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3 新たな犠牲者

「カメリア嬢、お久しぶりです。

ようこそお越しくださいました。」


カメリアとユリウスが大広間で談笑していると、大階段を高価な衣服を見にまとった男性が降りてきた。

ローゼンベルク侯爵だ。


ローゼンベルク侯爵はその高貴な身分とは裏腹に、他人との距離が近い人物らしい。

カメリアの手をしっかりと握って握手し、「こうして会うのは王家の夜会以来ですが、また一段と美しくなられましたね。」と笑いかけた。

 

「私が挨拶もしないうちに二人きりになるとは、ユリウスも隅におけんな。」


ローゼンベルク侯爵はカメリアの側で控えていた従者の私を勘定に入れていない。

侯爵夫人もそうであったように、ローゼンベルク侯爵は使用人はいないものと扱うらしい。

この城の中では、私はいつも以上に従者の仕事に徹していた方が良さそうだ。


ローゼンベルク侯爵はカメリアに顔を近づけ、「実はこの婚約はユリウスたっての希望なのですよ。」と囁く。


「我が息子がどうしてもカメリア嬢を妻に迎えたいというのです。

シュテルンブルク公爵の娘、カメリア嬢であれば家柄も申し分ありませんから、私もすぐに賛成したのです。

最近カメリア嬢を悪女だと言うものもありますが、なぁに、心配いりませんよ。

この侯爵家の人間になるからには探偵などと言う品のない仕事をしなくとも贅沢な暮らしができます。」


響く声で笑うローゼンベルク侯爵に、ユリウスは申し訳なさそうに眉を下げた。


挨拶がすむと、カメリアは宴会場へ案内され、ローゼンベルク侯爵家との会食をした。

会食の間、私は侯爵家の使用人とともに仕事をしていた。

今晩カメリアはローゼンベルク侯爵家に泊まることになっていた。



事件が起こったのは夜11時だ。


私と侯爵家の使用人たちが1階のキッチンで仕事をしていると、壁に並んでいる呼び鈴のうちのひとつが鳴った。

呼び鈴は各部屋から使用人をよべるように備え付けられたものだ。

メイド長は呼び鈴がどこの部屋のものか調べた。


「あら、旦那様のお部屋だわ。

どうしたのかしら。」


メイド長は私を含むキッチンにいた使用人たちに「いってくるわね。」と言って、屋敷の最上階にあるローゼンベルク侯爵の部屋へ向かった。


その数分後、メイド長の悲鳴が屋敷に響き渡った。


悲鳴を聞いた私は、1階のキッチンから急いで階段を駆け上って最上階へと向かった。


「メイド長、どうなさったのですか。」


私は大声で問いかけながら侯爵の部屋へ駆け込んだ。


「ヒルダ、あなたも来てくれましたのね。」


部屋にはすでにカメリアとユリウスが駆けつけていた。

自室が4階にあるユリウスと3階の寝室を借りていたカメリアは、悲鳴を聞いてすぐに侯爵の部屋へ来たのだろう。

二人は1階にいた私より先に部屋に着いたのだ。

 


「いったい何の騒ぎよ、こんな真夜中に。」


ナイトガウンをきたローゼンベルク侯爵夫人も部屋へ来た。

侯爵夫人は2階に自室を与えられているため、彼女はこの部屋の惨劇を未だ知らなかったのだ。


「メイド長、何があったか話せますか。」


ユリウスに問われ、メイド長は震える声で言う。


「呼び鈴が鳴りましたので旦那様のお部屋に伺ったのです。

けれどもノックしてもお返事がなくて…。

扉を開けようとしましたら、鍵がかかってたんです。

それで、もしもの時にと預かっていた鍵を使って中に入ったのですが…。」


メイド長はぶるぶると震える指で寝台を指差した。


「旦那様が…。

旦那様が…!」


割られた窓ガラス。

滴るほどに真っ赤に染まったシルクのシーツ。

床に散らばる赤い足跡。

切り裂かれた喉と腹。


城の主人、ローゼンベルク侯爵が殺されていた。





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