第40話 対マルク
僕は今、騎士団の訓練場に立っています。
本気を出した父上が僕から一撃を貰った。と兄達に言ってしまったので、家に入る前に訓練場に来てしまいました。
本当は油断していた所を狙っただけなのに…父上が本気を出したら僕なんて秒殺ですから。攻撃する前に倒されますよ。
そう言っているのに、兄達は聞きもしません。
父上も父上です。兄弟との対決を見たいのなら、そう言えば良かったのに。
でも父上には何か考えがあるようで、どうやら2人を僕に倒して欲しいと考えました。僕は空気を読める男なのです。
仕方ない。兄達の成長の為、僕も一肌脱ぎましょう。
まずは、次男マルクとの勝負。
父上は審判にまわる。
「3本勝負。2本取った時点で勝ちとする。剣は木剣だが魔法は自由に使っていいぞ。」
「ルーベン。父上に一撃入れたんだ。手加減はしないぞ。」
マルクはそういって中段に剣を構える。
やはり父上に憧れているだけあって構えも似ているな。
父上はこの半年での子供達の成長を見たい。
子供達は父上に成長した所を見てもらいたいと。
相手の実力を出しつつ、己の課題点を知ってもらうとなると…1本目はあれでいこう。
「マルク兄さん。いきますよ。」
僕は木の盾を構えた。まだ5歳、体のほぼ全体が盾により見えなくなる。
「ルーベン!舐めているのか?父上も何か言って下さい。これでは勝負にすらなりませんよ。」
マルクの訴えも届かず。父上は上げた手を振り下ろす。
「では、1本目始め!!」
およそ5メートル程の距離から始まるこの勝負。
まずマルク兄さんは良くも悪くも剣術に拘りが強すぎる。父上の影響が凄すぎるのだけれど。
せっかく盾術と拳術の高い適正があるのに、真剣に取り組もうとしないのには、そういう理由があるのだろう。
だからこそ、僕が適正のない盾と拳で戦って勝ってみせる。これはあくまでもマルク兄さんに違う道もある事を知ってもらう事。
まずは僕が動く。まずは打ち込んでもらわない事には始まらない。
「石弾×5!」
盾を構えながら、石弾を放つ。
これぐらいなら対処出来るだろう。
「ちっ。分かったぞ。亀作戦だな?よくいるんだ魔法科の生徒は剣術科の生徒と試合する時に、防御に徹して、隠れて遠くから魔法を打つだけのやつが。」
(僕の狙いは違うが……亀作戦か。なかなか良いネーミングだな。でもマルク兄さんそれも立派な作戦だぞ。)
威力も速度も落とした5発の石弾は、マルクは対処してみせる。そしてルーベンに近づき木剣を打ち込んできた。
(マルク兄さんごめんなさい。ズルをします。神の目発動。)
神の目を発動したルーベンは、マルクの剣がはっきりと見えるようになる。
そしてマルクの剣の通り道に対して盾で受け流せる角度に、置くだけだ。
マルクの全ての攻撃が盾により受け流される。
痺れを切らしたのか、マルクが距離を置く。
「ハァハァ。くそ。なぜ当たらない。」
距離を置いたらやる事はひとつ。
「石弾×6!」
さっきより1つ増やしてマルクに放つ。
ギリギリ対処してみせるが、たまらず近づいて来る。
また盾で全ての攻撃を受け流す。これのループだ。
ルーベンは流石にそろそろ体力の限界かなと思い。
隙を作ってマルクからある攻撃を引き出す。
ルーベンの狙いは突き攻撃。
案の定、マルクは剣で突きを放つ。
シュッと。
それを待ってましたと言わんばかり、騎士団の人が使ってた技を繰り出す。
「見よう見まね。シールドバッシュ!!」
マルクの突き攻撃に対して、盾を突き出した。
カンッと乾いた木の特有の音がなり、マルクの持っていた木剣が宙を舞う。
これで武器はなくなった。あとは……
盾を目隠し代わりにして足を払いマルクを転ばせて拳を顔の目の前で止め……
「勝負あり。1本目勝者…ルーベン。」
こうして1本目はルーベンの勝利で終わる。
驚きの隠せないマルクであったが、立ち上がりすぐに始まる2本目。
「2本目。始め。」
2本目は、1本目と打って変わって素手で挑む。
流石に素手で木剣なんて受けたら下手したら骨折する。なのでルーベンはある魔法を使用した。
「闇魔法•闇纏!」
するとルーベンの拳から肘にかけて黒い鎧のように闇が纏わりつく。前とは違い攻撃も防御も上がっているようだ。
「驚いた。それが闇魔法か……ルーベン手は抜いてくれるなよ。」
「当たり前です。マルク兄さん。」
そして2本目が始まった。
近距離戦。
剣と拳とでは間合いが違う為、懐に入られれば拳の方が小回りも効くので圧倒的に有利。
それはマルクも分かっている事で懐に入られぬよう。
上手く立ち回る。
ルーベンも闇纏の効果で防御力が上がっているので、拳や腕で木剣を受け止める。
木剣とまだ身体能力の低いマルクだからこそ出来る事である。
2本目は、どちらも互角の戦いだった。
だが試合の終わりは急に訪れた。
マルクの足元がいきなり砂に変わりバランスを崩す。
「えっ!?」
そこからは懐に入られ1本目と同じ形だ。
「勝負あり。2本目も勝負ルーベン。よってルーベンの勝ちとする。」
「ハァハァ。2本目は、あのまま剣と拳だけなら僕が負けていました。流石はマルク兄さんですね。剣の使い方が上手い。」
「ハァハァ……ルーベン。盾と拳術の適正持ってたか?」
「ふぅ。持ってませんよ。僕の武器適正は剣と弓ですから。」
「そうか。盾と拳って…こんなに強かったんだな。なぁルーベン、剣と剣ならどっちが勝つ?」
「それはマルク兄さんですよ。当たり前じゃないですか。でも剣以外も使えるなら負けませんけどね。」
「ハッハッハ。そうか。そうだよな。」
マルク兄さんは何か吹っ切れたような顔をしていた。
これで大丈夫だろう。
父上は何も言わず見守っている。
これでいいんですよね。
さぁて…次はもっと強敵だ。




