第27話 ウィング
「父上ー!!ブラッドウルフは魔道具で操られていました。真の犯人は、おそらくそいつです。」
「なに?……そうか貴様が犯人か…」
ロキは剣を白衣の男に振り下ろす。
シュッ!!ガキンッギリギリッギリギリッ!!
魔力障壁がロキの剣を防いだ。
「いま私の手術中です。邪魔しないで下さいヨ。」
ブンッ!!シュッ!
白衣の男が手を横に振った。すると風の刃がロキに襲いかかる。
なんとかガードするもロキは数メートル吹っ飛ばされる。
「肉体が耐えられない程の強化をすると…どうなるか分かりますか?自我もなくなり、命令も聞かず敵味方関係なく襲い出すんですヨ。」
ブラッドウルフが苦しんでいる。
ボコボコッ!!
「グルルッガァー!!」
「私の美学に反するんですヨ。こんな手術は誰が見ても失敗ですからね。」
「グルル。ガーーーーァーーー!!」
細かな傷は塞がり、一回り大きくなったブラッドウルフがそこにはいた。
「では、ごゆっくり。」
そう言うと白衣の男は、空に浮かび上がる。
その時ルーベンは白衣の男を鑑定。
名前 ウィング
種族 魔族 35歳
状態 ー
武器 剣(C) E
魔法 風(A) A
水(D) D
魔力量 220/263
スキル 手術 魔術(大) 魔力障壁
魔力感知
称号 風聖
(近距離は皆無。魔法使いタイプ、さらに風聖『聖』の称号持ちか……想像以上に強い。)
「ペンスさん。奴は風聖『聖』の称号持です。僕に考えがあります。上手くいけば両方とも倒せるかも……いえ倒します。みんなが助かる方法はこれしかないかと……力を貸してくれますか?」
「ルー坊。塀の外に出るなと隊長から……」
「どの道、このままだと最悪、全滅です。そんな事言ってられません。」
「分かりました。私には策が思い浮かびませんし…出来ない事は言わない。でしたもんね。私はルー坊を信じましょう。それで作戦は?」
「そうですね。まずは……アモ!そこに居ますよね?」
草陰からアモが立ち上がる。
「なっ!?どうして分かるのよ?」
「いや…バレバレですが?頭見えてましたし。」
「そう。よく分かったわね!魔物の声がして、みんなこっちに向かったから、決してルーベンが心配で来た訳じゃないからね!でも昨日怪我したら治してあげるって言っちゃったし一応ね……そう一応よ。」
「まぁ。その…ありがとう。でも危ないから次はしないように。……それと話しは聞いてたよね?あいつらを倒す。アモも力を貸して欲しい。アモがいないと、この作戦は成功しない。」
「いいわ。やるわよ。仕方ないから手伝ってあげる。」
「ありがとう。それじゃ時間がない。手短に話す。」
こうして作戦を言い渡した。
ブラッドウルフは後ろにいた魔物達を襲い始めた。
「はぁ〜だから嫌なんですヨ。敵味方すらの判断が出来ない。まぁその後は村に行くでしょうが。おやぁ〜あれは?」
僕とアモは手を繋ぎ父上の元に声を出しながら走って近づく。
「父上ー!!」「パパー!!」
(いいですか?…まず僕とアモで父上の所に向かいます。大丈夫です。あの白衣の男には、ただの子供としか見られません。どうせ面白がってブラッドウルフに倒されるのを空から眺めてますよ。)
「ルーベン?それに君は確か………それより、出てくるなと言ったはずだが?戻りなさい。」
「ハハハハッ。親が心配で出て来た子供と、満身創痍の父上。感動の再会だぁー。面白い。実に面白いですヨ。最後に話しでもしてたらどうですか?そろそろブラッドウルフもそっちに向かいますヨ?」
ルーベンはそのままロキに抱き着いた。
(僕が父上に抱き付いたら。ペンスさん。白衣の男に僕達が見えなくなるように土壁を使用して下さい。)
「土壁!!これでいいんですね。ルー坊。この後は……」
(その後は、全員村の中へ避難指示を出して下さい。そしてアモにはお願いが…奴から見えなくなったら父上に回復魔法と魔力回復をお願いします。大丈夫アモならきっと出来ます。回復魔法が使えるんです。その間に父上に作戦を僕が伝えます。)
「ヒール!!そして……(昨日と今日で魔力の流れ、魔力の動かし方が分かるようになった。わたしの魔力を相手に渡す感じで……イメージ…イメージ)出来る!!マジックヒール!!」
「凄い。凄い。やっぱりアモは凄いです。いけない…それより父上…今から作戦を伝えます。父上にはブラッドウルフを足止めして貰いたいんです。おそらく白衣の男は有利な展開なら自ら攻撃はしてこないでしょう。そこに付け入る隙があります。なので足止めしている間に僕が奴らを倒す魔法の準備をします。準備が出来たら叫ぶので父上は全速力で僕達のいる所に戻って下さい。」
作戦を伝えると同時に光が収まった。
「ルーベン。ごめんなさい。ルーベンのお父さんの魔力…半分ぐらいしか回復出来なかったわ。」
「初めてでそれは十分だよ。予想以上だ。ありがとう。それじゃ父上、僕達は戻りますね。それじゃ……あっ!父上。疲れてる演技はして下さいよ?」
「ちょっ……私がこれ程苦労してるのに……だがあいつらを倒せる魔法か……ハハッ!!簡単に言いやがって。終わったらたっぷり説教してやるからな。」
「そんなちっぽけな壁で攻撃なんて防げないと思いますヨ?あれぇ〜せっかく来てくれたのに帰しちゃうんですか?子供と一緒に死ぬ所も見たかったんですがねぇ〜でも親が死んだ絶望の顔を見るのも良いですねぇ〜。」
「外道が。……お前はきっと…他の奴(私の子)が必ず倒す。」
「ハハッハハハハッフハハッ!!そうですか。アハハッ!流石ですヨ。流石は剣豪様だ。もう自分が敵わないと認める、その潔い姿勢。私は好きですヨ。」
「ガァー!!」
「やっと来ましたか。さっさと食い殺しなさい。」
(魔力も傷も回復した。あの子には礼を言わねばならんな。これで足止めは出来るにしても……演技か。上手く出来るだろうか。)