変化
次に目を覚ましたときは、もう大分体の調子が良くなっていた。隣にはテオ君がいて、心配そうな顔でこちらを覗いている。
「っ!アイリ姉さん!」
「…テオ君、来てくれてありがとう。」
「ごめんなさい。僕のせいで…」
「テオ君のせい?何が、かしら。」
「僕がペンダントが壊れたなんて言ったからこんなことに。」
「それは違うわよ。テオ君は何も悪くないじゃない。大切なものを壊されて…でも、直せて良かったわ。」
「…ありがとうございます。」
「そうだ、ご飯は食べた?」
「はい。頂けるようになりました…」
「良かったわ。」
それから2日間寝込んだ後、すっかり元気になった。実は、お父様も夜中に様子を見に何度か来てくれたらしい。
2日後の朝。いつものように食事をする部屋へ行くとそこには父、母、そしてテオドールの姿があった。
「テオ君!?」
「アイリ、おはよう。元気になったようで何よりだ。」
「お父様、ありがとうございます。」
「おはよう。」
「お、おはようございます。」
「おはようございます!」
母の心境が変わった理由は分からないが、一緒にテーブルを囲むことができているのが堪らなく嬉しかった。その日の食事はいつもより美味しく感じた。
食事の後、テオ君に呼び止められて、二人は中庭へと向かった。
「ありがとうございました。」
テオくんは深々とお辞儀をする。
「?えっと…何のことかしら?」
「ローゼン婦人のことです。」
「え?」
「その、昨日、ローゼン婦人が僕の部屋に来て下さって、家族とは認められないけれど、同居人としてならって言ってくださったんです。アイリ姉さんが働きかけてくれたそうで。」
「私、そんなに何かしたかしら……?でも一緒に食事ができて良かったわ!」
私はにっこりと微笑んだ。
因みに、後で知ったことだが。
ペンダントを壊した侍女たちはクビになり、食事を与えなかった侍女には謹慎処分が下ったとか。