心配
寒い。
まるで雪山に放り出されたかのようにゾクゾクと冷え込む。かと思えば体が熱くなって頭がガンガンする。
私は重い目蓋を開けた。
そこは自室のベッドの上だった。
メイドのミリーが頭を冷やすタオルを交換してくれる。
「お嬢様、気がつきましたか?」
「あれ?私…」
「中庭で熱が出てしまって、一緒にいたテオドール様があわてて近くの衛兵に知らせてくれたんです。まったく、夜中にお嬢様は…」
私、あの後魔力切れで倒れちゃったんだ。まさか熱まで出てしまうなんて…
「奥さまに知らせてきますね。」
暫くして、お母様が部屋に入ってくる。
「あぁ、アイリ、大丈夫なの?まったく、熱なんか出して可愛そうに。」
「お母様、心配をかけてしまってごめんなさい。来てくださってありがとうございます。」
「良いこと?あの子にはもう関わったら駄目よ。あんな汚わらしい子なんてほっておいていいんだから。」
「…お母様。」
「なぁに?」
「ごめんなさい。私は、ほっておけません。内心、他人の旦那に手を出した妾は…どうかと思いますが、その子どもには何の罪もないと思うのです。なのに妾の子というだけであちこちから非難を受けます。一人で戦うには彼はまだ幼いのです。」
「……あら。」
「私はテオ君を『妾の子』としてではなく『テオドール』として見たいんです。」
「………。そうね。あなたは、優しいのね。大分疲れが貯まっているようだから、ゆっくり休みなさい。」
「はい、お母様。」
頭を優しく撫でると部屋を後にした。