第7話 木精と森の民 後編
8回目の投稿です
遅い時間ですが投稿します
拙い文章ですが宜しくおねがいします
俺達はゆっくりと一本道を進んで行く事にする。
木精達が俺達を導くかのように促すからだ。
意外と害はなくおとなしい。30センチ程の大きさで今もケタケタと笑い? ながら俺達の周りを回っている。
何故か一匹は俺の頭の上に乗ってケタケタ笑ってるが、たまにガシガシと頭を甘噛みしてくる。
少し痛いです。
俺は気に入られたのかね。
木精達は手足がないから俺の服に噛み付き、引っ張って、何処かに連れていこうとしているようです。
何か微笑ましくて、可愛いですね。
あれ、あれれおかしいぞ。
30センチの向日葵の花に目鼻はなく、端から端まで裂けた口があり、開いた口の中には鋭い歯が、びっしりと生えている。
これはどう見ても不気味です。ホラーです。
自分の感性を疑うよ。
あれですかね。此の世界や周りの皆に俺も毒されてますかね。
これを可愛く感じるとは、俺の感性が怖いわ。
俺達は木精に引っ張られるまま進んで行く。
どうやらこの道の先に目的地があるようだ。
俺はユキの背中に乗って鼻歌を歌っていると、何が楽しいのか木精達が、鼻歌に合わせて舞うようにくるくると、俺の周りを回っている。
暫く進んで行くと、突然目の前の地面に多数の矢が、突き刺さった。
木精達が驚き上空に逃げだしたのを見計らったように、続けて道の両側から今度は、雷撃が多数俺達に飛んできた。
ユキは落ち着いたもので立ち止まると、闇のオーラを体から漂わせ雷撃を、全て吸収していく。
さすがユキさんですね。
何故か、頭の上にいた木精は逃げずに、俺の頭にしがみついてます。
う〜ん、此れはしがみついてるのかな。
木精は大きく口を開けて、俺の頭に上からかじりついてます。
これは周りから見ると俺が、食べられてる様にしか見えないよ。
ホラーだよ。
不気味だよ。
今度からお前をギミーと呼ぶ事にしよう。
あっ、それ以上噛まないで戻っちゃうから。
全ての雷撃を吸収する頃には、上空にいた木精達も驚きから醒めたのか、俺達の周りに再び集まり始めた。俺達を守るかのように。
見た目と違って良い子達ですね。
雷撃が終わると、今度は右側の森から男が俺達に何か言いながら、前に立ち塞がるように現れた。
何か怒ったように喋ってますが、全然わかりません。
大体いきなり攻撃してきて怒るとか、意味がわかりません。
あっ、さっきユキが結界を破ったからでしょうか。
しかし言葉が通じないのは困ったな。
この男の人が森の民エルフですかね。
髪は緑色で耳は想像と違って尖っておらず、人族と髪以外はあまり変わらないようだが、整った顔立ちでかなりのイケメンです。
そして着ている革鎧も地味でなく、派手すぎでもなくかっこいいです。
何か悔しいですね。
それに最初に会うエルフが男性はないでしょう。
この世界は俺の期待を悉く裏切りますね。
何か恨みでもあるんですか
「この世界のバカヤロー!」
俺が急に叫んだので皆固まってます。
「あっ、大声だしてすみません」
俺は皆に謝りながらユキから降りてエルフに向き合う。
よし、ここは元日本人としては、
「えーと、決して怪しい者ではありません」
俺は頭をペコペコ下げ、身ぶり手振りを交えて話しかける。
う〜ん、昔よくこうして営業に回っていたなと思いながら
「此処にいる木精達に用事があっただけで、今もこの子達に連れて行かれてるだけです。貴方達に他意はありません」
やっぱり通じませんね。
俺が喋りかけても少し後退り視線も合わそうとせず、ユキの方ばかり見ている。
何でしょうか、俺は相手にされず雑魚扱いですか。
もういいです。どうせ俺は虚弱神ですよ。
俺が少しいじけていると、ユキが後方に一声吠える。
すると後ろからコボルト達が現れた。
コボルト達はエルフに何か喋りかけながら、俺達を迂回してエルフに近付いていく。
途中でユキに頭を下げて挨拶をしながら。
ちょっ、ちょっと、俺には挨拶なしなの、可笑しいでしょ。何なの君達は、誰にも相手にされない俺って一体……。
もう知らん勝手にやってくれ。俺はユキの背中にもう一度上がり、鼻歌を歌いながら待つことにした。
俺の周りではまた木精達が、頭の上ではギミーが、また楽しそうに回りだした。
ユキがさっきからバウバウと、コボルト達に話しかけてるから大丈夫でしょう。
そうしていると、一本道の先から二人のエルフが、叫びながら駆け寄ってくる。
俺達の前にいたエルフが話しかけられると驚き、コボルト達に何か言うと森に合図を出し、道を北に向かって駆け出して行く。
すると森の中からゾロゾロと、30人程のエルフが出て来て追いかけていく。
コボルト達も、ユキに何か言って追いかけていく。
まだあれだけエルフが居たのですね。
ユキも、俺に振り向き一声吠えると駆け出した。
木精達も慌てているのか、先程よりも激しく回転しながら追いかけて来る。
俺だけ、わかんないけど。
誰か説明してよー!。
***
どうも、木精達の様子がおかしい。
森に散っていた部下達が次々に戻ってくるが、どの報告も怪しげな物ばかりだ。
獣達は南から何かがくるのを恐れるかのように、北や東西に逃げて行く。
我々エルフは木精達と精神を同調できるが、今木精達は興奮しているのか同調ができない。
世界樹の森全体が、緊張したかの様にざわついている
数十年、いや数百年なかった事だ。
そんな事を考えていると、部下の一人が慌てた様に駆け寄り、とんでもない事を言い出した。
「団長。アシュトン団長! たっ、大変です。道が、南の森から我々の里まで、世界樹まで道ができてます」
何を馬鹿な事をこいつ夢でも見たのか。
「お前、アドリアの実でも食ったんじゃないか。そんな事があるわけないだろう」
「本当ですってば、嘘だと思うなら一緒に見に来て下さいよ」
「ちっ、違ったら今晩はお前の奢りで酒盛りだからな」
俺は舌打ちしながら部下達を連れて、向かう事にする。
「なっ、なんだこれは」
そこには確かに南の森から北に向かって、真っ直ぐな道が出来上がっていた。
まるで森が自ら別れて道を作ったように。
こんな馬鹿な、木精達が、いやこれは世界樹の意思か。
なにが南から来るというのだ。
俺はふたりの部下に里に知らせ、応援を呼ぶように指示を出して、残りで待ち構える事にした。
何かとてつもない事が起きている。
だから常々言っていたのに、もっと警護団の人数を増やしてくれと。
長老達の答えは否だった。
里にはエルフ達10万人が暮らしているが、警護団は僅かに百人だ。
これでどうしろと。
何かあればどうしようもない。
平和が長すぎた。結界に閉ざされ世界樹の森に隠って数百年、世界樹の森には危険な魔獣もおらず、もとよりエルフには犯罪者等いない。
警護団の仕事は退屈な森の巡回だけ、今エルフの中で戦えるのは我々警護団だけだ。いや我々警護団も本格的な戦闘は皆無、これで南から来る物に対処できるのか。
俺が暗い考えに落ちていると、南に偵察に行っていた部下が戻って来た。
「団長、見たこともない魔獣に乗った魔人が、木精達を従え此方にやって来ます」
「魔人だと、どの様な魔人だ」
確か魔人達は200年前に神々と戦い敗れ、北の地に去ったはずだが。
「それがよくわかりません。木精達が周りを取り囲みよく見れません。それと見ていると体が痺れてくるような」
「ちっ、魔眼の持ち主か、厄介だな」
どうするか。木精達も厄介だな、操られているのか。木精達は世界樹に連なる者達、傷付ける訳にもいかない。取り敢えず様子を見るか。
「よし、道の左右の森に別れて、俺の合図があるまで待機だ」
部下達は頷き散っていく。俺も右の森に隠れる。
暫くすると、魔獣が見えてきた。
なんだあれは、見たこともない大きな凶悪な魔獣だ。
あの魔獣と、どうやって戦えばいいのだ。
とても勝てるとは思えん。
魔獣が此方に近付いて来ると魔人も見えてきた。
ぐっ、なんだ此は体が震えてくる。部下達を見ると皆震えている。
あれは魔人なのか。魔眼とかのレベルじゃない。体から邪悪なオーラを、いや恐怖を撒き散らしている。
此は駄目だ。こんな奴を里に入れる訳にいかない。
俺は覚悟を決めた。
まずは威嚇射撃で木精達を離そう。
「放て」
部下に合図をおくり全員で矢を放つ。
思った通り木精達は上空に逃げて行く。
「よし、今だ全員でありったけの魔法を放て」
俺は部下達にそう言って、自分も魔法を放つ。
「ライトニングアロー」
俺達全員の魔法が魔人に殺到するが、魔獣が放つ黒いオーラに全て吸収されていく。
「こんな馬鹿な事が」
俺達が呆然としていると、木精達がまた魔人の周りに集まり始めた。
「ぐっ、俺がひとりで行く。お前達は此処で合図があるまで待機だ」
俺がそう言うと
「団長、俺達も行きます。一緒に行きましょう」
「駄目だ、ひとりで行くひとりの方が相手も油断するだろうし。時間を稼げるはずだ。応援が来るまで待て」
「大丈夫だ。時間稼ぎをするだけだ」
「団長……」
皆が悔しそうに頷く。
それを見て俺も頷き、向こうにいる部下にも待機の合図をだし、魔人達の前に踏み出す。
魔人の前に出ると体が恐怖で震えてくる。
これではどうやっても戦うのは無理だな。
接近戦も遠距離からも駄目とは例え何百の応援がきても無理だな。
どうする俺は意を決して話しかける。
「お前達は何者だここから先はエルフの里。用がない者は立ち去ってもらおう」
魔人と目を合わしては駄目だ。近くで視線を感じるだけで、腰が砕けそうになる。目が合えば立っていられないだろう。
すると突然、魔人は奇声を発して魔獣から降りた。
これは怒らせたか。だが強者に弱気は駄目だ。
魔人は何故か、頻りに頭に乗せた木精をこちらに見せてくる。
これは木精を人質に取ったと謂うことか。
魔人は我々に、どんな要求をするというのだ。
それに先程から聞いた事もない呪文を唱え、奇妙な踊りを踊っている。
これは俺に呪いをかけるつもりか。
どうするか迷っていると、魔人の後方から獣人達がやって来るのが見えた。
これは一体……。
***
「隊長、先程のは黒い神獣では」
「そうだ。我等を守護する神獣様。女神様だ。我等の危機にまた助けに来て下さったのだ」
私はそう言って女神に祈りを捧げる。
「しかし隊長、あの神獣もエルフの里に向かっているようですぜ」
「馬鹿者、様をつけろ」
しかし確かに我等と行き先が同じなようだ。
「我等も急ぐぞ」
女神様が通った後は、道のようになっているので進みやすい、これなら速く進めるだろう
しかし何故エルフの里に、魔人の所為なのか。
暫く走ると、前方に女神様が見えてきた。
あれは木精達か。
噂には聞いていたが、実物を見るのは初めてだな。
しかし何故、あれほどの数に囲まれているのだろう。
近付いて行くと女神様の前には、緑の髪をしたあれが森の民エルフなのだろうか、魔人と相対している。
不思議な事に木精達は、魔人に従っているようだ。
木精はエルフの友と聞いていたが、無理やり従わせているのか。
頭の上には帽子の様に木精を乗せている。
エルフに従わせた事を見せ付けているのか。
やはりこの魔人は危険だ。震えそうになる足を叱咤して前に進む。魔人とは目を合わさず、迂回するように、そして女神様にだけ挨拶する。
「女神様、また助けて頂きありがとうございました。これは一体、どういった状況なのでしょうか」
「バウ、バウ、バウ」
どうもこのエルフが、敵対して攻撃してきたようだ。
「わかりました。私が話して参りましょう」
私はそう言ってエルフの元に向かう。
「そこに居るのは森の民エルフ殿と思いますが、私はコボルト族のアリスと申します」
エルフの男は魔人を気にしながら、
「俺は森の民エルフのアシュトン。獣人が此所まで何しに来た。それにそこの魔獣とは親しき様子」
「私は獣人の部族連合の長、虎族の獣王の密使として森の民エルフの長に、密書を届けに参った者。そして其所に居られる方は、我等コボルト族の神獣様で御座います」
「密使、それに神獣だと、そんなもん信用できるか。その魔獣と魔人を連れて帰れ」
「これはこれは、森の民エルフは知性に富み礼儀正しい、高貴な種族と聞いていましたが」
「ふん、相手によりけりだ。お前達は信用できん」
「私の名はアリス、我が名我が血にかけて嘘はつきません」
「おっ、これは女性の方でしたか失礼。確かコボルトの伝説の巫女の名がアリス、その血筋の方か」
エルフの男は続けて
「うーむ、それでも信用できませんな。口では何とでも言えますから」
「くっ、これほど言っても駄目ですか……。世界樹の使い木精達も、こちらに従っているではないですか」
「ほう、あれが従っているように見えますか。私には操ってるようにみえますが」
そう言ってエルフの男は指差した。
私が彼の指差した方に振り返ると、いつの間にか魔人が女神様の背中に乗り、何やら呪文のような物を唱え、確かに木精達を操っている様に見える。
これはどうする。
「確かにあの魔人は危険な魔人ですが、我等の神獣様が一緒にいれば大丈夫かと、それに人族と敵対している様子、今人族は世界樹を狙っています」
そう私が言っていると、北から二人のエルフが慌てたように、大声を上げて駆け寄ってくる。
「団、団長、大変です里が、エルフの里が」
「ちっ、静かにしないか」
アシュトンも大声で返して、私には聞かせたくないのだろう。
「ちょっと、ここで待っていてくれ」
と言って彼らに駆け寄っていく。
そして耳打ちされて
「何だと、早く言わんか」
と言い私に向かって
「里で緊急事態が、いや少し取り込んでいて、お前達は引き返してくれ」
と叫び森に合図を送ると、北に向かって駆け出した。
森からも30人程出てきて追いかけていく。
エルフ達は風の魔法を使っているのか、あっとい間にいなくなった。
私は女神様のもとにいき
「どうやらエルフの里で大変な事が起きたようです。我等は追いかけます。また後で参上いたしますので、今はこれにてすいません」
と声をかけると、私はエルフ達を追いかける事にする。
「我等もエルフの里に向かう。行くぞ!」
部下に声をかけ我等は駆け出した。
***
俺は意味もわからず、暴走するユキの背中にしがみ付いてます。
一体何が何だかさっぱりです。
途中エルフ達をユキが飛び越して行きました。その時エルフ達が何か喚いていましたが、俺にはわかりません。木精達もギミーを除いておいてけぼりです。
ギミーは相変わらず、俺の頭にかじりついたままです。
痛いです。
しかし本当に何でしょうねと、考えているとまた絡み付く感覚が、これはまた結界ですね。今度はギミーのおかげでしょうか、数呼吸の内に抜ける事ができました。
結界を抜けると、そこには天にまで届きそうな巨大な樹木と、それを中心に周りに広がる街並みと、その外側を囲う高い外壁が見えた。
「おおっ、すげえまさにファンタジーだよ」
俺は巨大な樹木に圧倒され感嘆の声を上げた。
しかしよく見ると、街の中心辺りで何か黒い大きな生き物が、暴れているのが見えた。
神眼でさらによく見てみると、フォレストキング亜種だとわかった。
そして暴れている生き物の種族名がわかった時に、頭の中に声が聞こえてきた。
《……は……ど……力…………ます》
よく聞こえないとおもったら
「いたっ、いたたなに」
ギミーが強くかじりついた。
すると、
《私はこの世界ナルリーンワールドを支える世界樹です》
いてて、どうやらギミーが、通信機の役割をしているようです。
しかしこれから先、通信する度にギミーにかじられるのかね。
それに世界樹さんですか。
何か頼みがあるようですが、まぁ、何となく内容はわかりますがね。
いやはや、どうしますかね。
俺は目の前の巨大な樹木を見詰めた。
次回
魔神と世界樹
ツヨシと世界樹の邂逅
世界は動きだす
その時ツヨシは?
そしてまた運命の歯車がひとつ動きだす
次回もお楽しみに
ケタ、ケタ、ケタ
バウ、バウ