第91話 1ヶ月の成果
放課後の教室に4名の生徒が集まる。
ルーベン•アートルド
アモ•レーベン
ナタリー•テイラー
ノア•ブラウン
「説明した通りだ。ガンダリアン魔国領に潜入する事に決まった。今回は第5王国騎士団隊長ブルーナさんとの共同作戦だ。決行は2週間後。そこで証拠をみつける!!出来れば…魔物を操る魔道具、魔物化する種、弟ニア君の情報を手に入れたい。力を貸して欲しい。」
「「「当たり前!!」」」
「ありがとう。それまでは各自準備をしておいてくれ。ノアの故郷、モーネの町までは石槍で飛んで行こうと思う。これで移動時間を短縮出来るが、念の為、学園には1ヶ月間休みを貰えた。そこまではかからないと思うけど、長い任務になる。説明は以上だ。」
後は実際に行ってみないと分からない部分が多い。
モーネの町からガンダリアン魔国領の国境までは馬車に乗って2日。そして国境を少し越えた所から街道整備に加わる。そこから5日もあれば完成するだろうが、そんな事はしない。証拠が見つかるまで引き延ばす作戦だ。
ガンダリアン魔国領にあるバイロン町。
アスタリア王国と唯一、交易している町。
魔国領で作れない食べ物や日用品などを主に商人の人が運んでいる。
今まで大きな問題もなく交易しているらしく、バイロン町に住む魔族の人達は比較的、人族と話をしてくれるそうだ。
そこに付け入るのは心が痛むが、戦争になったらバイロン町の住人達にも危害が及ぶかもしれない。仕方ないと割り切ろう。
それに、あと2週間しかない。
それまでにやる事は沢山ある。
1つ1つやっていくとするか。
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潜入作戦より少し前。
ルーベン達が王都に来て1ヶ月が経った。
南門近くの宿屋。
「久しぶり。オリヴァー!!」
「元気してた?エミリー。」
「体は良くなったみたいだな。」
そうルーベン達3人は、1ヶ月後に会う約束をしていたオリヴァーとエミリーに会いに来たのだ。
裏町で生活していた頃と違い、ご飯を毎日食べれている為か体つきも変わってきている。
エミリーも元気になって本当に良かった。
「本当に感謝する。ルーベン達に会えなかったら、エミリーも無事じゃなかった。ありがとう。」
「いいんだよ。それより1ヶ月間の約束は守ってくれたのか?」
ルーベンはオリヴァーに1ヶ月間、強くなる為にある宿題を出した。
上段から一直線に振り下ろす『真向斬り』と呼ばれる、剣術の1つの型だ。それを1ヶ月間、毎日振れなくなるまで続ける事を約束させていた。
なぜ、そのような事を言ったのか…それはオリヴァーに剣の才能があったから、剣術の適正が Aもある。だから素振りをするように言ったのだ。
「当たり前だ。1ヶ月の成果、見てもらえるか?」
「あぁ。」
そう言って、外に移動した。
手の皮が剥けているのか、包帯が巻いてある。
(それもそうか…。ひと月前は剣を握った事もなかったんだ。それから毎日振り続けたんだもんな。素振りを見たらアモに回復魔法をお願いしよう。)
「じゃぁ皆んな、見ててくれ。」
スーッ。
集中している。
(しかし…良い顔つきになったな。)
オリヴァーは剣を頭上に高く振り上げた『上段の構え』をとる。
(1度しか見せていないのに、型が出来ている。)
そして敵を想定している事が分かる。脳天から金的までを繋いだ一直線を寸分の狂いもなく、振り下ろした。
ヒュッ!!!
『……お見事。力の伝え方も良い。腕だけで振ったり、腰が入っていないと剣先がブレる。ダメな素振りは音でも分かります。良い太刀筋でした。予想以上です。』
それ程の型だった。
やはりオリヴァーは剣の才能がある。
(認めたくないけど、僕なんかすぐに抜かれるだろうな。次は何の型を教えようか。)
「よっしゃぁ〜。この音にするのに、かなり時間かかったんだよ。良かったぁ。成功して。」
皆んなも喜んでいる。
エミリーなんかオリヴァーに抱きついてる。
(本当に仲の良い兄妹なんだな。僕も可愛い妹でもいれば良かったのに。)
「合格です。時間もありませんし、まずはオリヴァーの冒険者の登録に行きますよ。ちょうどすぐそこに冒険者ギルドがありますから。」
「そうだと思った。もう教えてくれてもいいんじゃない?オリヴァーとエミリーって、そんなに凄い才能なの?」
「私も聞きたかったんだ。今の素振りを見ても凄い事が分かるぞ。1ヶ月であれだからな。」
アモとナタリーがしつこく聞いてくる。
「分かった。分かった。落ち着け。今言うから。それよりオリヴァーとエミリーも一緒に聞いてくれ。自分達の適正の事だ。知っていて損はない。」
それから、オリヴァーとエミリーの鑑定の結果を説明した。なんで分かるのかは、闇魔法って事にしてある。
「だから、オレに素振りをしろって言ったんだな。やる気がみなぎってきた。」
「私も言われた通り、魔力の操作頑張ってるもん。」
Aの適正持ちは学園でも一部。
それにしても、オリヴァーは1ヶ月で剣のレベルがEからDに上がっていた。
(まて、まて。あとひとつで同じレベルじゃないか。師匠気取りしてる場合じゃないな。)
「ねぇ。ルーベン。」
「なんだ?アモ。」
「エミリーちゃんは火と風と水の適正なんでしょ?私も火と風の適正あるし。魔力操作だけじゃ成長しないよね?」
「まぁ。そうだな。」
「私が教えてみてもいい?」
「いいんじゃないか。アモは教えるのも上手だし。」
「分かった。」
「エミリー。私がこれから魔法を教えてあげる。アモ師匠と呼びなさい。」
「いいの?やったぁ。アモ姉が師匠だ。アモ師匠!!」
それを横目で見ながらナタリーに話しかけた。
「なぁ。あれって……。」
「うん。ただ師匠と呼ばれたかったんじゃないか?」
「だよな。妹が欲しいとも言ってたもんな。」
「まぁいいじゃないか。2人共嬉しそうだぞ。」
「だな。」
「おーい。そろそろ冒険者ギルドに行くぞ!!」
「「「はぁーい。」」」
こうして冒険者ギルドに向かった。
登録には時間はかからないし、良い依頼があれば受けてみようか。