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第三章~感じるの。貴方の力~

第三章~感じるの。貴方の力~



 朝が訪れる。ここは広大な宇宙空間を行く超弩級戦艦ファイネリオンの内部だが、とりあえず朝なのである。

 居住ブロックの方では今も東の方からはりぼての太陽が昇っている所だろう。

 生活の感覚は、遠く離れた地球という星と大して変化は無い。朝になったら起きて夜になったら寝る。

 なお、夜勤で働く者に関してはその逆の生活を強いる事になるのだが、そこもちゃんと調整が施されている。

 元々宇宙に昼夜の概念は存在しないので、光が灯っていれば昼、消えていれば夜、と簡単に割り切れるという訳だ。

「ふぁ……」

 少年はやってきた朝という時間に呼び覚まされて、まず一つ欠伸をする。脳の冴え具合は、中途半端と言ったところか。

 彼はまずベッドの横に設置されたモニターを起動させて、朝の情報収集を始める。

 グリニッジという遠い遠い地の名前が冠せられた時刻を確認すると、今は朝の五時半だった。

 続いて彼はスケジュールを確認する。昨日はまず入隊初日として、入隊式やらの儀式が行われた。

 今日は、正式に軍に所属してから初めての軍事訓練だ。もっとも、昨日はヴァルツとの個人練習に励んでいた訳ではあるが。

 パイロットであるジュンハクは当然、ゲイルローダーに搭乗しての訓練となる。

 頭の中には、昨日散々訓練した作戦プランや道の描き方、操縦桿を握った時の感触が全て記憶されている。

(……あいつ、今頃どうしてんのかな)

 その感触を再確認するように拳を握ったり開いたりしながら、ジュンハクはふと彼女の言葉を思い出す。

(その言葉、卑怯だよ)

 彼女の言葉にはどんな意味が込められていて、彼女の言葉の内にはどんな感情が渦巻いていたのだろうか。

 途中まで考えて、ジュンハクはそれを放棄する。考えていても仕方が無い。

 行動してみなければ何も変わらない、というのは彼の十五年間の人生で得た経験則だった。

(あいつがどう思っていたって、俺があいつを守りたいっていう気持ちに変わりは無い。だったら前に進むだけだ)

 ジュンハクはベッドの出入り口に設けられた、最低限のプライバシー保護の役割を果たすカーテンを開け放つ。

「あ、ジュン。おはよー」

 カーテンの向こうにはブラウがいた。軍服をしっかり着込んで準備万端といった様子である。

 彼曰く時間にルーズなジュンハクに比べれば、確かに行動のスピードは一歩先んじていると言えるだろう。

「ああ、それとも、少尉、って呼んだ方が良いかな?」

「じゃあお前も俺に少尉って呼ばれたいのか?」

 暫くお互いを睨み合う二人。そして、全く同じ言葉を同じタイミングで言ってみせる。

「「了解であります、少尉殿!」」

 敬礼と共に放たれた言葉。びし!という効果音がぴったりの行動を取る二人の顔は、真顔。

「「……く、」」

 やがて耐え切れなくなって、あはは!と声を出して笑うジュンハクとブラウ。

 お互いの肩をばしばしと叩き合って、挨拶の代わりとする。

「それじゃあ、訓練頑張ってね」

「おう。お前も内勤頑張れよ」

 背筋を正さず寝ぼけ眼のままで、び、と緩めの敬礼を交わす。

 既に準備が整っていたブラウは、焦る事も無くすたすたと歩き出して、部屋を出て行く。

「さーて。俺も身支度しますか」

 言いながら、ジュンハクは部屋の中を見渡す。

 彼のルームメイトであるルヴェール少佐とトライク少佐とは、結局一度も顔を合わせていない。

 一体何処へ行っているのだろうか、と考えた後で、ああ、夜勤のメンバーなのかもしれないな、という結論に行き着く。

 疑問に適当な解答を見つけた後、彼は顔を洗って歯を磨き、運動用の動き易い服に着替えて準備を済ませた。

 時計を見てみると、時間は六時。十分余裕を持って行動出来る時間だ。

「ちょっと早めだけど、出掛けるか」

 ジュンハクは扉のロックを確認してから、部屋を後にする。

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