力になりたい
テオ君が部屋に戻って暫く後。
何だか眠れないなぁ。ベッドに入ったものの胸がザワザワとして、先程からずっと寝返りをうっている。
少し夜風にでも当たろうかな…
外に出て、中庭を歩いているとベンチに誰かが腰をおろしているのが見えた。
あれ?テオ君…?眠れないのかしら。
近くに行くとテオ君がくしゃくしゃになった顔でこちらを振り向いた。今にも潰れてしまいそうな、そんな表情だった。
「テオくん?どうしたの??」
テオ君はあわてて涙を拭きとる。
「いえ、なんでもないんです。すみません、さっきからこんなところをお見せして。」
彼は無理やり笑顔をつくる。その笑顔になんとも複雑な気持ちを覚えた。今までどれだけの悲しみを一人で我慢して来たのだろうか。
私は隣に座った。
「いやいや、何にもなくはないでしょう?私で良ければ話を聞くよ。」
「でも…これ以上ご迷惑は。」
「迷惑なんかじゃないわ。でも言いたくなければ無理にとは言わないけれど。」
ぐるるるる…
テオ君のお腹がなった。
もしや…
「テオ君、夕飯は?」
「………」
テオ君はうつむいた。
「…食べてないです。」
「そうだったの?…自室で食べたんじゃ…」
「食べ物を頂けないのは、よくあることなのでまだ良いんです。でも…」
手の中に壊れたペンダントが握られていた。
「これ、母さんの形見なんです。」
お茶をした後、自室に戻ると部屋が荒らされていて、壊れたペンダントが床に落ちていた。
誰かに踏み潰されたような壊れかたをしていて…
「屋敷の皆さんに歓迎されていないのは分かってるんですけど、でも、これは、これだけはとても大切なものだったから…」
テオくんは涙を堪えながら言葉を紡ぐ。
「ごめんなさい、こんなところお見せして。壊れちゃったものは仕方ないですよね。持ち歩いていなかった自分も悪いですし。」
そして再び無理やり笑顔を浮かべた。