第61話 王城
ナタリーが新たに加わって。
旅を再開したルーベン達。
馬車に乗りながら、お互いの知りたい事を聞きつつ。
同時に仲も深め合う。
ナタリーの事で新たに知った事といえば。
生まれはアーバン村という人口が200人程の村で育ったという。広い土地で農業が盛んな村だそうだ。ナタリーの家も農家なのだとか。
そして5歳を迎えた鑑定の儀で、高い適正が判明したが、村に残る事を決めたらしい。
師は誰なの?って聞いたら…拳術の方は、適正のある…村のおじさんに、基本の型とかを教えて貰っていたんだって。
それだけで拳術のレベルがCなのは素直に驚いた。
僕なんて小さい頃から剣豪(父上)に毎日稽古してもらって最近レベルがCになったのに……。
だからナタリー1人で、もの凄い努力をしていたのだろう。
才能があるのは分かるが……おそらくちゃんとした師に教われば、すぐに化けるのではないかな。
そして王都の学園を受験する為に王都へ向かう途中に僕達と出会った訳だ。
あとはルーベンが、1番気になっていた…歯車拳について詳しく聞いてみた。
すると、予想した通りギアを上げていく事で、身体能力が向上していくようだ。
今ナタリーが上げられるギアは3(サード)まで、しかも3(サード)まで上げると、その後は反動でしばらく動けなくなるらしい。2(セカンド)でも辛いって言っていたし。それでも最初に比べたら進歩している方だと言っていた。
それと大切な事が1つ、1(ファースト)から順に、身体が温まらないと次のギアに上げられないらしい。
なんか自動車みたいだなぁって思った事は内緒にしてある。この世界に車はないし。
それでも、良いスキルを持っていると思う。
単純な身体能力の向上スキルは使い勝手がいいし、リスクかある分、歯車拳は、それらよりも強化の幅が大きい。おそらく成長すればギアも上がっていくだろうし、他のスキルだって覚える。
将来ナタリーは、どんな風になっているのか、考えるだけで楽しくなってくる。
『拳王』にも届きうる、凄い拳術使いになるかもしれないな。
……そういえばレオンさんは、何をしているのだろうか。
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その後は特に問題なく進む事が出来た。
ドライカから出発し、新たな仲間も増えて、ゆっくり旅をする事…7日目の昼過ぎ。
ルーベン達はついに王都アスタリア到着したのだった。
城壁と城門が近づくにつれて、まず…その大きさに圧倒される。
この高さの城壁が王都全体を囲んでいるのだから驚きだ。
城壁の間にも塔が設けられている。
ずっと見ていても飽きがこない。
なんというか人が作ったとは思えない荘厳な美しさだ。
見とれていると、あっという間に僕達の順番になった。
テオドール学園の受験用紙を門番に見せて、簡単な荷物のチェックをされた後、許可を貰い。
ルーベン達は初めて城門をくぐったのであった。
ガヤガヤガヤガヤ。
まず人の多さ、綺麗な町並み。
見た事ない建物。
それにも驚くのだが……
なんと言っても、遠くの王城が目に入る。
いや……目を奪われると言った方が正しいかもしれない。
その存在感に。
ルーベン達3人は顔を上げ、王城に見とれていた。
すると……。
ドンッ!
ルーベンが人とぶつかる。
「ごめんなさい。よそ見をしてました。大丈夫で……(ふーん。今…コイツ財布をすったな。)」
「邪魔だ。全く…こっちは急いでるんだ。」
そう言ってその場を去ろうとする財布泥棒。
見た目は10代前半って所か?まだ子供だろうに。
どうやらアモとナタリーも気づいたようだ。
3人で逃げられないように囲む。
「そのポケットに入っている財布を出しなさい。そうすれば見逃して上げるわ。そこには洋服屋とお菓子屋に行く為のお金が入っているの。」
アモの顔が怖い。
早く渡した方がいいぞ。泥棒君。
どうなっても知らないからな。
その騒ぎを知ってか、周りの人が集まってくる。
「なんだ?なんだ?スリか?」「門兵に報告だ。」
「最近スリが多いって聞いてたけど…」
「まだガキじゃねぇか。」
「あの汚い服…裏町の子ね。」
「お前ら学園の受験生だろ?災難だったな。」
近くの門兵もやって来た。対応が早いな…流石、王都。
「どうした。この子供がスリの犯人か?」
逃げられないと思ったのか、犯人も震えている。
(僕としては、悪いのはこの子だし。この子がどうなろうと関係ないのだが……なんでスリなんか……仕方ない。)
「ありがとう。僕が落とした財布を拾ってくれただけなんだよね。いやぁ助かったよ。」
ルーベンの言葉を聞いた子供は驚くが、目で話を合わせろと訴える。
「うん。そう…なんだよ。はい。コレ。次は気をつけて。」
ちょっと強引な感じがしたが、なんとか騒ぎを収めることができた。まずは話を聞かなきゃと思って、近くの広場に移動した。
「で?なんで泥棒なんかしたの?ルーベンが言うから、あの場では話を合わせたけど。説明によっては門兵に叩き出すわ。」
だからアモが怖い。
「すみませんでした。すぐにお金が必要だったんです。高熱を出している妹に薬が必要で…僕達、裏町の住人は給料も安くて薬なんて買えるお金なんてなくて、それで…つい。」
アモとナタリーは、あたふたしている。
信じるなよ。嘘の確率のが高いぞ…たぶん。
「はぁ。僕が話すよ。それが嘘か本当かは、知らないけど…泥棒はよくないよね?あと君の名前は?それに裏町って何?少し詳しく話して貰えないかな?」
この泥棒の名前はオリヴァー(12歳)というらしい。
それから裏町について教えて貰った。
簡単に言うと悪い奴の吹き溜まりのような場所らしい。
オリヴァーは、そこに7歳の妹と2人で暮らしているのだとか。
2人の境遇も聞いていくと。
親に捨てられたのが、オリヴァーが8歳の時。
それから4年間、小さい妹と2人で生きてきたと。
親が今どこに居るのかも、何をしているかも分からないらしく、仕事の方は、その日あるかないかの、ゴミの掃除や洗い物。給料も雀の涙ほどらしい。
それで高熱を出した妹の為に…泥棒か。
アモもナタリーも…そして僕も…オリヴァーに同情した。
うん。辛かったよな。そうか……でも泥棒はダメだぞ。
話せば相談に乗ったのに。全く。
「アモ!!ナタリー!!急がないと日が落ちる。予定変更だ!!宿を見つけて荷物を置いたら、オリヴァーの妹の所に行くぞ。」
僕も単純だな。
オリヴァー!!これが嘘だったら首が飛ぶからな。
こうしてスリから始まる王都での生活が始まるのであった。




