推しが来ました
「アイリ、この子を我が家で育てることになった。今日から君の弟だ。」
50畳くらいはありそうな広い部屋に家族が集まり、アイリの父親が少年を紹介した。それはアイリが12歳の時だった。ローゼン侯爵家に10歳のわけあり少年が1人引き取られることになったのだ。
「よ、よろしくお願いします。」
少年は少し怯えた表情で頭を深々と下げた。
「まぁ!今までリグルド侯爵の所にいたんでしょ?どうしてウチで育てなきゃならないのよ。こんな、妾とできた子なんか。いくら王族の血を引いていたって、あんまりだわ!」
母親は、頭を抱えて近くのソファーに腰かけた。
あからさまに少年は歓迎されていなかった。
「………す、すみません。」
バチンッと母親が手に持っていた扇子を机に叩きつける。
「謝って済む問題じゃないわよ。私はあなたを家族とは認めないわ」
現国王の甥が手を出した女との間に出来た子供。それが彼、テオドールだった。
そう、テオドール!!!
テオドールだよ!!??
何でみんなそんな嫌な顔するのさ!
すごくいい子なんだよ!?私の推しだよ!?
私は実は転生者だ。そしてここは前世で大好きだった漫画の世界。ちなみにアイリ・ローゼンはこの物語の超モブキャラ!出てくるのはテオドールの過去編で、枠は3コマくらい……グスン。しかもテオドールをいじめていた最も許せないキャラのうちの一人。神様、何で!?
この街並み、聞き覚えのある地名や国王の名前…明らかにあの漫画の世界だった。気がついた時はとても複雑な気持ちになったっけ。
「アイリよ。よろしくね。」
私は!超歓迎よテオくん!心のなかで思いっきり叫ぶ。
「テオドールです、どうぞよろしくお願いいたします。」
やっと自己紹介をした彼の顔は暗かった。
お読み頂き、ありがとうございます。
実はこんな感じの話を書きたい!という構成はあったものの、6年近く温めていた物語です。(こういうことが本当に多くて…)
土日の12:00に2話ずつ更新、2024年5月末完結予定です。最後までお楽しみ頂けますと幸いです。