第79話 入学式
僕は今…600人の生徒の前に立っています。
そう新入生代表の挨拶です。
毎年新入生のトップが務める。
無難な言葉で終わらせるのは、勿体無い。ニコッ。
「ねぇ。ねぇ。ルーベンの顔見てよ。」
「そうね。あの顔を何かやる顔だわ。」
ナタリーとアモが小さな声で
壇上に立つルーベンを見てそう言った。
「新入生代表の挨拶。」
「新入生代表ルーベン•アートルド。」
『はい。』
『新入生を代表してご挨拶申し上げます。春の訪れを感じるこの良き日に、歴史と伝統のあるテオドール学園に入学できることを心より嬉しく思います。私達はそれぞれが大きな期待を抱き、夢と希望を持って今、新たなスタートラインに立ちました。』
(普通すぎて逆に寒気が…。)(私も…。)
『そして、ここに立つ事が出来たから言える事もあります。秋に行われるテオドール学園の武闘大会。それの個人戦並び団体戦を僕達1学年が優勝する事を宣言します。』
ガヤガヤガヤガヤ…。
(何言ってんのよ。あのバカは…。)
(おぉー。カッコいいな。)
「何言ってんだ。新入生の癖に!!上級生を舐めるのもいい加減にしろよ!!」
1人の生徒がたまらず声を上げた。
「舐めてませんよ。僕は出来る事しか言いません。」
ガヤガヤガヤガヤ…。
そこでウィリアム校長が入って来た。
入学式の前に少し話をしたからルーベンは知っている。
「ハハハッ。面白いな。いいじゃねぇの。出来る出来ないは別として目標を口に出すのは自由だ。テオドール学園の歴史上新入生が優勝した事は1度もないがな。」
(ウィリアム校長先生か、願ってもない好機。)
「優勝したら学園が叶えられる範囲で1つだけ願いを聞いてくれるとありましたが?」
「あぁ。その通りだ。普通なら卒業後の進路だな。優勝者のほとんどの者が希望する就職先の内定を望む。珍しい願いだと剣聖との稽古をお願いした者もいたな。ルーベン君は優勝して何を望むつもりかな?」
(これを聞いて欲しいんだろ?面白そうだから乗ってやるよ。しかし本当に8歳か?)
「学園の膿を吐き出して貰います。テオドール学園は平民だろうが実力のある者なら合格出来ると聞いておりましたが、試験を受けてみて、それは違いました。試験官の不正行為、それを知っていて無視する教員。あの様子では毎年行われているのでしょう。相当なお金を貰ってね。それに…合格していた者が落ち、落ちている者が合格する。自分が前者の立場ならどう思いますか?だから、そういった事が今後起こらないよう、学園に動いて貰いたいですね。それが望みです。」
(とんでもない事を要求して来たな。そんな話は知らんぞ。でも、だいたい犯人は予想がつくが。)
「ほう。ルーベン君の言った事が本当なら大問題だな。確かに今回の試験で不正が起きたと報告を受けたが厳正に対処したと聞いているよ……。正直に話すと、私は名ばかりの校長でね。そこまで学園の内情は詳しくない。実際こういった行事にしか顔は出さないし、他の時間は魔法の研究で忙しくてね。だから学園の運営は他の者がやっている。それでだ…もしルーベン君が優勝したとして、その望みを言ったとしよう。それで不正の証拠もなく、その要求を叶えるのは難しいと思うが?」
「そこは大丈夫です。武闘大会までに不正の証拠と、それに関わる者達を調べておきますから。これだけは学園には任せられません。どうせ何もなかったと言われて終わりでしょうし。ひとつ心配する事があるとすれば、証拠の口止めとして、誰かが脅されたり、最悪の場合は消される事の心配ですかね。」
「ハハハッ。本当に面白い子供だ。いいだろう。もしそんな事が起きるのであれば、この『水王ウィリアム』の名にかけて、その者を私の魔法で対処すると約束しよう。」
ザワザワザワザワ…。
「死海のウィリアム……。」
ウィリアムは、どこからか聞こえたその言葉に反応する。
「静かにしろ!!それではルーベン君が優勝し、証拠も提出できるなら、その者達に今までの罪を償ってもらう。そして今後、試験のやり方も不正が起きない形に変更する。これでいいか?」
「はい。ありがとうございます。」
「では、頑張れよ。」
一言そう言ってウィリアムは戻って行った。
誰も予想してない。
波乱の入学式。
悪い風習は誰かが動かないと変わらない。
何十人、何百人の人が涙を流しただろう。
真面目にやっている者が馬鹿を見る。
そんな事はあってはならない。
だからルーベンは声を上げた。
ここで終わりにしようと。
しかし…流石だ。
『水王ウィリアム』。
時間があれば魔法を教えて貰いたい。
名前 ウィリアム•ウォーカー
種族 人族 51歳
状態 ー
武器 剣(C) D
魔法 水(S) S
風(B) B
魔力量 486/486
スキル 水質変化 精霊魔術(水) 魔術(大)
魔力障壁 魔力感知
称号 水王




