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異界の魔神  作者: 飛狼
8/31

第7話 木精と森の民 後編

8回目の投稿です


遅い時間ですが投稿します


拙い文章ですが宜しくおねがいします

 

 俺達はゆっくりと一本道を進んで行く事にする。

 木精達が俺達を導くかのように促すからだ。


 意外と害はなくおとなしい。30センチ程の大きさで今もケタケタと笑い? ながら俺達の周りを回っている。

 何故か一匹は俺の頭の上に乗ってケタケタ笑ってるが、たまにガシガシと頭を甘噛みしてくる。

 少し痛いです。

 俺は気に入られたのかね。


 木精達は手足がないから俺の服に噛み付き、引っ張って、何処かに連れていこうとしているようです。

 何か微笑ましくて、可愛いですね。

 あれ、あれれおかしいぞ。

 30センチの向日葵の花に目鼻はなく、端から端まで裂けた口があり、開いた口の中には鋭い歯が、びっしりと生えている。

 これはどう見ても不気味です。ホラーです。

 自分の感性を疑うよ。

 あれですかね。此の世界や周りの皆に俺も毒されてますかね。

 これを可愛く感じるとは、俺の感性が怖いわ。


 俺達は木精に引っ張られるまま進んで行く。

 どうやらこの道の先に目的地があるようだ。

 俺はユキの背中に乗って鼻歌を歌っていると、何が楽しいのか木精達が、鼻歌に合わせて舞うようにくるくると、俺の周りを回っている。


 暫く進んで行くと、突然目の前の地面に多数の矢が、突き刺さった。

 木精達が驚き上空に逃げだしたのを見計らったように、続けて道の両側から今度は、雷撃が多数俺達に飛んできた。


 ユキは落ち着いたもので立ち止まると、闇のオーラを体から漂わせ雷撃を、全て吸収していく。

 さすがユキさんですね。

 何故か、頭の上にいた木精は逃げずに、俺の頭にしがみついてます。

 う〜ん、此れはしがみついてるのかな。

 木精は大きく口を開けて、俺の頭に上からかじりついてます。

 これは周りから見ると俺が、食べられてる様にしか見えないよ。

 ホラーだよ。

 不気味だよ。

 今度からお前をギミーと呼ぶ事にしよう。

 あっ、それ以上噛まないで戻っちゃうから。


 全ての雷撃を吸収する頃には、上空にいた木精達も驚きから醒めたのか、俺達の周りに再び集まり始めた。俺達を守るかのように。

 見た目と違って良い子達ですね。


 雷撃が終わると、今度は右側の森から男が俺達に何か言いながら、前に立ち塞がるように現れた。


 何か怒ったように喋ってますが、全然わかりません。

 大体いきなり攻撃してきて怒るとか、意味がわかりません。

 あっ、さっきユキが結界を破ったからでしょうか。

 しかし言葉が通じないのは困ったな。

 この男の人が森の民エルフですかね。

 髪は緑色で耳は想像と違って尖っておらず、人族と髪以外はあまり変わらないようだが、整った顔立ちでかなりのイケメンです。

 そして着ている革鎧も地味でなく、派手すぎでもなくかっこいいです。

 何か悔しいですね。

 それに最初に会うエルフが男性はないでしょう。

 この世界は俺の期待を悉く裏切りますね。

 何か恨みでもあるんですか

「この世界のバカヤロー!」

 俺が急に叫んだので皆固まってます。

「あっ、大声だしてすみません」

 俺は皆に謝りながらユキから降りてエルフに向き合う。


 よし、ここは元日本人としては、

「えーと、決して怪しい者ではありません」

 俺は頭をペコペコ下げ、身ぶり手振りを交えて話しかける。

 う〜ん、昔よくこうして営業に回っていたなと思いながら

「此処にいる木精達に用事があっただけで、今もこの子達に連れて行かれてるだけです。貴方達に他意はありません」

 やっぱり通じませんね。

 俺が喋りかけても少し後退り視線も合わそうとせず、ユキの方ばかり見ている。

 何でしょうか、俺は相手にされず雑魚扱いですか。

 もういいです。どうせ俺は虚弱神ですよ。

 俺が少しいじけていると、ユキが後方に一声吠える。

 すると後ろからコボルト達が現れた。


 コボルト達はエルフに何か喋りかけながら、俺達を迂回してエルフに近付いていく。

 途中でユキに頭を下げて挨拶をしながら。

 ちょっ、ちょっと、俺には挨拶なしなの、可笑しいでしょ。何なの君達は、誰にも相手にされない俺って一体……。


 もう知らん勝手にやってくれ。俺はユキの背中にもう一度上がり、鼻歌を歌いながら待つことにした。

 俺の周りではまた木精達が、頭の上ではギミーが、また楽しそうに回りだした。

 ユキがさっきからバウバウと、コボルト達に話しかけてるから大丈夫でしょう。


 そうしていると、一本道の先から二人のエルフが、叫びながら駆け寄ってくる。

 俺達の前にいたエルフが話しかけられると驚き、コボルト達に何か言うと森に合図を出し、道を北に向かって駆け出して行く。

 すると森の中からゾロゾロと、30人程のエルフが出て来て追いかけていく。

 コボルト達も、ユキに何か言って追いかけていく。


 まだあれだけエルフが居たのですね。

 ユキも、俺に振り向き一声吠えると駆け出した。

 木精達も慌てているのか、先程よりも激しく回転しながら追いかけて来る。

 俺だけ、わかんないけど。

 誰か説明してよー!。


    *** 


 どうも、木精達の様子がおかしい。

 森に散っていた部下達が次々に戻ってくるが、どの報告も怪しげな物ばかりだ。

 獣達は南から何かがくるのを恐れるかのように、北や東西に逃げて行く。

 我々エルフは木精達と精神を同調できるが、今木精達は興奮しているのか同調ができない。

 世界樹の森全体が、緊張したかの様にざわついている 

 数十年、いや数百年なかった事だ。


 そんな事を考えていると、部下の一人が慌てた様に駆け寄り、とんでもない事を言い出した。

「団長。アシュトン団長! たっ、大変です。道が、南の森から我々の里まで、世界樹まで道ができてます」


 何を馬鹿な事をこいつ夢でも見たのか。

「お前、アドリアの実でも食ったんじゃないか。そんな事があるわけないだろう」


「本当ですってば、嘘だと思うなら一緒に見に来て下さいよ」


「ちっ、違ったら今晩はお前の奢りで酒盛りだからな」

 俺は舌打ちしながら部下達を連れて、向かう事にする。


「なっ、なんだこれは」

 そこには確かに南の森から北に向かって、真っ直ぐな道が出来上がっていた。

 まるで森が自ら別れて道を作ったように。

 こんな馬鹿な、木精達が、いやこれは世界樹の意思か。

 なにが南から来るというのだ。

 俺はふたりの部下に里に知らせ、応援を呼ぶように指示を出して、残りで待ち構える事にした。

 何かとてつもない事が起きている。

 だから常々言っていたのに、もっと警護団の人数を増やしてくれと。

 長老達の答えは否だった。

 里にはエルフ達10万人が暮らしているが、警護団は僅かに百人だ。

 これでどうしろと。

 何かあればどうしようもない。

 平和が長すぎた。結界に閉ざされ世界樹の森に隠って数百年、世界樹の森には危険な魔獣もおらず、もとよりエルフには犯罪者等いない。

 警護団の仕事は退屈な森の巡回だけ、今エルフの中で戦えるのは我々警護団だけだ。いや我々警護団も本格的な戦闘は皆無、これで南から来る物に対処できるのか。


 俺が暗い考えに落ちていると、南に偵察に行っていた部下が戻って来た。

「団長、見たこともない魔獣に乗った魔人が、木精達を従え此方にやって来ます」


「魔人だと、どの様な魔人だ」

 確か魔人達は200年前に神々と戦い敗れ、北の地に去ったはずだが。


「それがよくわかりません。木精達が周りを取り囲みよく見れません。それと見ていると体が痺れてくるような」


「ちっ、魔眼の持ち主か、厄介だな」

 どうするか。木精達も厄介だな、操られているのか。木精達は世界樹に連なる者達、傷付ける訳にもいかない。取り敢えず様子を見るか。

「よし、道の左右の森に別れて、俺の合図があるまで待機だ」

 部下達は頷き散っていく。俺も右の森に隠れる。


 暫くすると、魔獣が見えてきた。

 なんだあれは、見たこともない大きな凶悪な魔獣だ。

 あの魔獣と、どうやって戦えばいいのだ。

 とても勝てるとは思えん。

 魔獣が此方に近付いて来ると魔人も見えてきた。

 ぐっ、なんだ此は体が震えてくる。部下達を見ると皆震えている。

 あれは魔人なのか。魔眼とかのレベルじゃない。体から邪悪なオーラを、いや恐怖を撒き散らしている。

 此は駄目だ。こんな奴を里に入れる訳にいかない。

 俺は覚悟を決めた。

 まずは威嚇射撃で木精達を離そう。

「放て」

 部下に合図をおくり全員で矢を放つ。

 思った通り木精達は上空に逃げて行く。


「よし、今だ全員でありったけの魔法を放て」


 俺は部下達にそう言って、自分も魔法を放つ。

「ライトニングアロー」

 俺達全員の魔法が魔人に殺到するが、魔獣が放つ黒いオーラに全て吸収されていく。


「こんな馬鹿な事が」


 俺達が呆然としていると、木精達がまた魔人の周りに集まり始めた。


「ぐっ、俺がひとりで行く。お前達は此処で合図があるまで待機だ」

 俺がそう言うと


「団長、俺達も行きます。一緒に行きましょう」


「駄目だ、ひとりで行くひとりの方が相手も油断するだろうし。時間を稼げるはずだ。応援が来るまで待て」


「大丈夫だ。時間稼ぎをするだけだ」


「団長……」


 皆が悔しそうに頷く。

 それを見て俺も頷き、向こうにいる部下にも待機の合図をだし、魔人達の前に踏み出す。


 魔人の前に出ると体が恐怖で震えてくる。

 これではどうやっても戦うのは無理だな。

 接近戦も遠距離からも駄目とは例え何百の応援がきても無理だな。

 どうする俺は意を決して話しかける。


「お前達は何者だここから先はエルフの里。用がない者は立ち去ってもらおう」

 魔人と目を合わしては駄目だ。近くで視線を感じるだけで、腰が砕けそうになる。目が合えば立っていられないだろう。


 すると突然、魔人は奇声を発して魔獣から降りた。

 これは怒らせたか。だが強者に弱気は駄目だ。

 魔人は何故か、頻りに頭に乗せた木精をこちらに見せてくる。

 これは木精を人質に取ったと謂うことか。

 魔人は我々に、どんな要求をするというのだ。

 それに先程から聞いた事もない呪文を唱え、奇妙な踊りを踊っている。

 これは俺に呪いをかけるつもりか。

 どうするか迷っていると、魔人の後方から獣人達がやって来るのが見えた。

 これは一体……。


    ***


「隊長、先程のは黒い神獣では」


「そうだ。我等を守護する神獣様。女神様だ。我等の危機にまた助けに来て下さったのだ」

 私はそう言って女神に祈りを捧げる。


「しかし隊長、あの神獣もエルフの里に向かっているようですぜ」


「馬鹿者、様をつけろ」

 しかし確かに我等と行き先が同じなようだ。


「我等も急ぐぞ」

 女神様が通った後は、道のようになっているので進みやすい、これなら速く進めるだろう 

 しかし何故エルフの里に、魔人の所為なのか。


 暫く走ると、前方に女神様が見えてきた。

 あれは木精達か。

 噂には聞いていたが、実物を見るのは初めてだな。

 しかし何故、あれほどの数に囲まれているのだろう。


 近付いて行くと女神様の前には、緑の髪をしたあれが森の民エルフなのだろうか、魔人と相対している。

 不思議な事に木精達は、魔人に従っているようだ。

 木精はエルフの友と聞いていたが、無理やり従わせているのか。

 頭の上には帽子の様に木精を乗せている。

 エルフに従わせた事を見せ付けているのか。

 やはりこの魔人は危険だ。震えそうになる足を叱咤して前に進む。魔人とは目を合わさず、迂回するように、そして女神様にだけ挨拶する。


「女神様、また助けて頂きありがとうございました。これは一体、どういった状況なのでしょうか」


「バウ、バウ、バウ」


 どうもこのエルフが、敵対して攻撃してきたようだ。


「わかりました。私が話して参りましょう」

 私はそう言ってエルフの元に向かう。


「そこに居るのは森の民エルフ殿と思いますが、私はコボルト族のアリスと申します」


 エルフの男は魔人を気にしながら、

「俺は森の民エルフのアシュトン。獣人が此所まで何しに来た。それにそこの魔獣とは親しき様子」


「私は獣人の部族連合の長、虎族の獣王の密使として森の民エルフの長に、密書を届けに参った者。そして其所に居られる方は、我等コボルト族の神獣様で御座います」


「密使、それに神獣だと、そんなもん信用できるか。その魔獣と魔人を連れて帰れ」


「これはこれは、森の民エルフは知性に富み礼儀正しい、高貴な種族と聞いていましたが」


「ふん、相手によりけりだ。お前達は信用できん」


「私の名はアリス、我が名我が血にかけて嘘はつきません」


「おっ、これは女性の方でしたか失礼。確かコボルトの伝説の巫女の名がアリス、その血筋の方か」

 エルフの男は続けて

「うーむ、それでも信用できませんな。口では何とでも言えますから」


「くっ、これほど言っても駄目ですか……。世界樹の使い木精達も、こちらに従っているではないですか」


「ほう、あれが従っているように見えますか。私には操ってるようにみえますが」

 そう言ってエルフの男は指差した。


 私が彼の指差した方に振り返ると、いつの間にか魔人が女神様の背中に乗り、何やら呪文のような物を唱え、確かに木精達を操っている様に見える。

 これはどうする。


「確かにあの魔人は危険な魔人ですが、我等の神獣様が一緒にいれば大丈夫かと、それに人族と敵対している様子、今人族は世界樹を狙っています」

 そう私が言っていると、北から二人のエルフが慌てたように、大声を上げて駆け寄ってくる。


「団、団長、大変です里が、エルフの里が」


「ちっ、静かにしないか」

 アシュトンも大声で返して、私には聞かせたくないのだろう。

「ちょっと、ここで待っていてくれ」

 と言って彼らに駆け寄っていく。

 そして耳打ちされて

「何だと、早く言わんか」

 と言い私に向かって

「里で緊急事態が、いや少し取り込んでいて、お前達は引き返してくれ」

 と叫び森に合図を送ると、北に向かって駆け出した。

 森からも30人程出てきて追いかけていく。

 エルフ達は風の魔法を使っているのか、あっとい間にいなくなった。


 私は女神様のもとにいき

「どうやらエルフの里で大変な事が起きたようです。我等は追いかけます。また後で参上いたしますので、今はこれにてすいません」

 と声をかけると、私はエルフ達を追いかける事にする。

「我等もエルフの里に向かう。行くぞ!」

 部下に声をかけ我等は駆け出した。


    ***


 俺は意味もわからず、暴走するユキの背中にしがみ付いてます。

 一体何が何だかさっぱりです。

 途中エルフ達をユキが飛び越して行きました。その時エルフ達が何か喚いていましたが、俺にはわかりません。木精達もギミーを除いておいてけぼりです。

 ギミーは相変わらず、俺の頭にかじりついたままです。

 痛いです。


 しかし本当に何でしょうねと、考えているとまた絡み付く感覚が、これはまた結界ですね。今度はギミーのおかげでしょうか、数呼吸の内に抜ける事ができました。


 結界を抜けると、そこには天にまで届きそうな巨大な樹木と、それを中心に周りに広がる街並みと、その外側を囲う高い外壁が見えた。


「おおっ、すげえまさにファンタジーだよ」

 俺は巨大な樹木に圧倒され感嘆の声を上げた。


 しかしよく見ると、街の中心辺りで何か黒い大きな生き物が、暴れているのが見えた。


 神眼でさらによく見てみると、フォレストキング亜種だとわかった。

 そして暴れている生き物の種族名がわかった時に、頭の中に声が聞こえてきた。


《……は……ど……力…………ます》

 よく聞こえないとおもったら

「いたっ、いたたなに」

 ギミーが強くかじりついた。

 すると、

《私はこの世界ナルリーンワールドを支える世界樹です》


 いてて、どうやらギミーが、通信機の役割をしているようです。

 しかしこれから先、通信する度にギミーにかじられるのかね。

 それに世界樹さんですか。

 何か頼みがあるようですが、まぁ、何となく内容はわかりますがね。

 いやはや、どうしますかね。

 俺は目の前の巨大な樹木を見詰めた。



次回

魔神と世界樹


ツヨシと世界樹の邂逅


世界は動きだす


その時ツヨシは?


そしてまた運命の歯車がひとつ動きだす


次回もお楽しみに

ケタ、ケタ、ケタ

バウ、バウ

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