第50話 拳王レオン
ペンスさんになんとか許可を貰うが、ペンスさんの事だ。門番に父上に報告するよう手配したはず。
父上に連絡が行き、来るまで早くて15分。充分時間はある。
ドライカの門をくぐり誰もいない荒野に立つのは3人。
1人は『拳王レオン』対するのは、ルーベン。
それを見守るペンス。
「いつでもかかって来るといい。」カチャ。
そう言い放ち…拳にメリケンサックのような武器を装着。レオンは底が知れないルーベンに警戒は怠らない。
「分かりました。それでは始めますね。」
なんとも気の抜けた勝負の始まりがあったもんだと思いながらも、拳を構えるレオン。
ルーベンは腰に差した木剣を構えて魔法を発動する。
「石槍×2!!」
みるみる石の槍が完成し、更に
「闇魔法•闇纏、黒の剣、黒の槍、黒の鎧。」
闇魔法を発動。闇が纏われた剣と槍は黒く染まり、ルーベンの腕と足の部分に黒い鎧が現れる。
それを見て、眉を動かすレオン。纏う空気が変わった。
(闇魔法の適正があるのは調べていたが、あれがルーベンの闇魔法か。)
先に動くのはルーベン。黒の槍を巧みに動かして、レオンの背後と前方から攻撃を仕掛ける。
「甘いわ。」
ガン。ゴン。ガン。
すべての攻撃を拳で受ける。
(壊れぬか。纏っている箇所は防御力が上がっているな。)
ルーベンはその隙に、手数を増やす。
「石弾×10!!」
「更に砂地•罠!!」
黒の槍に続き、石弾。更にレオンの足元が砂地へと変わりバランスを崩す。流石のレオンも焦りの表情に変わる。
ルーベンもレオンの元に駆ける。神の目を使い、レオンの死角へ潜り込んだルーベンは黒の剣を横薙ぎに振るう。
ブンッ!!
(貰った!)
「しゃらくせぇー。」
そう言い放ったレオンは地面に向けて拳を落とす。
ドドンッ!!!!
全ての攻撃がレオンのたった一撃の拳により吹き飛ばされる。ルーベンも飛ばされるが、黒の槍を操作して空中で踏み留まった。
おそらく今の一撃は身体強化を使ったのだろう。
パンチした地面が大きく凹んでいる。
そう判断したルーベンは空中で鑑定を使用。
レオンの魔量量は34/35。
(ちっ!)
ルーベンはレオンの弱点は魔力量の低さだと思っていた。レベルも低くまず魔法は撃ってこない。レオンのスキルは身体強化•拳術•金剛力。
金剛力も名前からして身体能力の向上か、拳術の技とみていい。だから攻撃手段は拳のみだと判断した。
それならスキルを使わせる状況を作り、魔力枯渇にすれば勝機もあるかもと。
その考えが間違えだった。おそらく拳で攻撃のインパクトの一瞬だけスキルを使用したのだ。
「レオンさん。そんなスキルの使い方もあるとは。初めて知りましたよ。」
「ほぉ。分かったか今の一瞬で……ハッハッハッ。スキルを使わされた事に驚いていたが…そこまで分かるとは。良い目をしている。しかし…上から見下ろされるのは好きではない。降りて来ないなら、こっちから行くぞ。」
レオンは地を蹴った。
バンッ!!!!!!
地面が大きく凹む…これも足にスキルを一瞬だけ使用したな。遠距離からの攻撃は投石ぐらいしかないと思っていたルーベンは自ら突っ込んで来るレオンに驚きを隠せない。
「なっ!筋肉お化けですか。レオンさんは…!」
なんとかもう1つの黒の槍を間に滑り込ませる。
ゴゴン。バコッ。
なんとか黒の槍で防御する事に成功するも。
その勢いでルーベンは地面に戻されてしまう。
(空中戦はするつもりはなかったけど、スキル1つ使えば黒の槍が一撃か。)
防御に使った黒の槍が崩れていく。
レオンの魔量量32/35
(今の攻防で魔力は2減っただけか…。しかもスキルを1つ使った攻撃で神の目でもやっと見える程度。2つ目、3つ目のスキルを重ねがけしたら、一体どんな威力、スピードになるんだ…考えただけでゾッとする。)
レオンさんが空中から落ちて来た。
ドンッ!!
ブンッ!!
手を振るだけで砂埃が晴れる。
「さぁ。続きをやろうぜルーベン。」ニコッ。
「ええ。流石は拳王。楽しくなって来ました。」
ニコッ。
それを見守るペンスは、早くロキ隊長が来る事を祈っていた。