第46話 復興
魔将レオン。筋骨隆々なその男。
短髪黒髪、おでこから短い角が生えている。
魔王ディノンより、魔法を放った者を調査しろと命を受けているが、明らかに偵察行動には向いていないように見えるが、この男の実力はいかなるものか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜エナ村〜
夏から秋に移り変わり、初秋には残暑もともなっていたが、風もしだいに爽やかになり、1年の間でも過ごしやすいのがこの季節。
春先の魔物騒動を乗り越えて、本格的な冬を迎えるまでに、村の復興をと目標にしていたが、職人達の力により無事に作業が終わりを迎えた。
村人や冒険者達も一丸となってこそ、このスピードで出来たと言える。
皆で喜びを分かち合う中、村の入り口に冒険者達に1人の男が囲まれている。
その報告を受けたのが復興が終わるまで村の冒険者代表として任されたジンとエリナ。どちらもB級冒険者。
かつてロキやルーベン達と共に魔物と戦った、実力もあり心優しい人達だ。
報告があった内容は、『1人の魔族がエナ村に入ろうとしている。』この話を聞いた2人は真っ先に入り口に走って向かった。
2人には、以前の魔物騒動の犯人は魔族だとロキ達に聞いていた。それもあってか不安が拭いきれない。せっかく復興作業も完了し、これからだという時に…それに魔族は魔国領を出ないのが普通。それも1人で村に来たと言う事は実力者の可能性が高い。
何も起こってくれるなよ。そう思っていると…
「その角…魔族だろ?なんで魔族がエナ村に。」
「お前に恨みはないが、代表が来るまで少し待ってろ。」
「魔族は人を恨んでいるんだろ?何やらかすか分からない奴を村に入れる訳にはいかない。」
少し騒がしくなっているが…良かった。被害は出ていないようだ。少しホッとしたジンとエリナは、冒険者を掻き分けて1人の魔族の前にやってくる。そして顔を見たジンとエリナは、驚いた。
「レオンさん!レオンさんですよね?」
「レオンさんですわ。」
そう2人は知り合いだったのだ。
ジンとエリナが、このレオンという魔族と知り合いと分かり、ヒリついていた空気も弱まっていく。
そこで1人の冒険者が皆聞きたい事を口に出す。
「すいません。ジンさんとエリナさんの知り合いなのは分かりましたが、結局誰なんですか?」
冒険者は一斉にジンとエリナに注目した。
「すまない。この人はレオンさん。A級冒険者のレオンさんだ。しかしレオンさん。帝国に行くって言ってたじゃないですか?いつ王国に戻って来たんですか?また色々な冒険の話しを聞かせて下さいよ。」
ザワザワと騒がしくなる。A級冒険者は一握りの実力者しかなれない。国からも依頼を受ける事もあり冒険者にとっては夢の様な存在だからだ。
「オレ失礼な事言っちゃったよ。」
「A級冒険者のレオンって、あの鉄拳レオンか?」
「いやお前、拳王レオンの名も有名だぞ。」
「拳王?『王』の称号持ちか?すげぇー。」
「魔族で唯一の冒険者にして、A級まで上がった男…。カッコいいぜ。」
騒がしさが増していく中。レオンがジンとエリナに話しかける。
「おぉ。久しぶりだなジンにエリナ。時間があれば、また一緒に依頼でも受けよう。」
低く、どこか耳に残る声は、それだけで皆を魅了する。
「はい。お願いします。しかしレオンさん。どうしてエナ村に来たのですか?」
本音を言うと。魔王様に、魔法を放った者の調査の命令を受けているのが…そんな事は言えない為。
「まぁあれだ。近くを通りかかったんでな。ドライカで聞いたんだ。事件の事とお前達の事…だから見に来てやったのよ。そしたら村に入る前に門前払いと来たもんよ。ハッハッハッ!!いつもの事だ。怒っちゃいねぇよ。手を出された訳でもねぇしな。」
冒険者達もレオンの話しを聞いてホッとする者もいる。
「そう言う事だったんですね。ありがとうございます。とりあえず、ここでは村の人にも迷惑かけます。村の中で話しましょう。」
そう言って、レオンは案内されるがまま堂々と村の中に入っていった。
(ウィングからある程度聞いたが、戦った中で実力者は…ドライカ騎士団隊長ロキ(剣豪)、副隊長ペンス、あとは冒険者の中に数人だと言っていたな。オレもこの中に、話しに聞いた強大な魔法を放てる奴がいるとは思えない。それでこそ『王』の称号を持つ魔法使いか、それに近い者。たまたまその場に居合わせたか?それとも誰かが力を隠しているか……まだ村に居る可能性は……ないな。とりあえずはジンとエリナに聞いてみないと。)
それからはジンとエリナ、他の冒険者から色々情報を集めた。気になった事が2つ……ひとつは村の中心に土壁を作ったとされる副隊長のペンス。戦いの最中という事もあり、大げさに語ったとしても考えられない程の魔力量だ。
そしてあと1つは剣豪ロキの子供が戦場にいた事。
子供に経験を積ませようと戦場に連れて行く親もいるが、驚いた事は5歳という点。鑑定の儀からすぐの子供を、剣豪が連れて来たという点で、もの凄い才能がある子供だというのは分かる。
これら2つは、ウィングの言っていた金色に光る魔法とは関係がないのだが…調べてみる価値はある。
エナ村とマヤの森を調べて何も発見がなければドライカの街に行くとするか。
そうと決まれば、まずは……
『よし!飲むぞー!!』
『おー!!レオンさんにカンパーイ!!』
なぜ、こうなったのか……それはエナ村の復興作業が完了し、宴を開こうとしていた冒険者。
そこにA級冒険者が現れたのだ。皆、話しを聞きたくなる。
レオンも酒は好きだし、宴も大歓迎。
その日は皆、倒れるまで飲んだという。




