1番ゲートの魔法世界
「それにしても驚いたよ~。」
朱音は京平に言った。
「まさか、指導員に乗り気になってくれるなんて」
「才能あるやつが見つかっちゃったからさ。」
「ふふっ、そういうことなら、あの子がどれほどのポテンシャルを秘めているのか確かめてみようかしら。」
朱音は興味深げに微笑み、軽く足を踏み出す。
こうして2人は、ミレアを迎え入れた可憐ギルドの訓練場へと向かっていった。
訓練場の隅にミレアは座っていた。
京平はミレアのところに行き、こっそり炎の結晶を渡した。
結晶は消え、ミレアは無事能力を習得したようだ。
その後、ミレアは訓練に参加したが炎を上手く操作できず、お世辞にも才能があるとは言えなかった。
守谷真奈美は腕を組みながら京平を鋭く見つめた。
「ちょっと、京平。本当にこの子に才能があるの?」
訓練場の片隅で立ち尽くすミレアの姿を見て、守谷真奈美は疑問を抱かざるを得なかった。
「ま、まあ最初はこんなもんだろ。」
京平は肩をすくめ、呑気な態度を崩さなかった。
「この子、基本的な制御もできてないじゃない。」
真奈美はため息をつき、ミレアを見つめた。ミレアは顔を赤くしながら、焦ったように両手を握りしめる。
「ご、ごめんなさい……。」
「謝ることないって。」
京平はミレアの肩を軽く叩きながら、落ち込む彼女を励ました。
「ほら、お前はまだ結晶の力を手に入れたばかりだろ?最初から完璧にできるやつなんていねぇよ。」
京平は小声でミレアに耳打ちした。
(ま、まあ、才能があるのはロボット操縦の方だったんだけど…)
訓練を終え、京平はミレアを1番ゲートに連れて行くことを決めた。
(ここも懐かしいなぁ)
京平はそう思いながら、ミレアを伴い1番ゲートの前へと足を運んだ。
その姿を認めた門番の兵士は、一瞬驚きに目を見開いた後、慌てた様子で姿勢を正した。
「あっ、樋口京平様……!本日はどのようなご用件でしょうか?」
京平の名は、クリスタラーとしての実力と数々の戦果によって広く知れ渡っている。そんな人物が突然現れたことで、兵士は明らかに緊張していた。
「あぁ、ちょっとギルドの訓練に使わせてもらおうと思ってな。」
京平が気軽に答えると、兵士は戸惑いながらも素早く敬礼し、深々と頭を下げた。
「かしこまりました!どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ!」
彼の声には僅かな震えが混じっていたが、それでもしっかりと職務を全うしようとする意志が感じられた。
京平は軽く手を上げて応えながら、ミレアと共にゲートをくぐり抜け、馴染み深い施設の奥へと歩を進めていった。
1番ゲートをくぐり、京平はいつもの道を進んでいく。やがて視界が開け、中央国家へと続く異世界へと到達した。
広がる草原を見て、ミレアは驚くかと思われたが、意外にも落ち着いた様子で辺りを見渡している。
「ここも私の世界みたいになっているんですね。」
淡々とした口調でそう述べたミレアに、京平は少し拍子抜けしたが、それ以上は何も言わず歩みを進めた。
最近、京平は『神の槍』の扱いにさらに熟達してきた。今では乗り物のような形状へと自在に変化させ、空を飛ぶことすら容易い。京平はミレアを乗せると、そのまま中央国家へと向かい、空中から町の様子を見下ろした。
以前とは明らかに様相が異なっていた。かつては貧困に苦しむ人々の姿がそこかしこに見られたが、今ではそんな光景は消え、街全体が活気に満ちている。どうやら、この国は随分と豊かになったらしい。
ひとまず中央政府へ行ってみることにした。知り合いがいるかもしれない。
「えっと、入れないんですか?」
政府機関の建物前、円形広場の中央に立つ京平は、門番らしき人物に足止めをくらっていた。
「当然だ。正当な用件がなければ、誰であろうと通すわけにはいかない。」
門番は毅然とした態度で告げる。
その時だった。
「京平さん!!」
遠くから駆け寄ってくる男がいた。
「あぁ、やっぱり京平さんだ!お久しぶりです!どこへ行ってたんですか?」
男の顔には懐かしさが滲んでいる。彼はかつて京平と共に旧国家の貴族体制を打倒した同志の一人だった。
「さあ、どうぞ中へ。」
男は満面の笑みを浮かべながら手招きし、京平とミレアを政府の建物内へと案内した。
歩きながら、京平は密かに考えていた。この男の名前を思い出せない。そもそも、名前を聞いたことすらあっただろうか……?
すると、男は歩みを止め、深々と頭を下げて改めて自己紹介を始めた。
「京平さんのおかげで、この国は以前とは比べ物にならないほど豊かになりました。本当に感謝しています。」
彼は少し誇らしげに胸を張ると、言葉を続けた。
「実はあの時、私はまだ名前すら持っていなかったんです。しかし、今では政府の官僚として働いています。官僚の中では三番目の地位にあたります。改めまして、カシードと申します。」
京平は軽く頷いた。
「この国の主要機関は、ほとんどが国家転覆時のメンバーによって運営されています。当然、この国のトップも、その時の戦友の一人です。」
カシードの言葉には、国家の変革に携わった者としての自負がにじんでいた。
「頼みがあるんだけど。」
京平が言うと、カシードは身を乗り出し、真剣な表情で続きを待った。
「もちろん!京平さんの頼みなら何でも聞きます!」
カシードの熱量に少し身を引きながら京平は言う。
「この子を魔法学校に入れてほしい。」
京平は隣に立つミレアの肩を軽く叩きながら言った。
「そんなことでしたか。お安い御用です!」
カシードは笑顔を浮かべると、誇らしげに胸を張った。
「せっかくですから、最難関のトップ校に推薦しましょう!」
「いや、別にトップじゃなくてもいいんだけど……」
京平は若干困惑した様子で答えたが、カシードはすでにその気になっており、ミレアを迎え入れる準備に意気込んでいた。




