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理解されない魔法少女

ミレア・ノクターンは、魔法学校での日々を過ごすうちに、魔法が単なる才能ではなく、理論と工夫によって向上するものだと確信し始めていた。特に彼女が興味を持ったのは、炎の魔法。その制御を極めることで、戦闘だけでなく、生活や産業にも応用できるのではないかと考えた。


放課後の演習室。ミレアは一人、炎を灯し、その性質を観察していた。炎の色、揺らぎ、熱量の変化。授業で習った通り、魔力を込めれば炎は発生する。しかし、それをより効率的に、より強く、より安定して放つにはどうすればいいのか?


「やっぱり、温度と燃焼の仕組みを理解するのが大事…」


ミレアは魔法学の教科書をめくりながら呟く。魔法は感覚で扱うものというのが一般的な認識だったが、彼女はそれを数式や理論で分析するべきだと考えた。

彼女が目をつけたのは「燃焼の段階」。通常の火は、燃料を熱で分解し、可燃性ガスを発生させ、それが酸素と結びつくことで燃え続ける。だが、魔法の炎には燃料がない。では何が燃焼を支えているのか?


「熱変換の効率を上げれば、もっと高温の炎が出せるはず…」


ミレアは実験を重ねた。炎の大きさを一定に保ちつつ、色の変化を観察する。赤、橙、黄色――高温になるほど青や白に近づくことに気づいた。温度を制御すれば、より強力な炎を放てるかもしれない。


「次は、温度と魔力量の関係を数値化できれば…」


彼女は演習室の床に座り込み、ノートに記録をつけた。魔力の消費量、炎の温度、持続時間の関係を整理する。数値で表すことで、理論的に魔法の拡張ができるのではないかと考えた。


翌日の授業では、ミレアの研究が思わぬ形で成果を出すことになる。


「今日は魔法制御の応用。炎の形を一定に保つ訓練をするぞ。」

教師がそう言いながら、実習用の魔道具を取り出した。


生徒たちはそれぞれ魔力を込め、小さな炎を発生させた。しかし、ミレアは自分の魔法を少し改良してみることにした。温度を上げ、燃焼効率を最大化し、魔力消費を最小限に抑える。


「いくよ。」


彼女が手をかざすと、青白い炎が静かに揺らめいた。周囲の生徒が驚いて視線を向ける。


「えっ…なんでそんな色なの!?」キャートが驚きの声を上げた。


「たぶん、温度が高いから。」ミレアは淡々と答える。


教師も目を見張る。「炎を意図的に制御したのか?すごいな。」


「魔力の流し方を工夫すれば、こうなるんです。」


教師は少し考え込みながら言った。「なるほど。では、その方法をみんなに説明してくれ。」



「魔力を無駄にせずに、熱変換の効率を上げることで、炎の温度を上昇させられるんです。たとえば…」


彼女はノートを広げ、炎の魔法の仕組みを説明し始めた。魔力の流れ、熱変換の概念、炎の温度を左右する要素。

彼女の言葉は、これまでの魔法の授業とはまるで異なるものだった。

しかし、周囲の生徒たちは困惑した表情を浮かべていた。


「……え? なに言ってるの?」


「魔法って、ただ魔力を込めて発動するものでしょ?」


「温度って何? 炎は炎じゃないの?」


教師でさえも眉をひそめた。

「つまり、どういうことだ?」


ミレアは説明を続けようとしたが、彼女の言葉は完全に伝わっていないようだった。この世界には、数学や物理学といった概念が発達していない。炎を強くする方法は「より強い意志を込める」「魔力の質を高める」といった抽象的な考え方が主流であり、論理的な分析による強化など誰も考えたことがなかったのだ。


「……もしかして、誰もこういう考え方をしたことがない?」ミレアが言う。




「そんな難しいこと考えなくても、強い魔力を持てばいいだけじゃない?」


「それより、どうやって火を大きくするか実演してくれたほうが早いよ!」


ミレアは少し肩を落としながらも、静かに手をかざした。次の瞬間、青白い炎が揺らめく。生徒たちは驚きの声を上げたが、その原理を説明しようとしても、結局誰も理解できなかった。


「なんかすごいけど……やっぱり、よくわかんないや。」


「ミレアって変わってるね。」



ミレアは最後の一言に少しイラッとしながら説明することを諦めた。

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