第37話 光明
引っ越しも無事に完了し、ご近所さんとなったアモ達。
ベン爺も幸福亭の店長も呼んで、アートルド家で歓迎会なんかも開いた。
早くドライカの街に慣れて、楽しく過ごせるようにと。
それから、ひと月が経った。
春も終わりを告げ、夏に入るこの季節。
もちろん、ルーベンは訓練を継続していたが、変わった事がある。アモも一緒に訓練するようになった事だ。
午前中の魔力の操作•制御の訓練。
家の庭で2人で行う事が日課になっている。
今まで母上が見に来る事はあまりなかったのだが、ほぼ毎日優しい視線を送り、訓練を覗いている。
そしてアモが騎士団の訓練場を使う事を父上に許可を貰えた。僕と一緒という条件なので週に2回程だ。
たまにペンスさんもニヤニヤしながら弓の稽古をつけてくれる。
ひと月も経つと、アモの凄さが分かってくる。
とにかく飲み込みが早い……今では魔力の操作•制御なんて僕より上手いんじゃないかと思う。細かい操作が得意なようだ。
魔法の方も騎士団の人に教えて貰い、火と風の初級魔法を覚えていたし。
よくよく考えたら、僕とはスペックが違う…僕は神様の力で能力が底上げされてるけど、その前の能力ではアモに負けているのだ。
そう思う事にした………だって悔しいじゃないか、そう考えないと、やってられない。
弓術だって僅か2回の稽古で僕の腕よりも、上がってしまった。流石は弓術Aの適正持ち。
ペンスさんにも言われていたな…弓術を鍛えた方がいいと。
あとは、アモは別で週に1度、ドライカ騎士団の治療士に教えを請う。父上の配慮で決定した事だ。
そこでも、もの凄い速度で上達しているのだとか。
あとは残りの空いた時間でルーカスさんの左腕の治す方法を図書館で調べたり、アモの母の病気の事も調べたり。
まだ成果は上げられてないけど、2人で頑張るって決めたからね。諦めないで続けて行こうと思う。
神様には…大賢者様が欠損した部位も治したとされる『神の息吹』について聞いた所、将来アモが成長すれば覚えられる可能性もあるとの事。
とにかく訓練あるのみだよね。
そんな感じで1ヶ月が経った。
そして今は2人で図書館に調べ物をしに来ている。
アモは母上の病気関連の医療の本を真剣に読んでいた。
わずか5歳で読む本ではないが、理解するのだから恐ろしい。実際他の人が見て驚いているしね。
僕は今日、ルーカスさんの腕の件について、違うアプローチで調べ物をしていた。
すると…思わずルーベンが声を上げる。
「これだぁー!!」
一斉に図書館にいた皆に視線を送られる。
どこの世界でも図書館の使用方法は同じである。
「すいません。」
ルーベンは静かなトーンで、頭を下げた。
するとアモが近づいて小さい声で聞いてくる。
「何か見つけたの?」
「ふふふ。そうだよ。説明したいから場所を変えようか。」
何かを企む顔をするルーベンを見てアモは思うのだった。
この顔、アンネさんに似ているなと。
その後は、ルーベンの部屋で説明が行われる事になる。
「え〜。良く集まってくれました。アモくん。」
「はい。何か新しい発見があるとの事ですが…。」
仕方ないから付き合ってあげるか…などと考えたアモであった。
「将来アモが成長すれば回復魔法で治せると、僕はそう信じています。……そして僕が他の方法も探してはいましたが、どれも信憑性に欠けるものばかり、しかし今日新たな発見がありました。」
ドンっ!!
「それは……」
いきなり机を叩き、少しビクッとなったアモだったが、ルーベンが何かを発しようとしている為。何も言わなかった。
「ないなら作ればいいんです。」
「何を?」
「腕を!!!!!」
アモは口を大きく開けて驚いた表情をしている。それもそうだ、腕を作るなんて発想がどうして生まれてこようか。
「まず説明します。将来アモが回復魔法で治すとはいえ、正直すぐには無理でしょう。それはアモも分かっているはずです。だから他の方法を探していた。そこで僕は考えたんです。治るまで腕がないなら作ればいいと!!」
自信満々の顔をしているルーベンであるが、大切な事をまだ話してはいない。
「どうやって腕を作るのですか?」
そう聞くのは当たり前だ。
「まぁ落ち着いて下さい。アモは義手や義足は知っていますか?」
「当たり前よ。わたしもパパも1度考えたわ。でもただ取り付けて支えるものばかり、操作性もなければ…その割には値段が高いし。だからすぐ諦めたわ。」
「そこです。普通の義手ならその程度でしょう。だから僕達で魔道具の義手を作ればいいんです。」
「魔道具の義手?」
アモは首を傾げる。
「そうです。この世界は魔力があります。魔力を流し込み動かせる義手があればと考えてはいました。しかし素材が分からない、そもそもそんな事が可能なのかと思っていましたが、今日読んだ本に、義手に的した素材が見つかりました。その前に水を……ゴクゴク。」
「何でそんなに興奮しているのよ。」
少し冷めた目で見始めるアモ。
「興奮しますよ。だってこれが完成すれば魔道具の腕が出来るんですよ。改良すれば腕を刃に変形したり、ロケットパンチやビームなんかも放てるようになるかもしれません。ふふふ。男の浪漫ってやつです。それは興奮しますよ!!」
「はぁ〜確かにそれが出来たら凄いわね。でもわたしのパパの腕をそんなにしないでくれる?普通でいいのよ普通で。」
「ルーカスさんも是非にと、言うと思うのですが、まぁまずは義手の材料ですね。ちょっと待ってて下さい。ひとつは家にあるので。」
ドタバタ。ドタバタ。
そう言うとルーベンは急ぎ部屋を出て行ってしまった。
一体何を作る気でいるのか、わたしが一緒に作らないと、とんでもない事になりそうだなと恐怖するアモであった。




