第33話 5年前の…あの日
あれから無事にドライカに帰還した。
父上は報告があるからすぐに家には戻れなかった為、僕は1番に家に戻った。
手紙で報告したものの、心配しているだろうし、何より母上の顔を見たかったから。
最初は抱きしめられたけど、その後なぜか、アモの事をしつこく聞いてきた。
どんな内容の手紙を送っていたのか、父上が帰ったら問いたださなければならない。
ちなみにアモ達は、1週間後ぐらいには引っ越すって言っていたな。
その夜は、久しぶりにみんなで、母上の美味しい料理を気が済むまで堪能した。
そして自分の部屋に入り、やっぱり我が家は良いなぁなんて、思っていると久しぶりに神様の声が聞こえてきた。
「ルーベンよ。久しぶりじゃの。ワシが誰だか分かるか?」
「ゼノ様?ゼノ様ではないですか。久しぶりですね。転生する時以来なので、5年振りですか。」
「覚えていてくれて嬉しいぞ。そして元気そうでなにやりじゃ。」
「ありがとうございます。それなりに、この世界で、楽しんでますよ。父も母も優しくて、友達だって出来ました。でも…どこの世界にも悪い人はいるんですね。最近まで大変だったんですよ。魔物が村を襲うわ、魔物を操る悪い人がいるわで……それで初めて雷魔法を使いました。全然制御出来ませんでしたが………はっ!!まさかその話しをされに?やっぱり雷魔法使ったらまずかったですか?あの威力ですもんね……すいません。でも使わなかったら僕も父上も全員やられてしまう状況だったもので……罰なら僕が受けますから。」
「いやいや違うのじゃよ。雷魔法はお主が、いやルーベンが好きに使うといい。確かに制御は出来ていなかったがの。初めて使ったんじゃ仕方あるまい。ハハッ。」
「見ていたんですね。恥ずかしい所を……それならなぜ僕の所に?」
「5年前のあの日の真実を話そうと思ったからじゃよ。」
「あの日って…あの交通事故の件ですか?」
「そうじゃ。なぜあのような事が起きてしまったのか、聞いてくれるか?」
「はい。断る理由はありませんから。」
「では話しをする。まず交通事故の原因、あの亀裂についてじゃ。あれはとある神の力が現世に影響を及ぼしたと説明したが覚えているかの?」
「はい。」
「その神の名前は『キリト』。いや…今は神ではないの。『堕神キリト』という。かつてワシの盟友じゃった奴じゃ。」
「堕神キリト……」
「神の世界にも、いくつか決められたルールが存在する。キリトは、その中でも絶対に破ってはならない、ルールを破ったんじゃ。そして神から堕とされ、処刑される事が決定したんじゃ。」
「捕まったキリトじゃったが、処刑される前に逃げ出しての……そして逃げ出したキリトを最初に見つけたのがワシじゃ。説得も虚しく…戦闘になっての。なんとか追い詰めはしたが、ワシは最後の…トドメの一撃を放つのに躊躇ってしまったんじゃ。その隙にキリトはワシの世界に攻撃を仕掛けたんじゃ。それが、あの亀裂じゃ。ワシは地球の人々を救うか、キリトを殺すか2択に迫られたんじゃ。」
「そして、地球の亀裂を止めにゼノ様は動いたんですね。そしてキリトには逃げられてしまったと。」
「その通りじゃ……世界中の亀裂を止めるのに、ちと力が足らなくての…ワシの生命力も使用したんじゃ。それで最後の亀裂であの事故が起きて、ワシの力が混ざってしまったのじゃ。」
「原因は分かりました。そんな事が……それに盟友って…キリトとは友達だったんですよね。躊躇ってしまうのは当たり前ですよ。それに地球を救ったゼノ様の判断はきっと間違っていませんよ。でもなんで今になってその話しをしたんです?」
「キリトが逃げた先が、フロムだと判明したからじゃ。」
「……まだ捕まってないんですね。それに…この世界に居るんですか?」
「そうじゃ。キリトは最後、すべてを破壊すると言っておった。おそらく神界も、神が管轄する世界もすべて破壊しようと考えているんじゃろうな。」
「そんな……。」
「大丈夫じゃ。すぐに動く訳でもない。逃げられはしたが、どこかの世界に逃げ込むと踏んで、ワシがキリトの神の力を封印してある。」
「その封印を解かれる心配は?」
「確実なのは、ワシを殺す事じゃな。そうすれば封印は解かれる。」
「それなら安心ですね。キリトは力を使えないんですよね。ゼノ様が倒される事はないかと。」
「それもそうなのじゃが、ワシもキリトの力を封印するのに大幅な力を使っていてな。」
「ん〜〜〜。でもキリトの居場所が判明して、ゼノ様が力を封印しているんじゃ…他の神様が倒しに行けばいいだけでは?いや…フロムにいるって事は、アナ様が倒す事になるのかな?そこはどうなんですか?」
(まさか…アナ様は戦闘力が皆無とか?ありえそう。)
「正直、今のキリトなら、どの神であっても倒す事は容易い。しかしワシら神々が下界…つまりフロムや地球といった世界に直接的な関与が出来ぬのだ。ルールで決められておる……もしワシらが地上におりたとして、神の力は強大過ぎて、その世界に影響を及ぼす。下手をしたらその世界が滅ぶ。」
「そうですか……ゼノ様がキリトの神の力を封印してあるおかげでフロムは無事って事にもなりますか?」
「そうじゃな。」
「んー。それなら僕がキリトを倒します。」
「は?いまなんと?」
「僕がキリトを倒します。だってそれしかありませんよ。神様達はフロムに来れない、キリトはゼノ様の封印を解こうと画策してるので、ゼノ様をキリトに近づけさせちゃまずい。それに僕は一部ですけどゼノ様の力を持っていますよね?キリトに気が付かれたら狙って来るのは確実でしょう。……………あ〜それでか……僕が神様の魔法を使ったことで、キリトに勘付かれたんですね。ゼノ様の力を持つ者がいると……それで僕の所に来て、真実を話したと。」
「そうじゃな。凄いのぉ。しかしルーベンがすべて背負い込む問題ではない。実を言うと…ルーベンの持つ神の力を無くすことも考えておったのじゃよ。そうすればキリトに狙われる事はない。」
「でも…それでは解決はしませんよね。だから僕がやります。偶然とはいえ、ゼノ様の力を持った僕が……それにゼノ様の力です。負ける事はないですよ…僕が上手く使いこなせればですけど。ハハ」
「ワシの力が渡ったのがお主で良かった。本当にいいのか?」
「はい。それでまず、僕は何をすればいいですか?」
「まずは、力をつけなさい。力を封印しているとはいえ、元神じゃ。今のままではキリトには勝てん。」
「分かりました。頑張って鍛えます。色々教えて下さい。雷魔法の扱い方とか。」
「そうじゃな。でもまずは土台作りからじゃ。魔法もまだまだだが、剣と弓術も鍛えねばなるまい。」
「はい。お願いします。そういえばアナ様は何をしているんですか?」
「そうじゃった。アナはキリトの事を調べてもらっている。調べ終えたら話しがあるじゃろ。」
こうして空いた時間にゼノ様に鍛えてもらえる事になった。
そして世界を滅ぼそうとしている『堕神キリト』……僕がゼノ様の代わりに倒すと心に誓ったのであった。
(明日から修行頑張るぞぉー。それじゃ寝るとするか…………………………。)
「あぁーーー!!また聞きそびれた。神様に連絡する方法。」
ドタバダ。ドタバダ。
「大声上げてどうした?ルーベン!!何かあったか?」
「あっ父上。なんでもありません。すいません。」
「そうか。何事かと思ったぞ。全く。」
「そうだ。父上…明日から朝の鍛錬またよろしくお願いします。」
「分かった。明日からは本気で指導してやろう。それでいいか?」
「はい。お願いします。」
その後、ロキとルーベンの激しさの増す朝の鍛錬は、ドライカで有名になった。
剣豪の鍛錬を一目見ようと朝から家の周りに人が集まって来るほどに。




