第59話 ゴブリンキング
ゴブリンキングとの戦いが幕を開けた。
まずルーベンは砂地を固めて普通の地面に戻す。
これで足元は元通り。動きに支障は出ない。
ルーベンはゴブリンキングの元へ駆け寄る。
手には剣を。そして鑑定する。
名前 ー
種族 ゴブリンキング
状態 ー
武器 剣(B) C
魔法 ー
魔力量 65/65
スキル 身体強化(中)
称号 なし
「アモ!!まずは僕の力を確かめたい。援護は控えて少し見ててくれ。」
そう言われてアモは弓を下ろす。
ルーベンは魔法を発動する。
「闇魔法•闇纏、黒の剣、黒の鎧。」
2年前とは比べて、纏っている闇の黒さが増したように見える。そしてルーベンは体全体に凶々しい黒い鎧を装備した。
ゴブリンキングは大剣を持っている。おそらく冒険者から奪ったのだろう。なんだか手入れをしてない大剣が可哀想に見えた。
そしてお互いに間合いに入る。
ゴブリンキングの大きさは3メートル程。
対してルーベンは130センチ。
大人と赤子のように見えるその姿だが
ルーベンはゴブリンキングの大剣を正面から
ガキンッ!!
受け止めた。
避けるならまだしも、受け止められると思ってもみなかったゴブリンキングは驚きの表情を浮かべる。
その隙に腹に一太刀攻撃を加えるルーベン。
ブシュ。
体を捻り避けたつもりが、皮一枚切られた。
それをキッカケにゴブリンキングは激昂し、どうやらルーベンを敵として認めたようだ。
「遅いんだよ。さっさと本気でやってくれ。ゴブリンの王様さん。」
言葉を理解しているか不明だが、それに反応するゴブリンキング。魔力を使った気配から身体強化を使用したと見る。
先程とは打って変わって、強者の一撃。
それを正面から受け止めるルーベンだったが、その勢いで5メートル程飛ばされる。
「パワーだけなら父上と同じか…少し上って所か。剣術は力任せ…底が見えたな。……アモ!!大体分かったから、攻撃していいぞぉ。」
やっと出番かと弓を構えるアモ。
ナタリーも戦闘の準備はしていた。
危険になったらいつでも入れるように
しかし、レベルが違う。そう感じた。
パンッ!!
その時アモが木の矢を1発放つ。
ナタリーは横目で見ていたが、なにやら矢の先に魔力を込めていた。
ゴブリンキングに向かって一直線に飛んでいく。
それに気が付かない程レベルは低くないようだ。
ゴブリンキングは大剣の腹で矢を防いだ。
その瞬間。
カンッ!!ビュルビュルビュル。
防がれた矢の先端から鋭い木の枝が何本も伸びてゴブリンキングを襲ったのだ。
ブシュ。
流石に貫通とはいかなかったが、深くまで刺さっている。
そう…これはヤドリギの弓の能力。矢の先端に魔力を流し込む事で木の枝を伸ばし相手を串刺しにする恐ろしい攻撃。防がれようが関係ない。それに拘束も出来るので使い勝手がいいのだ。
「出たな。初見殺し。」
「ルーベン!!それは言わない約束でしょ。私は気に入ってるの。この能力。」
ちなみに父ロキも、この攻撃によりグルグル巻きに拘束されアモが勝った事は今でも覚えている。
まぁ勝ったのは初回だけだったが……。
ゴブリンキングも矢の対処法を考えている見たいだが。
矢を避けても木の枝が襲う。防ぐのもアウト。
それなら矢を撃たせないか、近づく前に落とすしかない。
だがそれをさせないのが僕の役目。
近接戦闘で逆にアモの攻撃を援護。
そしてアモの放つ矢が次々にゴブリンキングの体に刺さる。
ついには、血を流しすぎたのか前のめりで倒れたのだった。
こうしてゴブリンキングとの戦闘は完勝に近い形で幕を下ろした。
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戦いが終わり、反省点を話しているルーベンとアモ。
あんな簡単にゴブリンキングを倒したのにも驚いたナタリーであったが、逆に知りたくなった。
戦う前に言った言葉…ルーベンとアモの目指している目標について。これ程の力を持っていて目指している事とは?
A級の冒険者か、それとも皆が憧れる『王』の称号か、王国騎士団に入隊し上にいく事か。
ナタリーは聞いてみたくなった。
「ルーベン。アモ。すまないが教えて欲しい。2人の目標とはなんだ?」
いきなり、そんな事を聞かれたルーベンとアモは笑いだす。それはそうだ。戦いが終わり労うより、倒した事を凄いと褒めるより、いきなり目標はなに?だからな。
ナタリーは恥ずかしくなり顔は真っ赤に下を向く。
「そうだね。僕達の目標は、この世界を守る事。皆の幸せな暮らしを守れればって、そう考えてるよ。」
予想外の言葉が返ってきた。しかし真っ直ぐな目で本気で言っている。
ナタリーは自分が恥ずかしくなった。なんて自分は小さいのだろうと。
だからこの2人に着いて行きたくなった。
おそらく何かを隠している。でも私も一緒に。
「私も一緒に守らせて貰えないか。今は弱いけど、強くなってみせるから。」
ルーベンとアモは互いに顔を見合わせる。
(そうか…そうだよな。また私は先走って…今の事は忘れて貰おう。)
「いや……」
「「「喜んで!!」」」
2人は同時に笑顔で答えた。
「ルーベンが気にしてるから、どうせ、もの凄い才能なんでしょ?あぁーやだやだ。私がいるのに浮気しちゃって。」
「はぁ。何言ってんだ。確かに才能は凄いけど。無理に誘おうなんて思ってないから。危険な戦いになるかも知れないんだから。それに浮気ってなんだよ。まだ付き合ってないだろ?ん?」
「まだ??へぇー。付き合う気はあるんだぁー。へぇー。へぇー。へぇー。そう。」
2人のやり取りを見ていると自然に笑みが溢れる。
「ハハハッ。フハハハッ。」
久しぶりに、こんなに笑った気がした。
確かに、こんな幸せを守れれば
どんなに凄い事だろうと思いながら。




