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理由

ある日の休日。

アイリは街にあるカフェのテラス席で飲み物を飲んでいた。

ここはこの時間帯、人も少なくお忍びにはもってこいだ。


「でさぁ、土下座とかしてんの。」

「え、ウケる〜。プライドとかないのって感じ。」


近くの席に座っている人の声が聞こえてくる。

何だか嫌な感じの人だ。早いところ退散しようとケーキを頬張ろうとした時。


「本当、あいつの存在今まで忘れてたよ。そう言えば『テオドール』とかいうボロ雑巾いたなー、って感じ。」


テオドール!?どういう事?

アイリは食べる手を止めた。


「で、そいつさ、まだ戸籍動かしてなかったんだけど。ローゼン侯爵家の娘さんに惚れちゃったらしくて。婚約の申込み届を出してほしいって家に頭下げに来るんだよ。」

「うわー、調子乗ってるw」

「自分の立場考えろって感じだよな。」


テオドールが、リグルド侯爵家に足を運んでる…?

まさか、それでいつもボロボロになって…


「俺の名前で父さんが出してたからそれでも見たんじゃね?つーか、『リグルド』の性を名乗るのやめてくれねぇかな。」

「っていうかぶっちゃけ『ローゼン侯爵家』って優良株だよな。『侯爵家』だし、娘さん可愛いらしいじゃん。」

「あいつにはもったいねぇって。確かにリグルド侯爵家はふさわしいけど、あいつ平民だしよ。」

「それ。娘さんもあんなやつ普通に嫌だろ。ちょっと優しくされただけで調子に乗りやがって。」


アイリは拳を握る。

付いてきていた侍女も心配そうに覗き込む。

護衛騎士に至っては「ご命令ください。殴り込んできます」なんて言っている。

私もできることなら殴り込みたい気持ちだ。


やっぱり、席を外そう。

こんなところでケーキを食べても、美味しく食べられない。

テオくんは『待ってて』って言ってたし。


「だから最近もう一度教育してやってるんだよね。この前なんて、袋に詰めてサッカーボールにしてやったよ。それでも『婚約の申込み届けを書いてくれ』ってやめなくて。」

「うわー、気持ち悪っ。」


ガタッと立つと気がついたら飲んでいた飲み物を話している人に頭からかけていた。

やっちまった………!

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