第44話 正解
コカトリスは頭部だけなくなり湖に浮いている。
その光景を見たネヴィル子爵は、口を大きく開けて固まったままだ。
ロキが現実に戻そうとネヴィル子爵の肩をゆする。
どうやら戻って来たようだ。
「あっ。すまない。しかしなんだあの腕は?」
それからロキとルーカスがネヴィル子爵に説明している。
残った面々は、母アンネ、姉フランはピクニックの準備を、兄グルーガと兄マルク、ルーベン、そしてアモはコカトリスの回収に向かった。
毒の水となってしまった所、ここで活躍するのがアモの回復魔法。まだ現れてから時間も経っていない為、浄化する事が出来た。
これでフーリの湖は無事に使える。
あとはこの陸にあげたコカトリスだが…どうやって持って帰ろう。
アモは女性陣の所に戻っていった。
兄グルーガと兄マルクは興味津々だ。
皮膚を触ったり、尻尾をいじったり。特に兄マルクはコカトリスの食べられる所を探していた。食ったら死ぬぞ……たぶん。
考えていると、父上逹がこっちにやって来た。
話しが終わったのだろう。
そこでコカトリスについてどう持ち帰るのか相談したところ。ネヴィル子爵が手配してくれる事に決まった。
これぐらいは、やらせて欲しいと言ってきたので、そうする事にした。
こうして無事にコカトリス討伐作戦が完了したのである。
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それから、釣りをしたり。
湖に入って泳いでみたり。
お茶を飲みながら話しをしたり。
寝転んで横になったりと各々、休日を楽しんだ。
母上とルーカスさんが作った美味しいお弁当を皆で食べ終えると、アモに散歩に行こうと誘われたので、いまは2人で湖の周りを歩いている。
「あっ。あそこに座ろうか。」
そう言って横になった木に腰をかける。
「ドライカの街に来てから3ヶ月ぐらい経ったけど、慣れた?」
「うん。最初は不安もあったけど、こんなに楽しいとは思わなかったよ。」
アモが満面の笑みで答えた。
「そうか。良かった。そういえばさっきの弓。カッコよくて綺麗だったよ。」
「そそそ…そう?」
顔を赤らめて、下を向いてしまう。
「うん。あとアモに渡したい物があってね。ちょうどいいから今日渡そうと思ってたんだ。手を前に出してくれる?」
スッーと手を前に出す。
そして手を握られる。……恥ずかい、それに心臓が爆発しそうだ。
そして人差し指に白い透明な指輪が付けられていた。
(きれい。光が当たる箇所により色も変わる。)
「ありがとう。大切にするね。でもどうしたのこの指輪。どうせルーベンの事だから何かあるんでしょ?」
「ハハッ。そうだけど、僕が初めて最初から最後まで作った魔道具なんだ。ブラッドウルフとメタルスライムとか余った材料で作ったんだよ。それには魔力を溜め込む事が出来るんだ。そして魔力が足りなくなったら指輪の魔力を使う事が出来る。試しに魔力を込めてみて。」
魔力を込めると透明だった指輪が赤く光りはじめる。
わたしの髪よりも更に赤いとってもきれいな赤。
(わたしは…いつもルーベンに貰ってばかり…)
「ルーベン。少し目を瞑って?」
「うん。瞑ったよ。」
チュッ。
ほっぺにキスをされた。
ゆっくりと目を開ける。
僕も顔が赤くなっている事が分かる。
アモも赤くなっている。
ヒュー。心地よい風が吹き。
少しの沈黙…………。
「ただのお礼よ。そうよ。フランお姉ちゃんに言われたのよ。ほっぺにキスぐらい誰でもするわ。わたしはもう行くわね。ありがとう指輪。」
(今はこれぐらいしか返せないけど…必ずルーベンの隣で並べるような人に……。)
そう言って走っていく。
(あぶない。あぶない。ドキドキしてしまった。でも……。)
ガサッガサッ。
「もぉー。ママちょっと向こうにいってよ。少ししか見えなかったじゃない。」
「恋ね。アモちゃんは強がるタイプなのね。」
どこにでも現れる女性陣。
「母上。フラン姉さん!!」
ビクッ。ガサッ。
「もぉバレちゃったじゃない。」
「昔を思い出すわぁ。」
母上もフラン姉さんも諦めたのか顔を出す。
怒る気にもなれずに、恋心に対して疎いルーベンは、知りたい事が口に出る。
「僕は…一体何が正解だったのでしょうか?」
ついつい出てしまった。この言葉。
2人に、それをタブーと分かっていても…聞きたくなるのが恋愛話。
恋愛には正解がないのが…また面白い。
家に帰るまで盛り上がる2人を見ながら、波乱のピクニックが終わるのであった。
一方、先に帰っていたネヴィル子爵
(そういえば…ロキは何もしてなかったな。)