第39話 夏と言えば
あの後、ベン爺と僕は父上に、こっぴどく叱られた。
アモも一緒に作ったのにアモは何も言われていない。
なぜか母上に抱きしめられていたし。
悪い事は、なにもしていないと思うのだが。
そして急遽『トランスフォームアーマー•ブラッドメタル』について話し合いをした。
ロキも魔道義手の良さに気がついたらしいのだ。
なんでもこの世界には魔物も多くいる。怪我をして、手や足の一部がなかったり、動かせなくなったりと、一定数いる。
騎士団の人や冒険者も、それが原因で引退する人を何人も見てきたらしいのだ。
そんな人達に量産出来ないかと言われたんだ。
それで聞かれたのが、その他の機能だ。
変形機能と魔力砲の事だろう。
変形機能の方は色々と便利そうだし、なにより変形出来ないと魔道義手とし意味がない。そこは父も渋々納得してくれた。
そして魔力砲の方は、素材にブラッドウルフの爪が必須だと説明した。
ベン爺が魔道義手を作っている最中に気がついた事だ。
爪の先端には魔力を溜め込み放出する性質がある事に。
だから魔力砲は爪が必須になる。
魔道義手の骨組みは、他に魔力を通しやすい素材があれば量産も可能とベン爺は言っていたし。メタルスライムの素材はいつでも手に入る。
それを聞いて安心したのか、さっそく上にかけあってみると言っていた。
そしてベン爺とあれやこれや盛り上がっていると。
次から何か作る時は、言いなさいと釘をさされたのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
そして本格的な夏が来た。
ミーン、ミーン、ミーン。
フロムでも蝉がいる。
この鳴き声を聞くと、地球を思い出す。
子供にとって夏と言えば……そう夏休み。
つまりはルーベン以外の兄弟の1ヶ月近くの長期休暇。
冬の年越しに会って以来だから半年程。
到着を今か今かと待ち侘びる、父上と母上。
王都にある、『テオドール学園』
名前の由来は大賢者様の名前から、とったそうだ。
入学出来れば8歳から6年間、寮付きの学園に通うことになる。
国にある学園では1番の規模であり、入学する事は狭き門。それを兄2人と姉1人は合格してみせたのだから、凄い事だ。
そんな事を考えていると、馬車が見えてくる。
家の前に止まるとまずは僕の姉こと、フラン•アートルドが母上に抱きついた。
「ママ。ただいま。」
父ロキも母アンネも僕も金髪なのだが、フランは赤みがかったサラッとした髪で、顔立ちは母に似ている。将来は美人になる事間違いないだろう。
(鑑定!!)
名前 フラン•アートルド(魔術科)
種族 人族 11歳
状態 ー
武器 鞭(C) E
魔法 火(B) D
水(C) D
風(D) E
魔力量 115/115
スキル 魔術(小)
称号 なし
うん。以前鑑定した時よりフラン姉さんも成長している。全体的に魔法の訓練をしている感じなのかな。
続いて馬車から降りてきたのは次男マルク•アートルド。
年が1番近い兄弟だったのでよく遊んでいた。
やんちゃで、父の剣に憧れている。
マルクも髪は赤い髪だ。顔立ちは母親似。キリッとした目をしていて見た目通り落ち着きがない。
名前 マルク•アートルド(剣術科)
種族 人族 8歳
状態 ー
武器 剣(B) D
盾(B) E
拳(C) E
魔法 風(D) E
魔力量 38/38
スキル なし
称号 なし
相変わらず剣しか振っていないのだろう。盾術と拳術も伸ばせば将来、父ロキの様に凄くなりそうだ。
なにせBの適正が2つもあるし。
最後に降りてきたのは、1番年上の兄グルーガ•アートルド。落ち着きもあり、兄弟思いの良いお兄さん。
髪は茶色で、顔付きは父ロキに似ている。雰囲気は文官っぽいのだが、実力者だ。
名前 グルーガ•アートルド(剣術科)
種族 人族 12歳
状態 ー
武器 槍(A) C
盾(C) D
魔法 風(C) D
土(D) D
魔力量 96/96
スキル 身体強化(小) 槍術(小)風ノ槍
称号 なし
卒業したらドライカの騎士団に入りたいと言っているが、成長すれば王国騎士に入れるのではないかと思う。
槍を使うのが上手く。同級生の中でも戦闘に関しては上位なのだとか。
半年ぶりに家族が揃った。
やっぱり全員揃うのってなんだか嬉しくなるよね。
中に入ろうとした時、フラン姉さんが話しかけてきた。
「ねぇ。ルーベンの将来のお嫁さんのアモちゃんは?」
「ん?なぜその話しを知っているんです?」
だいたい予想がつく。十中八九、母親だろう。
子供達に手紙を送っていたからな。
母上を見たら、ニヤニヤしながら話しかけてきた。
「あらあら、ついにアモちゃんを将来のお嫁だと認めたわね。フランちゃん、アモちゃんに会いに行くわよ。すぐそこだから。」
「そうね。手紙に書いてある通り、目がクリクリで可愛いのよね?早く行きましょう。私、妹が欲しかったのよ。」
「あっ。ちょっと母上。フラン姉さん。違いますからぁー。」
僕の話しも聞かずにアモの家に行ってしまった。
「女の子ってのは、恋愛話が好きなんだよ。母上とフランに目をつけられたのが運の尽きだな。諦めろ。ハハッ。」
グルーガ兄さんが肩をポンポンと叩いてくる。
「ルーベン、久しぶりに勝負しようぜ。もちろん剣術で。」
そんな事はお構いなしに、マルクが木剣を差し出して来る。
「はぁ〜今は嫌ですよ。今度にしましょう。」
ルーベンは答えたが、父ロキがニヤけている。
これは何か言う気だなと思ったら、案の定、爆弾を投下する。
「まさか子供の中で、本気の私に初めて一撃を当てたのがルーベンだったとはなぁ〜。グルーガかマルクだと思っていたんだが……。」
(クソっ!……2人の前でそれを言ったら……)
グルーガとマルクに肩を掴まれる。
駄目だ。これは逃げられない。
ルーベンは思った。
これから1ヶ月か……早く帰ってくれないかな。……なんてね。
※補足※
鑑定の能力なんですが、熟練度が上がり魔物以外も状態が分かるようになりました。