第87話 鍛冶屋ドラン
学園が終わると、ルーベンは1人王都にある鍛冶屋に向かっていた。
「ここか。『鍛冶屋ドラン』。数々の称号を持つ剣士達に剣を打ってきた。王国でも有名な鍛治師ドランのお店。」
鍛冶屋ドランは南区にある。
その中でも1番端にあるのだが、先程からカンッカンッと剣を打つ特有の音が聞こえてくる。
「なんだか懐かしいなぁ。この音。ドライカの鍛冶屋を思い出すよ。」
物作りも好きなルーベンにとっては心地よい響き。
ずっと聞いていられるが、今日はそんな事をしにきた訳ではない。とりあえず店の中に入ると、ズラリと剣が並んでいた。良い剣と悪い剣の区別ぐらいは分かるルーベンだが、並んである物はどれも一級品だと一目で分かる。
「これは、期待が持てそうだ。すいません。ドランさんは居ますか?剣聖様の紹介で来ました。」
お弟子さんに紹介状を渡してドランさんを呼んで貰う。
数分後、ドランさんと思わしき人が奥から出てきた。
ガタイが良く、どこか頑固そうな雰囲気。
「ドランだ。アーサーからの紹介状は読んだ。まずは見せてもらおうか『オリハルコン』。あと今日はもう店閉めるぞ。こんな伝説の鉱物を他人に見られちゃまずいからな。」
そう言って、お弟子さんが店を閉めてドランさんと2人きりになる。
そしてルーベンはオリハルコンをカウンターの上に置き、包みを外す。
黄金に輝くオリハルコン。
包みを外した瞬間、ドランは目を見開く。
「これが……。オリハルコン…。」
職人の目になった。
ルーベンがいる事も忘れてオリハルコンを細かく見たり、叩いたりする事、数分。
「時間はかかるが。いいぜ。打ってやる最高の剣を。」
ニヤリと笑ってドランは答えたのであった。
「ありがとうございます。自己紹介がまだでした。ルーベン•アートルドと言います。剣聖アーサー様から紹介させて頂きました。」
「アートルド?まさかロキの子供か?少し面影がある。」
なんと父ロキの事も知っていた。なんでも父が王国騎士団に入隊してる時から、剣を打っていたらしい。
「じゃぁ父上の愛剣は、ドランさんが打ったのですね。王国騎士の頃から使っていると言ってましたし、今も大事に使っていますよ。」
「ハハハッ。まだ使ってやがるのか。嬉しい事だ。まさかロキの子供に剣を打つ事になるとはな。さっきは興奮して打ってやると言ったが、剣の大きさはどうするんだ?まさか子供用をオリハルコンで作る訳ではあるまい。身体に合わせて調整しながら作るのなら、ルーベンが大人になってから作った方が良いと思うのだが。」
「大人用の平均的な剣を作ってもらいたいです。その方が誰でも使えますし。ちなみにどのぐらい時間がかかりますか?」
「そうだな……色々調べたいし、何よりも硬度が高い…加工にも時間がかかるからな。正直…1年は欲しいな。最高の剣を作りたい。」
「分かりました。お願いします。そしたら代金はどのぐらいになりますか?今少し手持ちがありますが、足りない分は1年の間に貯めておきます。」
「そうだな。素材はあるからな…加工費12ヶ月で金貨120枚でいい。」
「えっ?いくらなんでも安すぎませんか?1月金貨10枚の計算になります。ドランさんの腕なら金貨30枚はかかりますよ。」
「いいんだよ。ロキの子供で、こんな良い素材をまかせてくれるんだ。その分を安くしとく。それにそろそろ俺も歳だしな……店の事は、コイツに任せようと思ってたんだ。おいゴラン!!」
ドランさんが呼んだのは、先程のお弟子さん。
少し似ていると思ったけど、息子さんでもあった。
話を聞くと、店に並んでいる剣はほとんど息子のゴランさんが打った物らしく、最近ドランさんは気に入った人の剣しか打っていないらしい。
そして本格的に店の事を任せようと思っていた所に、オリハルコンの依頼が舞い込んだ。オリハルコンに集中すると他の剣は作れない、だから丁度良かったと言って貰えた。
確かにオリハルコンの加工中は他の剣を作れなくなる。その事に考えが至らなかったルーベンは頭を下げた。
「すみませんでした。考えが至らず。」
「いいんですよ。親父は剣を打つのが大好きなんです。あの目を見て下さい。オリハルコンを見て子供の様にキラキラした目をしている。すぐに加工に取り掛かりたくてウズウズしてますよ。そんな伝説の素材を持って依頼をしてくれた。むしろ礼を言わせて下さい。ありがとうございます。親父に任せてくれて。」
ゴランさんがそう言ってくれた。
なんて良い家族なんだろう。息子でもあり、弟子でもある。その2人の関係を見て、父ロキを思い出す。
その後は、剣の大まかな形を決めて、手持ちにあった金貨100枚を支払った。子供が持つ額ではないので驚かれたが、ルーベンは一言言い放つ。
「「「僕は伝説の街道整備士ですから。」」」
そう言って、鍛冶屋ドランを後にする。
「1年後が楽しみだ。素材が余ったら他の武器も作って貰える約束も出来たし。剣聖アーサー様にも感謝だな。」
ドランさんが作った最高の剣に負けないような剣士にならなくては、そう決心するルーベンであった。




