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人生楽してたのしむ転生のススメ  作者: U
一章:ワルトの子どもたち
19/24

14、秋(3)

 




 干した桑の実と木の実のクッキー。

 ジュリオお手製のお菓子は、意外にも素朴でほっこりと優しい、言うなれば「おばあちゃんの味」だった。

 あの堅物系美青年執事がいったいどんな顔でこれを作ったんだろう……。

 などと、お茶とお菓子でひと息ついていたところ、アレンス商会から届け物があったと侍女のミミュウが伝えに来てくれた。宛名がワルト家ではなく私の名前になっているので中身の確認をお願いしたい、とのこと。

 はいはい分かりましたよー。席を立つと、エリスは物も言わずついてくる。

 ミミュウに先導されやって来たのは屋敷の裏庭。住人以外が領主館の中に立ち入ることは基本的に無くて、出入りの業者との品物の受け渡しはここで行なっている。他に薪の保管庫や食料貯蔵庫なんかもあるけど、どちらも使用人の管轄だから普段私がここに来ることは余り無い。あのカブのおばさんは、どこで私のことを見かけたんだろう?


 裏庭には、たくさんの木箱や荷台に積み上げられたままの木材、そしてそれを運ぶ人々でどことなく浮ついた騒がしさがあった。侍女頭のオルガが、よく通る声で業者に指示を出している。

「お嬢様」

 近付くと、こちらに気付いたオルガはちらりとミミュウへ視線を遣る。ミミュウは軽く頭を下げて仕事へ戻っていった。

「忙しそうだね」

「ええ。何でしたか、フィーネリア様ご希望の“大ワル鳥のおうち”建造が今日から始まるとかで朝からひっきりなしですよ」

 フィーネリアにワル鳥を“何とかさせる”のは許可したものの、幼い彼女を頻繁に遠出させるのは心配だ。というわけで、フィーネリアの希望もあって、村からこちらへワル鳥たちを引越しさせることになった。

 最初、屋敷で飼っている牛や羊と一緒にワル鳥たちも放牧させてみたんだけど、案の定奴ら他の家畜をいじめ始めたので、柵を立てて放牧場を分けることになった。フィーネリア曰く“大ワル鳥のおうち”ってわけだ。

 しかし意外だったのはあいつらの統制力の高さだよ……。村から屋敷へどう移送しようと思っていたら、普通に馬車(から顔を出したフィーネリア)にくっついてきたからね……離脱鳥無しだったよ恐ろしや……!

 正確には、フィーネリアに続いたボスワル鳥にくっついてきたわけだけど、ハーメルンの笛吹き男の誕生を目撃した気持ちになったわ。また村人たちの間で変な噂が立ちそうな悪寒……。


「ではこちらの確認をお願いします」

 一抱えもありそうな木箱の蓋をオルガが持ち上げる。中身は全て、掌ほどの大きさの長方形のブロックだった。一つ一つ油紙に包まれて紐で縛ってある。さすがアレンス商会、仕事が丁寧だわ。

 適当に一つ選んで紐を解く。包み紙の中からでこぼこした黄土色の塊が顔を覗かせた。エリスが差し出したナイフを使い割ってみると、断面は鮮やかな萌黄色だ。うん、熟成もまあまあかな。

「いいみたいね。いつも通り馬車に積んでおいて」

「畏まりました」

 ティエティシエ領の特産品、オリブ油の石鹸が詰まった木箱が運ばれていくのを見送って私は踵を返した。部屋に戻って昼寝しよう。疲れた。



 * * * * * *



 貴族としての義務。死ぬまで自分について回るそれを果たすため、私は一つ大きな目標を立てた。

 五年で、領内の人口を現在の1.5倍に増やす。

 これを達成するための手段としては大きく二つ。公衆衛生を図り成人の死亡率を低減させること、栄養状態を改善させ乳幼児の死亡率を下げること。

 正直可能かどうかは分からないけど……。だいたい五年で1.5倍っていうのも、特に何かを参考にしたとかじゃなくて適当に何となくで決めた目標だし。そもそも戸籍制度ないから詳細な人口って実は分からないんだよね。それでもワルトは移民が多い関係上、他領に比べればちゃんと把握してる方だと思うけど。

 別に誰かに目標を立てろと言われたわけでもない。ただ、あった方がだらだらしないでいいかなって思っただけだ。何せ民主政と違って領主はいったんなったら余程のことがあっても辞められないしなぁ。絶対途中でダレる気がする。……それに。

 いつおっ死ぬか分からないし……。いや、前世もアレだったしさ、今回だって何があるか分からないって考えといた方が良いと思うんだ。

 そういうわけで、正式な領主就任はまだ先だけど、既に着手は開始している。

 栄養状態の改善は、ワル鳥の家畜化とか……凄い勢いで失敗したけど……やってるし、衛生の方は、石鹸をワルトに根付かせることで改善を考えている。

 石鹸自体はこの世界に既に存在している。変態貴族どもの巣窟、アヌメリィ帝国の特産品だ。でもアヌメリィ帝国産の石鹸って高級品で、うちの国では平民の手が届くようなものじゃない。

 どれだけその効果を啓蒙しても、気軽に手に出来なければ広がらないし意味が無い。ってことで、じゃあうちの領で作ったらいんじゃね? ワルトに新たな特産品の風来たる! ……とか考えてしまった私を誰も責められないと思う。


 昔、前世でロハス(笑)にはまっていた頃、手作り石鹸好きが高じて自分も石鹸作りに手を出しかけたことがあった。

 石鹸作りというのは、工程自体は単純なものだ。精製水に苛性ソーダを溶かし、オイルを入れ、よーく混ぜて型に入れ固めて乾燥させれば出来上がり。

 しかし問題は、材料の一つである苛性ソーダつまり水酸化ナトリウムの扱いだ。この水酸化ナトリウムというやつは、薬局で普通に手に入るものの、購入時には身分証明書と印鑑の提示が必要となる、正真正銘の劇物だ。一滴でも皮膚に付着すれば爛れ、火傷を引き起こし、目に入れば失明、水をかければ急激に発熱し爆発するという恐ろしい劇薬。触れるもの皆傷つけるガラスの十代どころの話じゃねーぞ!

 もう恐ろしくて恐ろしくて。それでも諦めきれなかった私は、どうにか苛性ソーダの代わりになるようなものは無いかと調べまくった。そして思いついた。純粋な苛性ソーダの無い時代、昔の人は、何を使って石鹸を作っていたのだろう、と。

 石鹸の歴史は意外に古かった。何と紀元前には既に石鹸の元があったのだとか。最初は木灰、それから海藻灰、そして化学ソーダへと素材は移行していったのだと言う。

 そこまで調べ、石鹸に纏わる歴史と人類の知恵に感心し、――そして私は石鹸作りを諦めた。

 だってお前……木の灰ってお前……海藻の灰ってお前……何だ、ワカメでも燃やせっちゅーんか! 想像してみてほしい、暗い部屋で一人死んだ魚のような目をして増えるワカメちゃんを延々と火にくべる女を……紛うことなきホラーである。

 そんなわけで、石鹸作りの実施は早々に諦めた私だったが、その知識がまさか生まれ変わった後役に立つことになろうとは。ロハス(笑)ばんざーい! ……って思った、最初は。


 ご存知、ワルト領は内陸の緑多い土地だ。苛性ソーダも海藻も無いけれど、木だけはあっちこっちに沢山生えている。

 木の灰取り放題じゃんヤッター! 私のスイーツ知識が火を吹くぜ!! ……などと、使用人に遠巻きにされながら薪の灰を集めた過去の自分に止めろと言ってやりたい。

 もうね、全ッ然固まんない! 黄色い菜種油に灰色の粉が混じった汚らしい液体ってば混ぜても混ぜても混ぜても混ぜても固まんない!! ずーっとドロドロしてんの!! 私はお前に柔軟性なんて求めてねえんだよ! 男なら(?)硬くなってなんぼだろーっ!!

 ――と、まあ、食事や休憩を挟んで正味四時間ほど大鍋をかき混ぜ続けてみたが駄目だったわ。水に灰とオイルをぶちこんで練れば練るほどイィ~ヒッヒッヒ! で完成するほど石鹸は甘いもんじゃなかった。

 もう心底疲れ果て、昼寝をするため自室に戻ったら、何の偶然かケティが遊びに来た。そこで石鹸作りの顛末を茶請けに話した所、その後自領に戻った彼女は石鹸作りを完成させ、ティエティシエ領の新たな産業として興していた……。

 えー!? だよ。お土産の石鹸と共にやって来て自信満面にケティが語ったところによると、元々、帝国から石鹸作りのパイを奪えないかと狙っていたそうだ。帝国石鹸の産地とケティの自領、ティエティシエ領は気候が似ている。きっと作れるはず、という確信はあったが、工程はともかく材料が特に厳重に秘匿されていてなかなか分からなかった。しかしそれも私の話を聞いて解決した、と……。

 ……そう言えば、ティエティシエは地中海を抱える港街で……つまり、海藻、取り放題。


 …………もうね。


 ……ごねたよね!!

 みっともなくごねまくったよね!

 お前その成功は誰のおかげかと、Win-Winの関係ってものを知らんのかと、泣くぞ、喚くぞ、石鹸寄越せと。

「うぃ、うぃんうぃん?」とケティは怪訝そうな顔をしてたけど、結局安くティエティシエ産の石鹸を卸して貰えることになった。

 もちろんちゃんと契約書を交わし、“共同発案者への報酬”という形で。……ふ、ふふふ……プライドを投げ捨てたかいがあったわ……。

 そういう経緯があり、公衆衛生として私は村々に石鹸を配り廻っている。無料(タダ)なのは、これが、私の成人祝いの下賜品だからだ。

 何か慶事があった際、領民に何がしかのおすそわけを行うというのは、どこの領主も行なっていることだ。福利厚生の一種のようなものかな。品物の場合もあれば、税率を下げるとか、酒と肴の大盤振る舞いというような形で行われることもある。私はお父様に話して石鹸にして貰った。

 これでとりあえず石鹸というものの有用性を分かって貰えたら良い。あとはティエティシエから仕入れた石鹸を安く市場に流すだけだ。

 道のりは長いけど、決して届かない先ではない。



 * * * * * *



 昼寝から目覚めたら、夕方になっていた。

 窓を開け放しテラスへ出ると、タウヒの林が夕焼けに染められて橙色に輝いていた。どこからか、きゃらきゃらと妹の笑い声、弟の泣き声と重なるように鶏の鳴き声らしきものが聞こえる。

 ……そう言えば“ワル鳥のおうち”作るって言ってたな。ちょっと様子を見に……


 ぐう。


「……」

 主人の都合も斟酌せず腹の虫は自由気ままに自己主張する。……食堂で何か貰おう。

 しかし運悪く、食堂へ向かう途中、エリスに捕まった。

「お嬢様、どちらへ?」

「食堂……」

 その小さな応えを聞くや、

「駄目です」

 エリスはきっぱりと言い切った。

「で、でもお腹すい……」

「あと一刻もすれば夕食になります。それまでは水でも飲んで我慢して下さい」

「エリスの意地悪……」

 ぶちぶち言ってみても、侍従殿のすまし顔は崩れることはなく。

「何とでも。それよりお嬢様、あからさまに食欲を訴えるのは淑女として、次期領主として相応しくありません」

 よろしいですか、とシャープな顎をちょっと上げお説教を開始するエリス。私は慌てて自室へ戻る旨を告げスカートを翻した。

「厨房には、お嬢様が来ても食べ物を与えないよう伝えておきますからね。行っても無駄ですよ」

 く、くそー!! 読まれてらー!

 敗者の背中に矢尻を突き立てるような真似を、いともたやすく行う我が侍従から逃げるようにして、私は小走りでそこを去った。



 軽く掲げたカンテラの光に、苔むした石造りの道が浮かび上がる。

 これは、領主館から外へ続く秘密の抜け穴の一つだ。その昔、戦争の時代。領主館は領主の居城兼城塞としての役割を果たしていた。その頃の名残で、屋敷には他にも幾つもの“秘密の抜け穴”が存在している。

 ふ、ふふふ……エリスめ……私の食物への執着を甘く見たな……!

 あの程度で諦める私ではないのだ。食べちゃ駄目って言われると余計何か欲しくなるよねー!

 転ばないように注意しながら、しかし足早に歩みを進める。

 十分か、二十分か、湿った暗い穴の中を進むとやがて行き止まりに当たる。右手にカンテラを向けると、かろうじてそこに梯子を認めることができた。慎重に足をかけ一つ一つ登ってゆく。

「よっ、と……」

 眩しい夕焼けに目を眇め滑るように外へ。そこは、近所の森のすぐ近く。

 井戸の形をした出口に元通り木の蓋を被せれば、それはもう、打ち捨てられた涸れ井戸にしか見えない。

 念のため周囲を見回し人の気配が無いのを確認しながら森の中へ。

 林道は、足裏に落ち葉の優しい感触を伝えてくる。

 ふへへ。何食べようかなぁ、何があるかなぁ。木苺かな、桑の実かな、茸もいいなあ。

 食欲にぎらつく視線で周辺の木々を上から下まで陵辱しまくっていた私は、視界にチラリと捉えた赤色に首を巡らせた。

 あ、あれは……!

 桔梗に良く似た、紅色の可憐な花。

 ば、バカ花……! バカ花だー!

 私は喜び勇んで、いっぱいに広げた掌ほどもある異様に大きな花に駆け寄った。このバカ花は、花弁の根本に蜜をたっぷりと蓄えており、花をもいで裏側からチュウチュウ吸うととってもおいしい!!

 早速ぷちりと花をもぎ、口をつける。蜂蜜よりはサラリとしていて、かぐわしい花の香の蜜がじゅわぁ~と舌に広がる。まるで暑い夏の日に頂く一杯の水のように、舌と喉が喜んでいるのが分かる。

「――さて」

 しばし慈蜜の歓喜に酔いしれていた私は、花弁を吹き捨て踵を返した。バカ花の蜜を口にしてしまったからには、さっさと帰らねば……。


 行きよりもだいぶ短い時間で屋敷に戻ってきた私は、屋敷の裏手に向かった。ここは普段、あまり人が近づかない。

 良かった、間に合った。まだキて(・・)はいない……。

 ふと気が緩んだ瞬間に、それはやって来た。

「ぐぅっ……!!」

 胃の底から迫り上がり、胸内をぐるぐると渦巻く気持ち悪さ。息が震え、額には汗をかき、――――キタキタキタァーーッ!!


「う゛べえ゛え゛え゛ッ!!」


 ビチャビチャビチャ、と吐瀉物が土に跳ねる。

「……はぁ、はぁ……」

 何度かえづきを繰り返しながら出しきって、荒れた息を整える。ふう、はあ……。

 ――バカ花は、花弁の根本に蜜と種を備えている。その種に毒があるのだ。摂取後数十分で気持ちの悪さや目眩などを伴う嘔吐毒。

 バカ花の名前の由来は、“バカが吸う花”。知らないで口にするのはバカだし、知ってて口にするのはいっそうのバカだ。

 しかし私は言いたい。バカと呼ばれようとも、美味いものは美味いのだと。食べたいものは食べたいのだと。

 死の危険に身を晒しながらも、河豚を食べ続けた先人の気持ちが、今なら私、よく分かる。


 目眩が落ち着くまでその場にしゃがみ込み、目を閉じて呼吸を落ち着かせる。

「姉さまー!」

 放牧場の帰りだろうか。フィーネリアとアストリアが連れ立って駆けて来る。……何故ボスワル鳥も連れてきた……。

 立ち上がった私の元へ走りこんできたフィーネリアは、急停止しようとし、

「あ」

 私のゲロを踏んですっ転んだ。転んだついでに弟の鼻先へヘッドバットをかます。

「「ゴゲーッ!」」

 頭を抱えて身悶えるフィーネリア、鼻を押さえ悶絶するアストリア。やがて、ポタリ、と土に赤い液体が落ちる。

 この世の終わりのような顔で鼻血を流すアストリア、自分も痛みで涙目ながら、それを見て爆笑するフィーネリア、泣き出すアストリア、「「ゴゲーッ!」」うるさいワル鳥、飛んで来るオルガ…………。

 ああ……終わった……ご飯抜きだ……。

「これはッ! どういうことですか! お嬢様ァーーッ!!」

 ひぃっ!! 怖い!

 びくん、と反射的に肩が跳ねる。怒りを自然現象に例えるなら、エリスのそれは吹雪で、オルガは雷だ。

 侍女頭であり、私たちきょうだいの礼儀作法の先生でもあるオルガは、行儀に厳しく、とても恐い。

「ご、ごめんなさい……」

(全く不本意にも)主犯になってしまった私はともかく、何故か弟も妹も、三人揃って(こうべ)を垂れてしまう。三人それぞれ、オルガに怒られた経験があるのでこれは条件反射に近い。

 足元の吐瀉物と、汚れたフィーネリアの服に視線を走らせたオルガが、ぐわりと(まなこ)をかっ開いた。

「また嘔吐蜜を口にしましたね、お嬢様!! 貴女という方は、何度申し上げれば分かるのですか!?」

 ひぃっ! すいません!!

 断定である。疑問形ですら無いってどこまで信用がないんだ私は……いや前科があるからしょうがないんだけどさ……。

 思わず瞑ってしまった瞼を恐る恐る開くと、般若の面のオルガの向こうにワル鳥が見えた。奴は、こちらに尻を向け何やら羽をバタつかせている。

 尾羽根を振り振り、尻を横八の字に動かした後、羽ばたきしながら短く鳴いたと思ったら、尻をこちらに向けたままぷりぷりと糞を……。こらー! 何やってんだお前はー!! 何か分からんが馬鹿にされてることだけは分かるわ腹立たしい!!

 更に許しがたいことに、奴はノリノリで鳴きながら再び尻を振る。ちょっ飛ぶ、やめ……!

 振り飛ばされた鳥糞は、オナモミのようにオルガの背中に張り付いた。さ、最悪だ……。

「ぶほぉっ」

 因みに今吹き出したのは私ではない、フィーネリアだ。アストリアも泣き笑いの変な顔で必死に口を押さえている。私は不自然なほど大げさに顔を背けた。これはやばい。

 我々の様子に眉をひそめ、オルガは振り返る。そして自分の惨状を正確に把握し……

「お嬢様ァァーーッ!!」

 ええっ!? なんで私!?

「犯人はアイツです!」

 必死に指さした先、ワル鳥は心底こちらを小馬鹿にした感じで尻を振った。ゴゲッゴゲッと歌う調子で鳴きながら。

「この鳥畜生が!」

 歯を噛み砕かんばかりに食いしばり、オルガはその辺に立てかけてあった箒を手にとった。すかさず駆け出したワル鳥の尾羽根を、箒を振り上げ猛然と追いかけていく。

「「「…………」」」

 小さくなっていく二つの姿をしばらく見つめた後、私たちは顔を見合わせた。

「逃げましょう」

 すたこらさっさとその場を離れる私たち。我ら三きょうだいには、大人しく怒られるのを待つような殊勝さは(恐らく一名を除いて)無いのだ。

 さあさあお楽しみの夕食だ! 今日のメニューはなんだろな。



 ……しかし、屋敷裏での一幕を何故か把握していたエリスの手によって、結局私は夕食抜きの刑に処された。

 オルガも恐いけど、やっぱりエリスも怖ろしい……。





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