第31話 優しさ
あれから事後処理に追われている。
村の中央は被害がほぼないのだが、やはり他の場所。特に村の西側が酷い。……僕のせいです。僕が魔法を使ったからです。
そこで活躍したのが、土魔法!!
僕はペンスさんと一緒に荒れた場所を整地して回る日々を過ごしていた。
村に来てから5日目…体の調子が良いような気がする…土魔法の精度が上がった気がしたから気になって、自分に鑑定を使ってみた。すると…
名前 ルーベン•アートルド
種族 人族 5歳
状態 ー
武器 剣(C) E
弓(C) E
魔法 土(A) B
闇(S) D 闇纏
雷(SS) A
魔力量 50100/50100
スキル 魔術(中) 魔力感知
称号 雷王
固有 神の目 神の魔法
土魔法のレベルが上がっていた………ん?ん?
なぜか雷王の称号とスキルに魔力感知が増えていた。
それに魔術も(小)から(中)に上がっていた。
魔術(中)と魔力感知は素直に嬉しい。とくに感知は冒険者のエリナさんが使っているのを見て僕も使えたらなぁって思ったし。
それにしても雷王か。確かに雷魔法を使いました。この世界で雷魔法は僕しか使える人はいません。なので『王』の称号なのは分かるけど…こんなに簡単に『王』の称号を頂いていいのかなぁ。
でも納得した。最近、魔力操作や発動が、かなりスムーズになったと思ったんだ。魔術が上がったり魔力感知もひょっとしたら称号のおかげもあるのだろう。
その日の夜。
ルーベンは、とある人物に呼ばれていた。
コンコン。
「開いているよ。すまないね。呼び出してしまって。」
「いえ。だいたい話しの内容は察しがつきます。アモの事ですよね?」
「その通りだよ。本当にルーベン君は5歳なのかい?なんか大人の人と喋ってるみたいで。」
「………。ハハ。」」
そう、アモの父親だった。
「少し昔の話しをしても?」
「はい。」
「まずは…そうだね……私達は親子3人で暮らしながら、食堂を村で開いていたんだ。でもアモの母、私の妻が亡くなった…半年程前になるかな。とても重い病気でね。薬で痛みを和らげるぐらいしか出来なくてね。亡くなった時は私もアモも、とても悲しんだよ……父としてアモがどう立ち直るのか心配だった。でもアモは立ち上がった。優しい子だから、私が心配しているのを分かってたんだろうね。」
「そうですね。とても優しい子です。」
「ありがとう。……それから2人で食堂を続けたんだ。妻を感じられる、妻との思い出の場所だったしね。そしてアモが5歳になり鑑定の儀で……才能が分かった。教会の神父に言われたよ。これからの事、アモの才能を伸ばすならドライカに引っ越しも考えた方がいいって。それにアモに危険もあるからと。」
「はい。僕も神父さんに言われましたから……それでアモに引っ越しの話しをして怒られたと。…想像がつきますね。」
「ハハ。そうだね。……何度も聞いたけど、アモは此処に残るって言って……それである日、アモが魔法を覚えてきて、私の手に魔法を使ったんだ。優しい光で、とっても楽しそうにしていて、私がありがとうって答えると満面の笑みで笑ったんだ。久しぶりにあんな笑顔を見たよ。アモにとって誰かの力になれる魔法は楽しんだろうね。やりたい事の一つだと思う。そしてそんな日々を送っていたら、魔物が村を襲ってきて、食堂を壊されてしまったんだ。」
「そうなんですか……思い出の食堂が壊されアモにとって此処に残る理由が弱くなる。だからドライカに引っ越せるように僕に説得して欲しいと?」
「流石だね。そういうことになるね。アモは自分からドライカに行きたいなんて絶対に言わない。自分のやりたい事よりも母の事を優先にして考える……母との思い出の場所。ここから私達が離れたら母が悲しむからって。きっとそう考えている。妻はそんな事のぞんでない。」
「アモは亡くなった母を今も心配していると……優しすぎます。」
「……娘の背中を押してくれるかい?」
「なんでそんな大切な役目を僕に?」
「簡単な話しさ……戦いが終わってから何度も君の話しをするんだ。それも自分の事のように…そんな君に背中を押して貰ったら娘もきっと動くと思ってね。」
「そうですね。少し考えさせて下さい。」