第32話 答え
エナ村に来て7日目。
ついに騎士団がエナ村を去る日がやって来た。
ドライカから呼んだ、エナ村の復興部隊が到着した為だ。
数名は残るが、残りの騎士団員は帰還する。あとは職人さん達が復興の手伝いをしてくれることになっている。
僕の目の前にはアモのお父さんとアモが立っている。
結局アモに、なんて言ったらいいのか考えつかなかった。
だから僕の本当の気持ちを伝えよう。
「ルーベン。本当にありがとう。村を救ってくれて。」
「うん。」
「向こうでも元気にやりなさいよ。」
「うん。」
「なによ。寂しいの?」
「うん。」
「はぁー。最後なんだから、ちゃんとしなさいよ。」
「アモ。大切な話しがあるんだ。」
「何よ急に………。」
「ドライカの街に来ないか?」
「なっ!?なんでいきなりそんな事……わたしは…此処に残るわ。そう決めたの。」
「それはなんで?生まれた村だから?母親と思い出の場所だから?」
「なんでそんな事ルーベンが知ってるのよ。まさか……お父さん!!なんか話したわね!!」
「違うよ。僕が勝手に調べたんだ。アモのお父さんは関係ないよ。それでなんでアモは此処に残るの?」
「それは………答えたくないわ。」
「じゃぁ質問を変えるよ…アモのしたい事はなに?」
「わたしのしたい事………回復魔法で皆んなの怪我や病気を治したいわ。魔法を覚えて使うのは楽しい。治療して笑顔になってくれて、ありがとうって言われると、心が暖かくなって………でもこの村でも出来るわ。」
「そうだね。アモならこの村でも上手くやっていけると思う。でもお父さんの腕はどうするの?此処に居たら治せないよ?自己流では限界がある。」
「なんでそんな事言うの?やってみないと分からないじゃない!!」
「本当にそう思う?回復魔法や魔力回復は本にも書いてあるし、初期で覚える魔法。いくらレベルを上げた所で腕を再生なんて出来るはずない。回復魔法を使えるアモなら、もう分かってるはずだ。」
「…………。」
「それにアモが医学本を読んでるのを見たんだ。アモは優しいから、お母さんの命を奪った、病気の治療方法も見つけたいと思ってるはずだよね。同じ苦しい思いをして欲しくないから。」
「…………。」
「村の先生が言っていたよ。才能も実力も、なにより助けたいって思う気持ちがアモにはあるって。将来は凄い回復魔法の使い手になるって。……僕もそう思う。ドライカには回復魔法の治療士も医学の本も、この村より揃ってる。」
「…………。ぐすっ。ママが…パパが寂しがるから……。」
「アモもアモのお父さんも優しすぎるから、言えない事を僕が代わりに言うよ。自分のやりたい事をやっていいんだ!!それにお母さんは、きっとアモのやりたい事をやって欲しいと思ってる。エナ村から離れても思い出はなくならないよ。お母さんも寂しいなんて思わない。だってアモの心の中にいるじゃないか!お母さんの優しさはアモにも引き継がれてる。決めるなら今しかない!」
「うわぁ〜ん。」
「それからこれは僕の気持ち。僕も一緒に治療方法を見つけるよ。1人より2人の方が早く見つかるでしょ?あとアモは言ったよね?僕が怪我したら治してくれるって。だから僕と一緒にドライカに行こう。」
「グスッ。ひぐっ。仕方…ないわね。ひぐっ。」
こうしてアモとアモのお父さんがドライカへ引っ越しする事が決定した。
「隊長。ふふふ」
「あぁ。これはアンネに報告だな。ははは」