表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

こんな夢を観た

こんな夢を観た「オフラインでロープレをする」

作者: 夢野彼方

 ポストをのぞくと、ちらしが入っていた。オフラインでロール・プレイング・ゲームを開催する、とある。

 ゲーム好きの後輩、中込を誘って参加することにした。


 場所は近郊の森林公園。朝9時に待ち合わせる。

「中込君のその格好はいったい……」わたしはまじまじと見つめた。

 上下を迷彩服で包み、ヘルメットにゴーグル、手にはスプリングフィールドM14を構えている。

「はあ、おかしいでしょうか?」自分では自然だと思っているらしい。

「そのまま電車に乗ってきたの?」

「ええ、まあ。ホームで多少の撃ち合いはありましたが、ちゃんと仕留めてきましたよ。向こうなんて、間違えて一般人を撃っちゃって、さんざん怒られてましたけど」

「ふーん、そう……」つっこむのも面倒になった。


 会場の入り口で受け付けを済ませ、マップとテキストをもらう。シナリオを順にクリアしないと、次へは進めない、と書かれている。

「森林公園って、ばかっ広いんですねー」中込はマップと周りの景色とを見比べながら感心している。

「1周するだけで2時間は掛かるっていうしね」

「うひゃあーっ!」

「じゃ、行こうか。最初のイベントは『羽虫』だってさ」


 テキストによれば、森林公園のいたるところに飛び回っている「羽虫」を片っ端から捕まえて、備品のビニール袋に詰めていく。決められた時間内で、どれだけ集められるかを競う。


「地味なイベントっすね」と中込。自分の頭の周りを飛び回る羽虫を、汗だくになって追っている。

「まったくね。あっ、また逃げられた! すばしっこい奴めっ」あっちこっちと腕を振り回すのだが、広いた手の中はいつも空っぽだった。

「むぅにぃ先輩、まるで盆踊りでも踊ってるみたいですよ」中込が大笑いをする。

 盆踊りの方がよほど楽しかったろう、と心から思った。


 時間切れを報せるサイレンが鳴ったので、わたしたちは受け付けまで戻った。

「ぼくはやっと50匹くらいっすよ」中込はビニール袋を振りながら、つまらなそうな声を出す。

 わたしのはさらに少なく、何度数えても21匹しかいなかった。

「次のイベントでがんばろうねえ」

 森のあちこちから、他のグループも帰ってきた。みんな、手にはビニール袋を持っている。中には、パンパンに膨れて真っ黒になっている者もあった。あの中身は、すべて羽虫なのだ。


 次は「どんぐり拾い」だった。とにかく、たくさん拾い集めた者が勝者となる。

「さっきより、もっと地味っすねー」だるそうに中込が言う。

「やれやれ、どんぐりなんか拾ったって、何の得にもならないのに」わたしもだんだん億劫になってきた。「これがせめて、栗とかだったらなあ」

「あ、知ってました? 先輩。天津甘栗って、天津で採れる栗じゃないんすよ。そんな栗、ほんとはないんです」


 なんだか、どっと疲れてしまった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ