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なわとびと僕となわとびと僕と。

作者: お梨

なわとびが飛べない。


何度でも言おう。なわとびが飛べない。


なわとびと一緒に寝たり、風呂入ったり、登下校したりと

僕なりになわとびと友好関係を築いていこうと努力したつもりなのだが、


なわとびは振り向いてくれない。

こういう時はなわと呼ぶべきなのか、どうなのか。

いや、それでも僕はこいつのことをなわとびと呼ぼう。


そもそも小学校が悪いのだ。なんで小5の少年に二重飛びを飛ばせようとするのだろうか。

いいじゃないか。飛べなくてもいいじゃないか。義務教育じゃないか。

それでもなぜか先生は

「飛べない子は昼休みに一緒に練習しようねー」

と、優しく居残りにさそってくる。

いや、僕小学生だよね?小学生ってもっとのびのびと育っていくものだよね!?

なぜだか分らないが、

僕の小学校はなわとび教育に燃えているのだ。


仕方なく、僕は今日もいつも通りなわとびと登校した。

普通の日だった。

5時間目にあるリコーダーのテストが気になってはいたが、

それを除けば、なんてことない普通の日だった。

校門を抜けてまっすぐ行くと靴箱がある。

が、その前に校門を入って左右に花やらなんやらが植えられている小さな花壇スペースがある。

僕はつい、立ち止まってしまった。


「うぁぁあぁぁあぁやめてよぉぉおぉぉ」

「宿題見せろってんだろぉ」

「うししし」


ありがちないじめっ子といじめられっ子がいた。

いまどき珍しいと思った。

宿題くらい見せてやれよ・・・。

と、思いつつよく見ると、いじめられてるそいつは同じクラスの熊本くんだった。

熊本!頭がいい熊本!青白くてひょろい熊本!だけどニックネームは「くま」の熊本!くまのくせにひょろいんだよといじめられてた熊本!弱いくせに泣かない熊本!2年前千葉から引っ越してきて、「熊本には行ったことないです」って言った熊本!


「あ、ヒロ!ヒロだよね!助けてよぉ!」

熊本に気付かれてしまった。うわ。どうしよう。

さっき熊本のことをさんざんひょろいと言ったが、僕も負けじとひょろい。

身長も低い。それに伴って体重も軽い。弱い。パズルが得意。

「なんだよ。熊本の知り合いかようへへ。」

「うしししどうしやすか。」

くそぅ。相手二人はごつい。はっきり言ってごつい。

熊本ともそこまで仲がいいわけではない。たぶん。

なんで僕が。なんで僕が。なんでなんでなんでなんで。

みんな黙って僕らの後ろを通り過ぎていく。先生もこない。


「黙ってんのかよ、コルァ!」

「いきやすか兄貴!」

なんか分らんがごつい二人組が僕に向かってくる。

え。どうすればいいの?僕。え、逃げればいいの?いや、逃げれない・・・

「ヒロ!なわとび!なわとび!」

・・・熊本の声・・・。

そうだ、僕には


なわとびがいる!



「こいつはやべえぞ。逃げろ!」

「うしし覚えてろよぉ!」

ごついーズは逃げて行った。

熊本が茫然と僕を見て言った。

「あ、そういうふうに使うんだ?」


何が起こったかって、僕はなわとびを両手で持って、

ありたけの力でなわを回して、飛んだ。

つまり、二重飛びした。

そしたらごついーズはビビって逃げてった。というわけだ。


「いや、普通、なわを相手にぶつけたりするだろ?」

「けがさせんじゃん。痛いし。」

「・・・ヒロっていいやつだな。」

そうかなとか言いながら、僕ら一緒に教室に向かった。


あれ。

飛べたじゃん、僕。

はは、二重飛び、飛べたじゃん!


5時間目、リコーダーのテスト終わってから暇な時間、ぼーっとしてたら気付いた。

明日の体育にもまた飛べたらいいんだけどな。

どんな心配事もなんやかんやで上手くいくんだよな。


そういうもんなんだよなぁ。





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