第70話 上層
ルーベン達はディアマンテ鉱山の中層に到着していた。
「よし。目標の場所まで来れたし…今日はここまでにしよう。ゆっくり寝て明日の朝、頂上へ向かう。」
そう言ったルーベンは土魔法を使用して、かまくらを作り出す。更に四方を壁で囲み、保険に闇魔法もかける。これで下層や中層の魔物程度なら壊される事もない。
それを見ていた女性陣。
「本当、土魔法って便利よねぇ。簡単に拠点も作れるし、空も飛べるし。」
「確かに。ルーベンの魔力量があってこその荒技だけど、魔法の使い方が上手いと言うか。発想が凄いと言うか…それに土魔法で空を飛ぶなんて普通考えつかないぞ?他の魔法の適正だったとしても、ルーベンなら空を飛んでいそうだな。ハハハッ。」
ナタリーがそう言うが、アモもどこか納得する。
「そうだね。火魔法なら足から火をビューって噴射して飛んでそう。ハハハッ。」
「水魔法なら、身体を水で包んで、首だけ出した状態で飛んでいそうだな。アハハッ。」
2人で仲良く話をしている。
その横でルーベンは…
「なるほど…その考えは浮かばなかったな。ナタリーが言った水魔法の飛び方なら、多少無理しても落ちる事はないし。土魔法で応用すると…頭だけ残し土で身体を球状に覆えば……いけるか?帰りに試してみるか。」
2人とも、その姿を想像し必死に止めに入る。
「ハハハッ。冗談だよ。」
ホッとする2人は顔を見合わせて笑っていた。
僕もそんな姿に笑いが自然と起こる。
それからも楽しい時間が続いた。
そして夜になると明日の話を少しだけ説明して
順番に見張りを行いながら眠りについた。
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魔物が現れる事なく朝を迎えた。
そして軽い朝食を食べ、上層へ向かう。
「魔素が濃くなってきたな。いいか!ここからは話していた通り…ゴーレムやロックドラゴンが出現する。名前の通り外皮は岩の様に硬い。生半可な攻撃だとキズすらつけられないからな。」
「うん。」
「ルーベン。さっそくお出ましだ。」
そう言ったナタリーの視線の岩が動き出す。
ゴゴゴゴッ!!
「ゴーレムだな。あくまでも目標は『メタルロックドラゴン』だ。作戦通り、余計な体力と魔力は使わずに倒すぞ。そこは僕がカバーする。」
ルーベンは2人に手をかざす。
「闇魔法•闇纏、黒の鎧!!」
ルーベンだけでなく2人にも黒の鎧を纏わせた。
アモは経験があるが、ナタリーは初めて。
拳を開いて閉じて、動きを確かめている様だ。
「これは…。凄いな。」
思っているよりも、身体能力の上昇が高いようだ。
「黒の鎧は、僕とかアモよりも、ナタリーに使った方が1番効果を発揮してくれるよ。これからも使うと思うし、まずは慣れてくれ。さぁ来るよ。」
ゴーレムも間合いに入る。
(鑑定!!)
名前 ー
種族 ゴーレム
状態 ー
武器 ー
魔法 土(C) C
魔力量 55/55
スキル 硬化
称号 なし
「鑑定した。土魔法を使ってくる。スキルは硬化。名前からして更に身体を硬くするスキルだろう。」
皆に情報を共有する。
下層や中層では弱い魔物だったので、連携の練習は出来なかった。ここで経験を積むとしよう。
ナタリーがゴーレムの前に立つ。
ゴーレムは既に攻撃モーションに入っていた。
真上から振り下ろされる大きな拳。
ほとんど岩が落ちてくるようなものだが、ナタリーは逃げる事なく両手を交差して受け止めた。
ドンッ!!
少し地面が凹んだが。
「凄いな、この防御力。痛くないぞ。」
「ナタリー。そのまま抑えていて。」
パンッ!!
アモが矢を放つ。ゴーレムの様な硬い魔物には無駄な攻撃に見えるが、ヤドリギの弓の能力がある。
そのまま振り下ろされたゴーレムの腕に当たり、矢の先端から木が生え絡みついた。もちろん事前にルーベンが矢に魔力を込めてある為、アモ自身は魔力を使っていない。
ギュルギュル。
絡みついた木々が、ゴーレムの右腕を分離した。
片腕になったゴーレム。
焦ったのか石弾の魔法を連射して来る。
「それは悪手だろ。確かに威力はあるが僕達なら簡単に避けられる。魔力の無駄使い。」
3人とも軽々避けて。
その隙にナタリーはゴーレムの懐に入って構えた。
体重の乗った正拳突きだ。
当たる直前、ゴーレムはスキル硬化を発動。
少し身体が光る。
ボゴンッ!!
ゴーレムの身体の中心に当たり
ピキッピキッ。
ヒビが入った。
「すまん。ヒビを入れるので精一杯だった。」
ナタリーはそう言うが、相手は硬化を使用。
やはり身体を硬くするスキルだった。
「十分だよ。ナタリーのスキルも使えば、楽々倒せると思うよ。それじゃアモ!!後はよろしく。」
パンッ!!
ヒビが入った箇所に矢が刺さる。
そこから木が生えてゴーレムの身体を内側からバラバラにした。
「結局、僕の出番はなかったね。2人とも凄いよ。それに連携も取れてるし想像以上だった。少し休んだらロックドラゴンとも戦ってみようか。」
こうして頂上に着くまで
連携を深めていくルーベン達であった。