第一話 「リミッター」
かつて自分たちと共に成長してきた彼らは一つの世界に集結し仲を深め、戦い、世界を救う。
2149年
「まぁあなた」
「ん?こ、これは」
「まだ小さな赤ん坊じゃない」
何か紙が貼ってあるぞ。
「何か書いてある」
『わけあって私にはこの子を育てることができません。そこでいい里親を探していました。そんな時あなた方を見つけました。あなたたちの優しい目を見てあなたたちになら任せられると思いました。どうかこの子をお願いします』
「俺はいいと思うが」
「私この子を引き取りたい」
「おしめに文字がある」
「え?これ名前だわ。名前は――――。」
2150年
人類は人はもう一段階上の存在に進化する。
本来体を守るために脳が定めているリミッターを外したものが現れる。
リミッターを外したもの、通称ナンバーズを使った戦争が始まる。
その戦争は後に第三次世界大戦と呼ばれる。
俺、黒目水美・今年で十七歳のナンバーズ育成学校高校二年生。
毎日八時に寝て三時に起きる。
ストレッチなどの準備運動をすませ校舎の周りを走る。
毎日二十km走る。
その後体幹や自重トレをし、投げる飛ぶ蹴るなどの基礎動作を鍛える。
それでちょうど六時になる
お俺はこのトレーニングすべてをリミッターを外さずする。
リミッターを外した時の力は通常時の力に比例する。
だから鍛えている。
シャワーを浴びて朝食を取り読書をする。
ちなみに本は仕送りでこっそりいただいたラノベである。
そうこうしていると七時になるため訓練場へ向かう。
「静粛に!」
長官の声で俺たちは静まり返る。
スゥーー。
「いいかお前ら!ナンバーズ候補生にここを出る権利はない!出たければ由緒正しきナーバーズになれ!」
「は!!」
生徒が声をそろえて言う。
これが毎日のルーティーンだ。
ナンバーズ適正があるかそうでないいかがわかるのが六歳。
そこでナンバーズ適正と判断されるとそれまであった人権が没収される。
その後ここナンバーズ育成学校に連れてこられ候補生になる。
「今日は2066年第二回卒業試験を行う。各自準備をするように」
今日は卒業試験か。
ここでは年に三回の卒業試験があり、合格すると正式にナンバーズになれる
俺は今年で十一年目。
俺以外はみんな戦場に行った。
今回も不合格かな。
そう思っていると長官に呼び出された。
俺なんか悪いことしたっけ。
「お前は受かる気がないのか」
予想外の言葉が出た。
てっきりラノベの件がばれたのかと。
「なぜそう思うのですか」
「お前が朝毎日欠かすことなく体を鍛えているのは知っている。生身であれだけ動ければリミッターを外せばとてつもない力を得ることができる。なぜ使わん」
ここは正直に
「俺は戦場に行くのが面倒くさいです。あんな所に行くくらいならこの安心安全なここで戦争が終わる事に賭けて待ちたいです」
本音だ。
例え俺の世代が俺以外全員戦場へ行ったとしても俺は行きたくない。
「そうか。しかしお前が戦場へ行けばたくさんの命が助かる。だからどうしてもお前を行かせたい。よって秘策を考えた」
「秘策ですか」
「お前は今回の卒業試験、合格せざるを得ない」
「はぁ・・・」
長官は決して悪い人ではないんだよな。
朝のルーティーンも多分シナリオ通りいってるだけだし。
でもあの遊び心のある性格を何とかしてほしい。
そして秘策とはなんだろう。
俺が合格せざるを得ないもの。
考えているうちに広場に着いた。
長官が来た。
「今から2066年第二回卒業試験を行う」
「行うにあたって今回新たに導入する制度について説明する」
「今回は二人一組のチーム戦で行う」
これが秘策か。
ちょっと弱くないか。
年三回もあるんだし悪いけど俺ペアの人落とすよ。
「それではチーム表を配る」
俺のペアは凜花・アンビエンテ・・・。
え、嘘、ハーフさん?
ていうかこんな子いたっけ。
十三歳ってことはもうすでに七年ここにいるんだよな。
「水美さんですよね」
顔を上げるとそこにはラノベに出てきても不思議じゃないくらいきれいな少女がいた。
「うん、君はアンビエンテさん?」
「はい。よろしくお願いします」
「うんよろしく」
う、まぶしい。
しかしまだ弱い。
「今からルール説明をする」
「これから君たちはバスに乗って国の私有地の山に行ってもらう」
「そこの山頂に上ることができれば合格としよう」
「なおそこにはたくさんの罠が仕掛けられている」
「期間は三日間。リタイアしたくなったら下山しろ。行動不能と判断すれば職員が向かう。以上」
そう言い終わった後広場にバスが入ってきて言われるがままに乗った。
「水美さん今回の試験絶対合格しましょうね」
アンビエンテさん(以後長いので凜花さんと呼ぶ)
「うん」
心無い返事をすると凜花さんがこっちをじっと見てきた。
「なんでそんなにやる気なさげなんですか。もう十七歳なのに」
「じゃあ逆になんでそんなやる気なの?まだこれからもたくさんあるだろう」
「今回絶対受からないとダメなんです。私お父さんがナンバーズで戦場に行って死んじゃって。そこからお母さんと一緒に過ごしてきたんですけど、お母さんは外国人なので戦争が加速するにつれてあたりがどんどん強くなって」
「そんな中私が異例の十三歳でのナンバーズ適正の発現だったのでお母さんを一人にしてしまいました」
だから名前を知らなかったんだ。
「でもチャンスだとも思ったんです。私が戦場で活躍すればお母さんも楽になるかもしれないから」
「だから私今回の試験で合格して絶対ナンバーズにならなければいけないんです」
・・・・・。
あーこれかぁ。
秘策っやつ。
前言撤回。
やっぱり長官、あの人はクズだ。
人の事情を利用して。
でも策士だな。
こんなの聞いて俺が不合格にできないのを知っている。
乗ってやりますよ、長官。
バスは山に着くとすぐに元来た道を帰っていった。
長官がモニターに移される。
「君たちに試されるのは三日間自給自足ができるか、計画を立てられるか。そしてチームワークだ」
「期待しているよ」
俺達はスタートラインに立った。
「それではこれより2066年第二回卒業試験を開始する。」
みんながすごい勢いで山頂を目指して走っていった。
俺らのチームを除いて。
「早くしてください水美さん」
「馬鹿か。第一陣なんかで行ってゴールできるのは罠の位置がわかるエリートナンバーズだけだ。別に速さ勝負をしているわけじゃないんだ。達成条件は三日間以内に山頂にたどり着くこと。今日中に半分くらいまで行ければ上等だ」
「そう、ですか」
俺は十分くらい待ってから
「もうそろそろ第一陣が罠をほとんど発動させたくらいだと思うから行こうか」
「はい」
山の中へ入るとしばらくは罠がなかった。
そこより少し進むと罠が出てきたが足が少し沈むくらいの落とし穴だった。
何か所か罠にはまった痕跡があったが第一陣に感謝せねば。
山の中枢のエリアに差し掛かろうとしたとき顔めがけて横から木刀が飛んできた。
うわこれ当たったら痛いじゃすまないな。
「アンビエンテさんもう少し近くに寄って」
「はい、わかりましたそれと凜花でいいです」
「凜花さん何かが俺たちをつけてきてます」
歩き進めていくと罠が大量にある場所に出た。
しかしそのほとんどは作動していしまっている。
それと地面にはなんかいっぱい人が転がってる。
まあ気にしない。
「皆さん助けなくて大丈夫ですかね」
「え?ここでは凜花さんにとって俺以外全員敵だよ。情けは無用だ」
あ、あそこに川がある。
後で魚を取りに来よう。
耳を澄ますと金属と金属がぶつかる音が聞こえてきた。
すると上から木刀を二本持ったナンバーズの兵士がよく使うとされるヒューマノイドが下りてきた。
ヒューマノイドとは可動域と出力を限界までナンバーズに近づけたロボットのことである。
しかしなんでそんなものがここに。
「ヒューマノイド?!」
思い当たる節がある。
長官、あなたですね。
ヒューマノイドは木刀を一本俺に投げた
「長官フェアな戦が好きなんですね」
左足を前に出し両手で刀を顔の高さまでもっていき少し腰を下ろす。
ヒューマノイドも同じ構えをする。
カサッ。
凜花さんが後ずさりする。
カサッ、カサッ。
カサッ。
一瞬で俺がヒューマノイドの視界から消える。
俺は後ろに回り込み右肩関節を打とうとする。
ヒューマノイドはその汎用性故に精密なパーツ配置が必要となる。
特に関節はパーツが多く脆い。
そこを突く。
ヒューマノイドはこちらを向くことなく右肩の後ろに刀を回し俺の刀を弾く。
クソッ。速さが足りない。
仕方ない。
リミッターを外す。
リミッター―――。
本来人が自分の体を守るために設けている限界。
本来の力の七十パーセント。
一般人の限界。
これを百パーセント以上にもっていくのがナンバーズ。
取り合えず1.5倍の百五パーセントに設定する。
今度は前から行く。
ヒューマノイドの首元の核に刀を差す。
初撃弾かれる。
がしかしリミッターを外したことにより。
反射神経とラグなしで攻撃できる。
ヒューマノイドの攻め。
みぞおちを狙っていると思わせてからの目。
それを顔を上に向けて避ける。
そのまま懐に入り核を突く。
「核損傷。機能停止」
そう言うとヒューマノイドは止まった。
「す、すごい。なんでこれで今まで受からなかったんですか」
「受かるつもりがなかったんだよ」
「もったいないですね」
「さ、そろそろお昼だ。さっき川見つけたからそこで魚捕るぞ。
「はい」
「それとこの木刀一応持っておいて。
「はい」
魚をさばくためのナイフ(ヒューマノイドから奪った)があるのはおおきい。
魚を十五匹捕まえるといったん食べることにした
「どうですか火、起こせそうですか」
「うん」
ぐ~。
おなかが鳴った。
もちろん俺ではない。
凜花さんだ。
彼女は顔を真っ赤にしている。
「お腹すいたね」
「・・・・はい」
「喉乾いたでしょ。はいこれ水」
「ありがとうございます。てこの水飲めるんですか」
「ストーブ(ヒューマノイドから奪った蓄電池)で熱してそのあとろ過したから大丈夫だよ」
「いつの間に」
「あと少しで目標地点だから頑張ろう」
「はい頑張ります」
凜花はご飯を食べてすっかり元気だ。
「じゃあ出発しようか」
「はい」
途中ヒューマノイド三体と会ったが初めの程ではなかった。
やはり長官が仕込んでいたのだろう。
夕方の五時くらいまで進んでちょうどいい川岸を見つけたため野営の準備をした。
目標の半分は達成した。
夕食は昼食のあまりの魚に途中で撮った山菜だ。
ここまで来ればあとは一日かけて今日の半分を行くだけ。
何とかなりそうだ。
ふわ~。
凜花が眠そうなあくびをする。
「私先に寝さしてもらいます。おやすみなさい」
さあ俺も寝なくては。
川で水浴びを済ませ俺も眠りにつく
第一陣エリート四人班
中枢を抜けて最終ラインに差し掛かっていた。
「今日はここまでにして野営しないか」
「いやここまで来たんだこのままいけば俺たちが一番乗りだ」
「そうだぞー今更弱音なんて吐いて―――」
ズドーン!
一人がものすごい速さで木の幹にたたきつけられる。
激しい音を立てながら木の幹が折れる。
「おいしっかりしろ!」
「何か来るぞ警戒態勢」
「何だ、何なんだよ」
「落ち着―――」
ボシュ!
何かが抜けるような音を立ててもう一人が倒れた。
「ここは言った退こう」
「いやこいつらの仇は俺が」
ボキ!
途中ヒューマノイドから奪った木刀が折れそのままこぶしが体にぶつかる。
「ひっ!いやだ俺は」
ズドン!
大砲のような音が鳴り最後の一人も倒れる。
「ナンバーズ候補生四人排除これより監視モードに移行します」
ヒューマノイド?
木刀で防いだからかろうじで意識がある。
みんなに知らせなきゃ。
化け物がいるって。
知らせな――。
初日 八時五十二分 エリート班壊滅
次話 第二話 「特異体質」
二話全修中