足を運んだ。

 炎を操るギョウマ・バーナは常に身体から炎を噴き出し、それがいる場所だけは明るい。


『ルシフ!オ前、モウ大丈夫ナノカッ!?』

『マアナ……』


 バーナは心配症な上に臆病という面倒くさいギョウマだ。それゆえにあまり関わりたくはないし、心の底では馬鹿にしているが、今は少し、その灯りに照されていたかった。


 心にまとわりつく嫌な気持ちを取っ払いたかったのだ。


 ルシフは優希と鞘乃に敗れた後から今に至るまで傷を治療していた。あの戦いはルシフの復讐の戦い。そう、勝手な行動だった。本来なら処刑されてもおかしくはない。しかしこうして生き長らえている。

 いや、生かされているのだ……あのドス黒き闇に――。


『……』

『ルシフ、ドウシタ?オ前ニシテハ、ヤケニ大人シイガ…』


 バーナが心配する中、一体のギョウマが突然姿を現した。


『王の忠告が行き届いているようで何よりだ』


 そのギョウマは片言ではなく、まるで人間のように流暢に言葉を話した。桃色の体色、大きな翼に、豊満なボディーのギョウマ、その強大な力にバーナは震え上がる。


『!?オ、オ前ハ……!!』

『お前?……よくそんな口が聞けたものだな』

『ア、イ、イエー……『ピュゼロ』様……』


 ピュゼロ。それが彼女の名だった。

 彼女こそが気絶したルシフを救ったあのギョウマであり、傷を治療したのもその力によるものだった。

 そしてその力は並のギョウマと一線を画す存在であり、簡単に説明するならば、ギョウマの秩序を管理する者。通り名は『王の右腕』だ。


『その者は生きることを許された。しかし身勝手が過ぎる。またこのようなことがあれば――』


『処刑スル、カ?ククククク……!』


 しかしそのピュゼロにさえ、ルシフは余裕だった。


『残念ダガ、ソレハ無理ダナ。ソノ身勝手コソ俺ガ王ニ生カサレテイル理由ナノダカラナ!』

『ナンダッテ!?』


 バーナは信じられないというように声を挙げた。

 しかしルシフにはその確信があった。普通ならば駒は使えなくなった時点で捨てる。

 そして王への忠誠を貫いたドランとハゴンは見捨てられ、仲間を軽視し、王すらも目障りと考えるルシフは生き残った。


 以前からルシフは怪しんでいた。

 生かされていること、そして、セイヴァーとの戦いを、わざわざ『命令した者』だけにさせる……そんなちまちましたやり方を取っていることに。


 きっと王にはなんらかの企みがあるのだ。世界を支配する以外の何か他の目的が……。

 そこで考えついた。その企みに必要な者しか生かしはしないのだと。忠誠など、王にとってはどうでも良い事なのだ。


 ルシフは思った。奴も自分と同じなのだ。ギョウマを仲間などと思っていない。自分の私利私欲の為だけに行動している。


 そう、自分と同じだ。だからこそこう言える。


『クハハハハハハッ!トンダ『悪意』ノ塊ダヨッ!奴ハッ!』


 だからこそ気にくわない。しかし今はありがたくその『厚意』を利用させてもらおう。ルシフはピュゼロを馬鹿にするようににんまり笑って、闇の中へ消えていった。

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