第93話 モーネの町
王都を離れる日がついに来た。
朝、集合場所の北門でブルーナさんを待っている。
どうやら来たみたいだ。
「張り切っているな少年少女。ルーベン以外は初めてか。私が第5王国騎士団、隊長ブルーナだ。様付けで呼ぶのは辞めてくれ、そういうのは肩が凝るからな。」
見た目は美人のお姉さんって感じなのだが、隊長までのぼりつめる、腕も確かなものだ。
お互い簡単に自己紹介をする。
「では言っていた通り、モーネの町まで飛んで行きますよ。朝なんで目立ちます。今回はいつもより高く飛びますからね。皆んなに見られて騒がれても面倒です。」
「やったぁ〜。高くって雲の上?」
「嫌だ嫌だ。いつも通りでいい。」
アモとナタリーは真逆の反応を見せている。
「石槍×4。」
「さて…石槍は4つです。誰かが2人乗りになるんですが、ナタリー。僕と一緒に乗りましょう。2人なら少しは怖く無くなるでしょう。それとも暴れながら乗るアモと一緒がいいですか?」
「ルーベンがいい。ぜひお願いしたい。」
「ふふふ。じゃぁブルーナさんも乗って下さい。」
「おう。しかしルーベンの魔力は底がしれんな。実は少し楽しみにしていたのだよ。空の旅を。皆んなには内緒だぞ。」
(危ない。近くで話されると…ドキッとしてしまう。)
「じゃぁ行きますよ。しっかり捕まってくださいね。ではしゅっぱーーつ。」
王都の北門を出た所から飛び立ったルーベン達。
みるみる王都の街並みが小さくなっていく。
「ほぉ。良い眺めだが、私でもこれは少し怖いな。」
向こう側に1人だけ、はしゃいでいる少女がいます。
「ルーベン。高いね。王城があんなに小さくなっちゃった。あれは学園だね。」
「アモは凄いな。あまり動くなよ。落ちたら大変だからな。」
「はぁい。」
目指すは、ノアの故郷、モーネの町。
何もなければ夜には着くだろう。
(このメンバーで無事に王都に戻って来れますように。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜モーネの町〜
アスタリア王国にある町の中で最も北に位置する。
人口は2000人程でドライカの街と変わりないが、町の広さはモーネの町の方が広い。
自然にも恵まれて、農業も盛んな地域。
屈強なモーネ騎士団が町を守る。
そしてモーネの町から更に北に進むとガンダリアン魔国領との国境が見えてくる。
そこの砦には常時、騎士が常駐しているのだが3カ国で結んだ平和条約のおかげで100年間争いが起きていない為、今では砦でを守るよりも街道整備や魔物退治に動いている。
そして日が変わる頃。
ルーベン達はモーネの町に到着した。
まずはノアの案内で宿屋に向かう。
無事に部屋を確保して、皆んなで夕食も食べ終える。
ルーベンはノアと同じ部屋。
モーネの町に着いてから、どこか元気がなさそうだ。
「なぁルーベン。少し外に出ていいか?父と母の墓参りに行きたくてな。明日はすぐに出発するのだろ?」
「あぁ。ノア、僕も着いていっていいか?」
日も変わり、皆んな寝静まった時間。
モーネの町をランプ片手に歩く2人。
一言も喋る事なく目的地に着いた。
「ここが僕達が住んでいた家の跡地だ。」
ノアはそう言って、更地になった場所を見ていた。
建物がなくなっても、昔を思い出しているのだろう。
そんなノアを見て胸が締め付けられた。
そこから外れにある、墓地へ向かうと。
ノアの父と母のお墓があった。
自然と涙が流れる。
「父さん。母さん。王都に行って仲間が出来たんだ。皆んな強くて、優しくて。今いるのがルーベンって言って僕達のリーダー的存在なんだよ。次は必ずニアも連れてくるから。安心して待ってて。」
途中に咲いていた1つの花を置きながら、ノアはそう言った。
「ノア。絶対にニアを取り戻そう。そして仇を討つ。」
「あぁ。そうだな。」
2人は決心した表情で墓地を後にした。