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5 亡霊の住処

地下深くへと続く暗く狭い螺旋階段に、私とカメリアの足音だけが響く。

一段下ることに空気は冷たくなるような気さえする。

血濡れた足跡を残してカメリアをここまで誘い込んだ犯人は、いったい何を見せようとしているのだろうか。


「ようやく階段を下りきりましたわね。」


先をいくカメリアがそう言った。


「ここは地下室でしょうか。」


隠された階段の先に待っていたのは、広大な地下通路であった。

石造りの高い天井は、三角形に近い半円が幾つも組み合わさったような形をしている。

人が3人並んで歩けるほどの広い道幅の長い通路になっている。


「まだ犯人の足跡は続いていますわね。」


カメリアは足跡を追って先へ進もうとする。

彼女を追いかけようと踏み出した私の足が、何かを蹴飛ばした。

それが転がる軽い音がした。


「なんでしょう。」


私は近づいて見てみて、声も出ないほど恐怖した。


「これは…骨?」


それは、長い年月が経って腐敗し、茶色く変色した人の骨だった。



「ヒルダ、見てくださいまし。」


カメリアの声はわずかに不安と恐怖を滲ませていた。

彼女が指差した先には、壁に沿って積み上がった白いもの。


「これ全部、骸骨ですわ。」


髑髏が山積みにされていたのだ。


「ここは地下墓地だったのでしょうか。」


私の言葉にカメリアも「そのようですわね。」と頷く。


「けれども、この髑髏はきちんと埋葬されたようには思えませんわね。」


積み上げられた骨たちは、誰のものかわからなくなってしまっている。

敬意を払って弔われた様子はなかった。


「侯爵家はなぜ自宅の地下へこのような墓地をつくったのでしょう。」


この街に、人々が共同で使う地下墓地は他にあるのだ。

地下墓地の管理をしているのは街の有力者であるローゼンベルク侯爵家ではなかったか。

なら、なぜその共同墓地と別に自宅の真下にこの骨の山を作ったのか。


「埋葬の仕方が雑であることからすると、ここにいる死者たちは侯爵家の血筋を引いた者たちでないことは明らかですわね。」


カメリアはその骸骨の山をじっと見つめてそう言った。



足跡を追って地下通路をさらに進んでいくと、広間のような空間に辿り着いた。


「ここはさらに別の通路へと続いているようですわね。」


その広間は幾つもの通路への入り口になっていた。

広間を中心に、放射状に通路が続いているのだ。

まるで蜘蛛の巣のように。


「あれはなんでしょう。」


私は広間の中央のそれに蝋燭の光を当てて、カメリアに見せた。


広間の中央、異質さを放っているのは簡素な寝台と書き物づくえ。

その上に置かれた古びた手帳。


「かつてここで誰かが生活していたのでしょうか。」


カメリアは書き物づくえへと近づいた。


「犯人が私に見せたかったものは、これなのですわね。」


その書き物づくえの上、そして手帳にも、乾ききっていない赤い手形が残されていた。


蝋燭の火が、つくえに掘られた不恰好な文字を浮かび上がらせた。

そこにはこう掘られていた。


"ぼくが切り裂きブーベだ!"


私は思わず息を呑んだ。


「まさか、ここに住んでいたのは切り裂きブーベなのでしょうか。」


「この手帳はブーベが書き残したものなのかもしれませんわね。」



犯人の足跡を追って辿り着いたのは、地下に潜む亡霊の住処だった。

そしてカメリアは導かれるままに、亡霊が残した手帳を読み始めた。

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