婚約候補
それからしばらくたったある日。
私はお父様に呼ばれていた。
「アイリ。そろそろ婚約者を決める時期だろう。いくつか候補が上がっているから目を通しておきなさい。」
つい最近、お兄様が結婚した。
お相手は他国の姫君で、お兄様は他国に行ってしまったのだ。
つまり、ローゼン侯爵家はアイリが継ぐ事になってしまった。
というわけで、侯爵家にふさわしい人物を選ばなくてはならないのだ。
眺めながらアイリはため息を付いた。
申し込みをしてきた同世代の人のプロフィールが書き綴られている。もし選ばれなかった場合、『次』を探さなければならないので返事は早く返さなければならない。
「アイリ姉さん、お昼はピクニックにしよう!」
急にテオくんが入ってきてびっくりする。
なんとなくリストを急いで机の中にしまった。
「うん、いいね!ピクニック。」
するとテオくんが部屋の中に入ってくる。
「ねぇ、何を隠したの?」
「え?いや、なんでもないよ。」
「さっきお義父様と会ってたよね?その事に関係してるんじゃないの?…まさかとは思うけど、婚約の申し込みとかじゃないでしょうね??」
す、鋭い。
「え、えっと………。」
すると、ズイッと顔を近付けてくる。
ち、近い…。
最近では、漫画のテオくんに顔が似てきたのだ。つまり、ドタイプの顔である。
「ローゼン侯爵家を継ぐのに、他の家紋から人を迎えないといけないらしくて。も、申し込んでくれた人がたくさんいて。」
渋々、プロフィールリストの一覧を机の上に出す。
パラパラと見ると「邪魔だな。名前と顔は覚えた。」とか小声で言っている。
漫画の主人公はこういう声、聞き逃しちゃうんだろうけど、アイリは思いっきり聞いてしまった。
何だか、次の日から彼らの名前が社交界から消える気がして不安になる。
「なぜこいつの名前があるんだ?」
ページをめくる手が止まる。
こいつ!?
なんか、やっぱりキャラ変わり過ぎじゃない!?
それに、『こいつ』呼ばわりする人物が気になってチラッと見ると「アズファール・リグルド」の名があった。
リグルド、と言うことはリグルド侯爵の息子なのだろう。つまり、テオくんの義理の兄弟。
「アイリ姉さん、僕行く所ができちゃった。お昼、ちょっと一緒に食べられないかも。」
「え?ちょっと、行くところって?」
テオくんは何も言わずに部屋を出ていってしまった。




