第88話 ノア•ブラウン
鍛冶屋ドランにオリハルコンの加工を依頼したその日の夜、ルーベンはある人物を学園の訓練場に呼び出していた。
「来たな、『ノア』!!剣は持ってきただろうな?」
「あぁ。急にどうした?夜の訓練か?」
「違う。正直に言うぞ。僕と本気で勝負しろ。僕を敵の魔族だと思って全力でかかってこい。」
ルーベンはそう言い放ち自身の剣を抜く。
いつになく本気の目だ。
この時ノアは迷っていた。ルーベンに全力で剣を向ける事など出来るはずがない。何か意図があるのかと。
「抜かないなら。こっちから行くぞ。」
考えていると、ルーベンが攻撃してきた。
「石弾×20!!」
急ぎノアは剣を抜いた。
迫り来る全力の石弾。当たったらタダでは済まない威力。
なんとか防ぐ事に成功するが、その隙にルーベンが死角から拳を突き出してきた。
「グハァ!!」
先程食べた、夕食を少し吐き出す。
流石のノアも怒りを覚えた。
「ハァハァ。なぜこんな事をする?意味があるんだろ?説明したらどうだ?それとも僕が3人と比べて弱いから…足手まといだからメンバーから外そうとしてるのか?はっきり言えよ!!」
「いいから、かかってこい。そういうウジウジしてる所にムカついたんだ。弱くて当たり前だ、ノアがのんびり過ごしていた時、僕はすでに魔族と戦ってきた。考えるのを辞めてかかってこい。このままなら死ぬぞ?」
「剣術(中)。水盾。」
ノアは剣術のスキル。そして水盾を自身の周りに1つ発動させる。
これがノアが編み出した戦法。
攻撃的なノアの剣術に、防御には水盾を使い相手の攻撃を防ぐ。
「やっと本気になったか。石槍×4!!」
ルーベンは石槍を4つ発動し、ノアと同じ様に自身の周りに浮かべて操作する。これもノアの戦法に似ているが、石槍は攻撃にも防御にも使え、数も精度もルーベンの方が上。
勝負するまでもなく結果は分かりきっている。
その光景を見たノアは戦意を失ったかように構えを解いた。
「なんだ。相手が強いから、戦う事もせず諦めるか。それで弟が救えるとでも思っているのか?」
「1人で…弱くて悩んでいるのに。それでも、どうにかしたくて努力をしているのに、何がしたいんだ?ルーベン!!僕が必要ないなら、はっきり言ってくれ。」
「それだよ。なんで1人で全てをやろうとする。僕達は仲間だろ?それがノアの悪い所だ。それに誰もノアが弱いなんて思っていない。悩みがあるなら1人で抱え込むな、相談しろ。それは弱さでもなんでもない、人は助け合う事が出来るから強いんだ。ノアは伸びる…きっと将来とんでもない剣士になる。」
『闇魔法•闇纏、純黒の鎧、純黒の剣。』
ルーベンはノアにだけ闇魔法をかけた。
『これは……?』
「あぁ。初めてノアに使ったな。これが説明していた僕の闇魔法だ。純粋な力が足りないなら僕達がサポートする、だからノアも自身の力で僕達をサポートしてくれ。さぁ勝負の続きだ。」
そこからノアは闇魔法を纏いながら、ルーベンと戦った。
石槍を簡単に真っ二つにし、土壁も一撃で切り裂いた。
残るはルーベンとの剣術対決。
キン、カンッ、キンッ!!
神の目でなんとか防ぐも……
ルーベンの手から剣が飛ばされる。
突きつけられた剣先。
「僕の負けだ。ノアの剣術には敵わないよ。」
「…………。」
無言のノア。
「もう1度言う。1人で考え込むな。僕達がいる…僕もそうだったんだ、1人で考え込んで、悩んで、悩んで、解決しなくて……それをアモが救ってくれた。ナタリーもだ。だから1人で全部やろうとするな。仲間を信じて、頼って、守る。それは弱さじゃない。一緒に強くなろう。僕も弱い…だから剣術を教えてくれ。」
「うん……うん。」
「そして弟のニア君を一緒に救うんだ。僕達で。」
「うん…ごめん。ルーベン。皆んなを信じてなかった。1人で抱え込んでいた。ごめん。」
良かった。これで大丈夫だろう。
これなら背中を任せても大丈夫そうだ。
ノアはきっと強くなる。
こうしてノアが本当の仲間になった。
それから、ノアは実力をドンドン伸ばしていくのだが、ルーベンは驚く事はなかったという。
それが、まるで当たり前の事の様に。




