こんな夢を観た「オフラインでロープレをする」
ポストをのぞくと、ちらしが入っていた。オフラインでロール・プレイング・ゲームを開催する、とある。
ゲーム好きの後輩、中込を誘って参加することにした。
場所は近郊の森林公園。朝9時に待ち合わせる。
「中込君のその格好はいったい……」わたしはまじまじと見つめた。
上下を迷彩服で包み、ヘルメットにゴーグル、手にはスプリングフィールドM14を構えている。
「はあ、おかしいでしょうか?」自分では自然だと思っているらしい。
「そのまま電車に乗ってきたの?」
「ええ、まあ。ホームで多少の撃ち合いはありましたが、ちゃんと仕留めてきましたよ。向こうなんて、間違えて一般人を撃っちゃって、さんざん怒られてましたけど」
「ふーん、そう……」つっこむのも面倒になった。
会場の入り口で受け付けを済ませ、マップとテキストをもらう。シナリオを順にクリアしないと、次へは進めない、と書かれている。
「森林公園って、ばかっ広いんですねー」中込はマップと周りの景色とを見比べながら感心している。
「1周するだけで2時間は掛かるっていうしね」
「うひゃあーっ!」
「じゃ、行こうか。最初のイベントは『羽虫』だってさ」
テキストによれば、森林公園のいたるところに飛び回っている「羽虫」を片っ端から捕まえて、備品のビニール袋に詰めていく。決められた時間内で、どれだけ集められるかを競う。
「地味なイベントっすね」と中込。自分の頭の周りを飛び回る羽虫を、汗だくになって追っている。
「まったくね。あっ、また逃げられた! すばしっこい奴めっ」あっちこっちと腕を振り回すのだが、広いた手の中はいつも空っぽだった。
「むぅにぃ先輩、まるで盆踊りでも踊ってるみたいですよ」中込が大笑いをする。
盆踊りの方がよほど楽しかったろう、と心から思った。
時間切れを報せるサイレンが鳴ったので、わたしたちは受け付けまで戻った。
「ぼくはやっと50匹くらいっすよ」中込はビニール袋を振りながら、つまらなそうな声を出す。
わたしのはさらに少なく、何度数えても21匹しかいなかった。
「次のイベントでがんばろうねえ」
森のあちこちから、他のグループも帰ってきた。みんな、手にはビニール袋を持っている。中には、パンパンに膨れて真っ黒になっている者もあった。あの中身は、すべて羽虫なのだ。
次は「どんぐり拾い」だった。とにかく、たくさん拾い集めた者が勝者となる。
「さっきより、もっと地味っすねー」だるそうに中込が言う。
「やれやれ、どんぐりなんか拾ったって、何の得にもならないのに」わたしもだんだん億劫になってきた。「これがせめて、栗とかだったらなあ」
「あ、知ってました? 先輩。天津甘栗って、天津で採れる栗じゃないんすよ。そんな栗、ほんとはないんです」
なんだか、どっと疲れてしまった。




